【完結】真っ暗聖女と白い結婚を 〜女神様の体を整えてこの結婚から貴方を解放するはずが、なぜか執着されています〜

オトカヨル

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【番外編】君がいたから

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 それから、エウジェルムことエウジェとイウリスは城で、友として過ごす時間を重ねることになった。
 正反対の二人だったが、次第に互いに尊敬し合う良い友人関係を築いて行った。
「エウジェの剣筋はいつ見ても速く力強く、惚れ惚れする」
「そういう殿下の剣は、教わった型を正確に再現している所、私には真似できないですよ」
 刃を潰した模擬刀ではあったけど、二人で剣を交わして楽しく研鑽し合う内に、イウリスの体は少しずつ丈夫にもなってきていた。

「最近はあまり熱を出す事も無いと聞きました」
「エウジェのおかげだよ、君みたいになりたくて、最近は部屋の中でも鍛錬してるんだ」
 イウリスは嬉しそうにそう言うと、少しだけ筋肉がついて来た腕を撫でてにこにこと笑う。

「そういえば、エウジェは炎の魔法に適性が見つかったって聞いたよ、凄いね」
「まだ大した事はできませんが、力が安定致しましたら、お見せしますね」
「楽しみにしてるね!」
 イウリスは、エウジェと会っている時間全てが楽しかった。
 このまま、友から婚約者になってくれて、そうして自分の隣にずっといてくれるんだと思うと、胸があたたかくなる。

 幸せだな、とイウリスは思っていた。王妃とエウジェの会話を聞くまでは。



 その日、エウジェは午後からの登城。午前はこの国の歴史を学ぶ授業の予定だった。
 ところが、教師が馬車から降りる際に足を捻り、医者へ。

 急に時間が空いてしまった。

 イウリスは、午後から来るエウジェの為に花で用意しようかと庭園へ向かった。

 そこに声が聞こえて来た。

「あなたは、イウリスをどう思っているのかしら?」
 王妃の声に、イウリスは思わず植木の影に身を隠し、耳をすましてしまう。

「殿下は、私を友と思ってくださっているだけかと。その内に相応しい方が現れれば、きちんと身を引きます故、ご安心くださいませ」
「そう、きちんと弁えているのならば、それでいいのよ」

 エウジェは今、なんと言っただろうか。
 イウリスは、震える手をなんとか抑え込み、そっとその場を離れる。

 頭の中でエウジェの声が回る。
 『相応しい方が現れれば、きちんと身を引きます』

「僕だけが、ずっと一緒だって思ってたんだ」
 久しく起きていなかった頭痛に襲われて、顔を顰める。

 気がつけば、イウリスはいつの間にか人気の少ない神殿の裏手にまで足を踏み入れていた。
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