8 / 10
8
しおりを挟む
「全部終わったの?」
ミクがぽつんと問う。
「はい、終わりましたよ。呪いは全部喰べちゃいました」
ミクは恐る恐ると言った風に私に近づいてくる、私は久しぶりの満腹感に大きく伸びをした。
「あ、これお返ししておきます」
私はミクにスマートフォンを渡す。
「ありがと」
受け取り、ミクはそれから改めて私に聞いてくる。
「それで、結局サリってなんなの? 見通す魔女ってだけじゃ誤魔化されないから」
「うーん、そう聞かれると、『呪い喰い』です。としか」
「呪い喰い?」
ミクは不穏なその名前に身を引きそうになるが、ぐっと堪えて踏みとどまってくれた。
「……ちょっと怖そうな名前だけど、サリは怖くない」
「ありがとうございます」
その言葉が嬉しい。頬が緩むのを感じながら、私は口を開く。
「私、『呪殺』を家業にしている家で育ちまして」
「じゅさつ?」
ミクが首を傾げる。
「呪い殺すってことですね」
「そんな事サラッと言う!?」
「え、だって聞かれたので」
そこで言葉を切り、私は自分の胸の辺りに手を当てる。
「私は万が一呪いが返された時に備えて、呪いを『食べる』役割を持つ『呪い喰い』として、外に出ることを許されず育てられた、まあ囚われの身だったんですが」
「その家から逃げてきたの?」
私は首を振った。
「『呪殺』用に育てていた『呪い』に家ごとまるっと飲まれまして。結果、私だけが元気に生き残りました」
皆が『呪い』に食われた後で、それを食い破って外に出た、なんて物騒な話はミクは知らなくていいだろう。
本当なら助けられたのを、見て見ぬふりをした事も。
「外に出られたのはいいんですが、生きるだけでもお金って必要じゃないですか。なので、何かできることが無いかな~って色々とやってみて一番向いてそうだったので、『見通す魔女』をやってます」
私はそう言うと、指で作った輪から目をパチパチと瞬かせそう言う。
「呪い食べるのと、その『見通す魔女』っていうの、どう繋がりがあるの?」
首を傾げるミク。
「ずっと家から出してもらえなかった間、デジタル機器だけは好きなだけ与えられたので、家族が『呪い』を育ててるみたいに、私も私なりの『呪い』をPC上で育ててまして。……感染すると、どんな端末でも裏口から私が入り放題になるっていう『呪い』なんですけどね」
ミクは、手元のスマートフォンを思わず見つめる。
「安心してください、ちゃんと消してます」
「入れてたんだ……」
ミクがぽつんと問う。
「はい、終わりましたよ。呪いは全部喰べちゃいました」
ミクは恐る恐ると言った風に私に近づいてくる、私は久しぶりの満腹感に大きく伸びをした。
「あ、これお返ししておきます」
私はミクにスマートフォンを渡す。
「ありがと」
受け取り、ミクはそれから改めて私に聞いてくる。
「それで、結局サリってなんなの? 見通す魔女ってだけじゃ誤魔化されないから」
「うーん、そう聞かれると、『呪い喰い』です。としか」
「呪い喰い?」
ミクは不穏なその名前に身を引きそうになるが、ぐっと堪えて踏みとどまってくれた。
「……ちょっと怖そうな名前だけど、サリは怖くない」
「ありがとうございます」
その言葉が嬉しい。頬が緩むのを感じながら、私は口を開く。
「私、『呪殺』を家業にしている家で育ちまして」
「じゅさつ?」
ミクが首を傾げる。
「呪い殺すってことですね」
「そんな事サラッと言う!?」
「え、だって聞かれたので」
そこで言葉を切り、私は自分の胸の辺りに手を当てる。
「私は万が一呪いが返された時に備えて、呪いを『食べる』役割を持つ『呪い喰い』として、外に出ることを許されず育てられた、まあ囚われの身だったんですが」
「その家から逃げてきたの?」
私は首を振った。
「『呪殺』用に育てていた『呪い』に家ごとまるっと飲まれまして。結果、私だけが元気に生き残りました」
皆が『呪い』に食われた後で、それを食い破って外に出た、なんて物騒な話はミクは知らなくていいだろう。
本当なら助けられたのを、見て見ぬふりをした事も。
「外に出られたのはいいんですが、生きるだけでもお金って必要じゃないですか。なので、何かできることが無いかな~って色々とやってみて一番向いてそうだったので、『見通す魔女』をやってます」
私はそう言うと、指で作った輪から目をパチパチと瞬かせそう言う。
「呪い食べるのと、その『見通す魔女』っていうの、どう繋がりがあるの?」
首を傾げるミク。
「ずっと家から出してもらえなかった間、デジタル機器だけは好きなだけ与えられたので、家族が『呪い』を育ててるみたいに、私も私なりの『呪い』をPC上で育ててまして。……感染すると、どんな端末でも裏口から私が入り放題になるっていう『呪い』なんですけどね」
ミクは、手元のスマートフォンを思わず見つめる。
「安心してください、ちゃんと消してます」
「入れてたんだ……」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
幸せの島
土偶の友
ホラー
夏休み、母に連れられて訪れたのは母の故郷であるとある島。
初めて会ったといってもいい祖父母や現代とは思えないような遊びをする子供たち。
そんな中に今年10歳になる大地は入っていく。
彼はそこでどんな結末を迎えるのか。
完結しましたが、不明な点があれば感想などで聞いてください。
エブリスタ様、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも投稿しています。
梟(フクロウ)の山
玉城真紀
ホラー
人を愛するという事は、とても素晴らしい事。
兄妹愛、親の愛、夫への愛、子供への愛。人は、様々な愛情を知っている。しかし、その「愛」を間違った使い方をしてしまうとそれは「憎しみ」へと変わる。
話をしてはいけないという奇妙な祭りの禁忌を犯してしまった事から始まる物語。
愛した男の裏切りから女の死、村の全滅。
それは、死んだ女の怨念がなしたものなのか、それともそれ以前からの呪詛のせいなのか・・・
赤い車の少女
きーぼー
ホラー
ある夏の日、少年は幽霊と出会った。
舞台となる地方都市では何ヶ月か前から自分を轢き逃げした赤い色の自動車を探す少女の幽霊が出没していた。
とある出来事がきっかけで3人の中学生の男女がこの奇妙な幽霊騒ぎに巻き込まれるのだがー。
果たして彼等はこの不可思議な事件に秘められた謎を解き明かすことができるのか?
恐怖と伝説に彩られた妖魔の夏が今始まる!!
真夏の夜の幽霊物語(ゴーストストーリー)。
是非、御一読下さい!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる