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【番外編】僕を取り戻した日に
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ある日、メイナにウルだった頃の事を恐る恐る聞かれて、ルルタはなるべくメイナが胸を痛めない様にと言葉を選びながら、当時の事を話していた。
「今ならおかしいって思うんだけど、物心ついた時から義理の母だという女から、『本当なら、放り出したっていい前妻の子を、仕方なく面倒見てやってるんだから』って、家事やら炊事やら押し付けられて、浄化の力があるとわかったら『少しは家の為に稼いできな!』って家から放り出される始末」
さらっと話して居るけれど、当時はただただ辛かった。
家には義母と義兄がいたが、そのどちらもルルタを便利な道具としか思っていないようだったし、身内として数えられて居るとも思えなかった。だからこそ、言う通りにしなくては居場所がないと思い込んでいたのだ。
「今考えれば、王子だってことが分からない様に、亡くなった王妃が命じていた事だったんだろうけど、性別も見た目も魔法道具で偽って生活させられてたから、ずっと『自分』というものが無くて……言われるままに生きてたんだ。それがメイに助けてもらって、ちょっとずつ『変えたいな』って思える様になったんだよね」
メイナは、何かを耐える様に口を押さえて、うんうんと頷く。
「それからメイと会いたくて、自分からすすんで浄化の仕事に出るようになって……、気づいたら、僕は彼らより遥かに強くなってた。それで気づいたんだ。もう、言いなりになる必要ないって」
ルルタは隣に座るメイナの手を取る。『ウル』として一緒にいた時からずっと支えだった彼女の手を。
メイナはその手を強く握り返す。
「だから、メイをいつか迎えに行くって約束した後、もうあんな家、出て行ってやるって決意して荷物を取りに家に帰ったんだ」
その日の事を思い出し、ルルタはくすり、と笑う。
「で、家に帰ったら、家が騎士に囲まれてた」
「え!?」
いきなりの展開に、黙って聞いていたメイナが声を上げた。その驚きは当然だろう。当時のルルタも目を疑った。
「しかも、義理の母とか兄とか名乗ってた二人が、真っ青な顔で家から引き摺り出されて来てて、なんかキラキラした人が彼らの首根っこを捕まえてた」
「もしかして、それがイウリス殿下だったんですか?」
ルルタは頷く。
「そう。僕を探してやっとあの家に辿り着いたんだって。それで、兄上が調べてみてわかったんだけど、彼ら、僕の義理の家族と言っていたけど全然違ったんだよ。僕を養うために毎月送られて来ていた金目当てに、本当の養い親を殺して家ごと乗っ取っていた奴らだったんだ。挙句、送られてくる金では足りなくなって僕に外で稼いで来ることまで強要してたと」
メイナは辛そうに眉根を寄せ、握った手にさらにぎゅっと力をこめた。
「今ならおかしいって思うんだけど、物心ついた時から義理の母だという女から、『本当なら、放り出したっていい前妻の子を、仕方なく面倒見てやってるんだから』って、家事やら炊事やら押し付けられて、浄化の力があるとわかったら『少しは家の為に稼いできな!』って家から放り出される始末」
さらっと話して居るけれど、当時はただただ辛かった。
家には義母と義兄がいたが、そのどちらもルルタを便利な道具としか思っていないようだったし、身内として数えられて居るとも思えなかった。だからこそ、言う通りにしなくては居場所がないと思い込んでいたのだ。
「今考えれば、王子だってことが分からない様に、亡くなった王妃が命じていた事だったんだろうけど、性別も見た目も魔法道具で偽って生活させられてたから、ずっと『自分』というものが無くて……言われるままに生きてたんだ。それがメイに助けてもらって、ちょっとずつ『変えたいな』って思える様になったんだよね」
メイナは、何かを耐える様に口を押さえて、うんうんと頷く。
「それからメイと会いたくて、自分からすすんで浄化の仕事に出るようになって……、気づいたら、僕は彼らより遥かに強くなってた。それで気づいたんだ。もう、言いなりになる必要ないって」
ルルタは隣に座るメイナの手を取る。『ウル』として一緒にいた時からずっと支えだった彼女の手を。
メイナはその手を強く握り返す。
「だから、メイをいつか迎えに行くって約束した後、もうあんな家、出て行ってやるって決意して荷物を取りに家に帰ったんだ」
その日の事を思い出し、ルルタはくすり、と笑う。
「で、家に帰ったら、家が騎士に囲まれてた」
「え!?」
いきなりの展開に、黙って聞いていたメイナが声を上げた。その驚きは当然だろう。当時のルルタも目を疑った。
「しかも、義理の母とか兄とか名乗ってた二人が、真っ青な顔で家から引き摺り出されて来てて、なんかキラキラした人が彼らの首根っこを捕まえてた」
「もしかして、それがイウリス殿下だったんですか?」
ルルタは頷く。
「そう。僕を探してやっとあの家に辿り着いたんだって。それで、兄上が調べてみてわかったんだけど、彼ら、僕の義理の家族と言っていたけど全然違ったんだよ。僕を養うために毎月送られて来ていた金目当てに、本当の養い親を殺して家ごと乗っ取っていた奴らだったんだ。挙句、送られてくる金では足りなくなって僕に外で稼いで来ることまで強要してたと」
メイナは辛そうに眉根を寄せ、握った手にさらにぎゅっと力をこめた。
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