【完結】真っ暗聖女と白い結婚を 〜女神様の体を整えてこの結婚から貴方を解放するはずが、なぜか執着されています〜

オトカヨル

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【小ネタ】良い旅を

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 人生が旅だとしたら、良い旅にしたいと思うのはきっと誰でもそうだろう。
 旅に大切なのは、綺麗な景色だったり、美味しいご飯だったりするけれど、一番大きな要素は、誰が一緒にいるかじゃないかな、と私は思う。

 そんな事をつらつらと話しながら、私はルルタと一緒にバルコニーで月を見上げていた。

「君にとって、僕は旅の同行者としてどうかな?」
 月の光を受けて光る琥珀の瞳。加護の輝きは失っても変わらず綺麗だなと私はちょっと見惚れる。

「ルルは、最高の同行者だよ。優しいし、強い」
「それは光栄」
 にこにこと笑ってルルタは向かい合い、私の手を取る。

「この間、イウリス殿下がエウジェ様の事『最愛の妃で、友で、師匠』
って言ってて、ちょっとだけ羨ましいって思ったんだけど、でもその時に私もルルの事、『大好きな人で、友達』だなって思って」
「嬉しいけど、一つ負けてるのは何だか悔しいね」

 本心からそう思っているわけではないんだろうけど、ちょっと拗ねた様にそう言うルルタに、私は笑って続けた。

「うん、だからね、さっき3つ目があったなって思ったの。『大好きな人で、友達で、人生の同行者』って」
「それはいいね!」
 ルルタが同意してくれたのが嬉しくて、私は繋いだ手を子供みたいに振る。

「ルルとの旅なら、どこだって楽しくなるに決まってるから」
「そうなるように努力するよ」
「それで、そのうちにね同行者が増えるといいなって思って」

 遠回しな言葉を、的確にルルタが拾い上げる。ほのかに頬を染める私を、すぐさまルルタの手が抱き上げた。
 ふわりとした浮遊感。
「旅は賑やかな方がいいからね」

 何気ない一言を甘やかな声で囁き、ルルタは月光が照らすバルコニーから、暖かな光の灯る室内へと私を誘う。

 いつかこの旅に、小さな同行者を伴えるように。

 明日の朝は少し遅くまで寝かせてもらおうと思いながら、私はルルタの胸に寄り添った。
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