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 すでに誰もいない学校。その体育館の奥にある用具倉庫は、普段から昼なお薄暗い。夜となった今は一層暗いが、目を凝らせば闇のその中で、人影が動くのが辛うじて見えた。

「ミクさんとのが切れて、落ち着かないんですか?」

 不意に投げられた声に、入り口から差し込む細い灯りに照らされて、人影がゆっくりと振り返る。
 灯りが暴いた影は人の形をしていなかった。ミクと同じ制服を着た少女のスカートから覗く下半身は、蛇そのもの。その顔にはびっしりと鱗が並んでいた。

『あんたが、私の子を?』
「はい、ミクさんの所の子も、ここの子も食べちゃいました」
 私は得意げに、人差し指と親指の間に捕らえた小蛇を見せる。入り口を見張っていた食べ残しだ。
「食べ応えがなくて残念です。ちゃんと呪い、込めました?」
『ふざけないで!』
 私の物言いに煽られて、蛇少女が蛇身を振るう。私を打ち据えようとした所をひらりかわして、あざける様に言う。
「はいはい、こっちですよ~」
 蛇少女は二度、三度と蛇身を振るが、その尾は私を捕らえきれずに空を切る。
『じっとしてなさいよ!』
 再び飛びかかろうとして、蛇少女の動きが止まった。いつの間にか、その尾にはバレーのネットが絡みついていた。

「ほらー、周りをちゃんと見て動かないから」
『なによ! こんなのすぐに切れる……』
 尾を振り回し、網を切ろうと蛇少女が足掻く。ぶちぶちと音を立てて網が切れていくが、時間稼ぎは一瞬で良かった。
 私は声を上げる。
「今です、ミクさん!」
「うん!」
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