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第五章 作戦会議

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 メインの『地獄』は見て回ったので、ゆっくり話を聞きたいとお願いし、おもちゃミュージアム奥の部屋へ行くことに。

「今日はこちらから」
 店の裏手にある通用口のドアノブに手をかけたルリに促され、私は目を閉じた。昨日と同じ、気圧差の様なものを感じる。
「もう、開けていい」
 ぱちり、目を開けると応接セットの置かれた部屋の中に立っていた。
 なんだか不思議な気持ちはするけど、慣れて来ているのか、昨日ほど驚いていない自分がいる。

 手で示されたソファーに腰を下ろし、定位置なんだろう昨日と同じ場所へと収まったルリと向かい合う。
 私はバッグから大きめの手帳を取り出すとローテーブルの上に開き、ボールペンを握りしめた。
 身を乗り出し、頭の中に浮かんだ質問を一つずつ上げていこうと思った所で、少し申し訳なさそうにルリが口を開いた。

「君は、デザインを仕事にしていると言っていたが……あの箱庭の温泉へあやかしを集めるという事と、どう繋がるんだろうか? チラシやパンフレットを作って配るといっても、相手が妖では……」
 その質問はもっともだなあと思う。私も今の段階では何も見えていない。でも、できることが無いとは思ってない。

「ルリさんは、デザイナーというと、『カッコいいもの』『素敵なもの』を作る仕事って思いますよね」
「大雑把に言えばそうだな」
「私も最初はそう考えてました、でも今は違うかもって思ってるんです」

 私は、一度ソファーに背中を預けて目を閉じた。言いたい事を整理しながら話せる様に。それから、考え考え言葉を繋いでいく。

「私にとって『デザイナー』って、そのお客様の『いい所』を『整理』して『伝える』サポーターでしかないんですよ」
 ちゃんと伝わっているだろうかとちらりルリに目をやると、小さく頷いてくれた。私はほっとして続ける。

「その商品やサービスを一番知っているのはお客様で、でもそれを誰かにお知らせする方法がわからなかったり、がんばっていてもちょっと足りなかったり……そこを補うのがデザイナーなんじゃないかなって」
 そこまで一気に言葉にしてから、私は急に恥ずかしくなってしまう。
「私がきちんと出来てるかというと、そうだと言い切れないんですけど……」

 ごにょごにょと語尾を濁し始めた私をじっと見て、ルリは一言。
「君を信じよう」
 真剣な眼差しに射抜かれて、私はぐっと奥歯を噛み締めた。失敗した時の為の言い訳を並べる方が、よっぽど恥ずかしい事だった。

 一つ深呼吸。

「まずは、できるだけたくさん情報が欲しいです」
 一言も聞き漏らさない。そんな心持ちで私は背筋を伸ばす。
「わかった」
 ルリが頷き、そうして最初の作戦会議がようやく始まった。
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