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第七章 オオルリの恩返しと美味しいもの探し

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「よかったねえ、ルリ」
「いや、その時はツツジも一緒に来て欲しいんだが」
「えー、それはさすがに空気を読むよー」

 首を振るツツジ。だけど私は必死に『たすけて』の視線を送る。
 この状態のルリと二人きりは、ちょっとハードルが高い。
「わかったわかったー。じゃあ、お店が終わってから行ける所にしてね」
 そのツツジの言葉に、ルリは少し考えて答えた。
「では、バー『花ぼうろ』でどうだろう?」
「うん、それはいいねー!」

 バーといえば、お酒を楽しむ事をメインとした大人の居場所、といったイメージがある。だけど、ルリが名前を上げたなら、それだけじゃないのかな?
 そう考えていた私に、ツツジが器用に片目をつむって見せる。
「行ってからのお楽しみ、ね!」
 
 そう言うとツツジが私の手を取った。
「じゃあ、『お手紙』の効果はすぐに出るわけじゃないし、今日は朝陽が提案してくれてた『箱庭温泉』だけの名物を作ろう、のリサーチに行こう~!」
「はい!」
 私が頷くと、ルリは穏やかに微笑んで口を開いた。
「じゃあ、私は仕事に戻るよ。……今度、楽しみにしてる」

 淡い光と共に、ルリの姿が消えた。ふと見ると『箱庭温泉街』の道を、男の子と手を繋いで歩いてゆく、小さな後ろ姿が見えた。


◇◇◇


「第一回、箱庭温泉名物を考えようの会~!」
 ツツジの宣言に合わせて、私はぱちぱちと手を叩いた。嬉しそうにツツジが胸を張る。
 訪れているのは、雲仙温泉街、地獄近くにある小さな茶屋だった。
 
「まずは、ここの茶屋で気になるメニューを食べながら、『箱庭温泉』で名物として出せる物がないか考えるよー」
「よろしくお願いします!」
 私は茶屋の机を前に気合を入れる。

 聞けば『箱庭温泉』の料理長は、一人で全ての妖の為に食事を作っているそうで。そんな中でこちらの希望ばかりを押し付けるわけにはいかない。
 でも、少しでもこの雲仙の名物を妖たちにも楽しんでもらいたい。
 その相反する思いを、形にできたら……。

「実現できるかどうかまでは考えず、色んな意見を出し合えたらいいなと思ってます」
「そうだねー。いろんなアイデアをまとめてから、その後で料理長に選んでもらわないといけないもんね」
「はい!」

 私はツツジと一緒に、机の上に広げたメニュー表を隅から隅までじっくり確認する。
 そのメニュー表は写真が使われておらず文字だけの簡素なもの。

「長崎といえば、食堂の看板にも大きく書かれてた『ちゃんぽん』『皿うどん』だと思うんですが、雲仙ならコレ、という物となると……」
「うーん、そうだねー。ここで食べられる物だと『具雑煮ぐぞうに』とか、『かんざらし』かな? もうちょっと行ったレストランなら『雲仙ハヤシ』と、長崎名物になっちゃうけど『トルコライス』も美味しいよ」
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