【完結】真っ暗聖女と白い結婚を 〜女神様の体を整えてこの結婚から貴方を解放するはずが、なぜか執着されています〜

オトカヨル

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【番外編】君がいたから

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「御身は、何より尊いのです。損なわれるわけにはいかないのです!」

 臣下としての模範的な言葉に、イウリスは苦笑する。
「ごめんね、心配かけて。でも、僕はエウジェが少しでも傷つく方が嫌だったんだ。……迷惑かもしれないけど」
「迷惑という事はないのですが、できれば御身を優先させていただきたいと……」
 イウリスの言葉にエウジェは戸惑いを顔に浮かべ、そう答える。

「だって迷惑なんでしょう? 僕は、君がこのまま婚約者になってくれるって思ってたけど、君は身を引くなんて言うくらいだし」
「先ほどの、聞いて……」
 イウリスが頷くと、エウジェは顔を歪めた。そんなに嫌だったのかと、イウリスは悲しくなって顔を伏せた。

「僕は君が大事だけど、君にとっては重荷だったんだね」
「そんな、だって……」
 エウジェの声が上ずって、いつもと違う声色になる。イウリスは慌てて顔を上げた。
 エウジェの頬は真っ赤に染まり、目には薄らと涙を浮かべて、両の拳を震えるほどに握りしめている。

「だって殿下は一度だって言ってくださったことがないじゃ無いですか! わ、私の事、好きだって!!」

イウリスは、驚きに目を瞬いた。
「友達になろうとは言われましたが、それ以上は何も言ってくださらなかったから、私、ずっと殿下は私の事を友達だと思っていて、婚約者にするつもりなんてないんだって、だから私は、私は!」

 イウリスは自分の言動を省みて、愚かさにその場で頭を抱えたくなる。でも今は、そんな事よりもやるべき事があった。

 イウリスは辺りを見回す。近くに咲く大輪の白い花を一輪手折ると大きく息を吸って心を決める。
 ゆっくりと、エウジェの前に膝を着いた。
 見上げるエウジェが驚きに目を見開いている。その拍子にほろりと頬に滴が伝った。

「エウジェルム、僕は……いや俺は君以外を妃に迎えるつもりは無い。一生を通し、愛するのは君だけと誓うから、どうかずっと側に居てほしい」
 
 そう請い、花を差し出す。

 エウジェは花を受けると、濡れた頬のままで花にも負けない笑顔になった。
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