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第八章 真っ暗聖女、企みを知る
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そうしてそれからずっと馬の上で揺られている。
どのくらい時間が経ったかわからない。段々と腕が痺れてくる。今はなんとか治癒の力で持ち堪えているけどいつまでもつか。でも弱音を吐くわけにはいかない。
まったく馬の速度を落とさず走り続けているルルタの疲労は私の比ではないはず。
掴まっている手を通して治癒の力を少しずつ流しているけど、疲労が軽減できているかもわからない。
本当に聖女だというのなら、このくらいの疲労や痛み、いっぺんに消せるくらいの力が欲しかった。正直、聖女として女神と相対する中でも、村で治癒術士をしていた頃と力は変わらないままだったから。
でも今は嘆いても何の役にも立たない。できる事をやるしかないんだと自分に言い聞かせ、私は馬にも本日何度目かの治癒の力を流し込んだ。
「もうすぐ着く、ここで馬を降りよう」
ルルタの言葉と共に、馬が駆け足から、ゆるやかな歩みに変わる。
そうしてやっと馬が足を止めると、ルルタが先に降りて近くの木に馬を繋ぎ、両手をこちらに向けてくれた。
私が戸惑っていると、ルルタは疲労の色なんて顔に出さずに微笑む。
「ずっと掴まっていたから、降りる力も無いでしょ?」
その言葉通り、ずっとルルタに捕まっていた手には力が入らず、上手に鎧に足をかけて降りるなんて事ができる気はしなかった。
そっと手を伸ばすと、ルルタが私を捕まえて抱き上げ、地に下ろしてくれる。
「ありがとうございます、ルル様」
「メイにはこの後で沢山がんばってもらわないといけないからね。それまでは、ちょっとだけ下がって待っててくれる?」
そう言いながら、ルルタは白い手袋を片方ずつ装着する。そうして一度目を閉じて、深く息をついた。呼吸が整った所で両手を打ち鳴らすと手の間で光が弾ける。それは神官が使う浄化の力にそっくりだった。
「武器を持ってこれなかったから、ちょっと時間がかかるかもしれないけど、ごめんね」
言葉と共にルルタがそっと目を開く。琥珀の瞳の奥でも、キラキラと光が弾けていた。
私はそれを見た瞬間に、雷に撃たれた様な衝撃を覚える。
だって、私は、その光を知っている。
下がって待っていてと言われていなかったら、きっと私はその背を追いかけていた。
「ルル様、ご無事で……」
私はせめてもと、両手を組み合わせて祈る。
今は、ただ、ルルタの戻りを待つことしかできなかった。
どのくらい時間が経ったかわからない。段々と腕が痺れてくる。今はなんとか治癒の力で持ち堪えているけどいつまでもつか。でも弱音を吐くわけにはいかない。
まったく馬の速度を落とさず走り続けているルルタの疲労は私の比ではないはず。
掴まっている手を通して治癒の力を少しずつ流しているけど、疲労が軽減できているかもわからない。
本当に聖女だというのなら、このくらいの疲労や痛み、いっぺんに消せるくらいの力が欲しかった。正直、聖女として女神と相対する中でも、村で治癒術士をしていた頃と力は変わらないままだったから。
でも今は嘆いても何の役にも立たない。できる事をやるしかないんだと自分に言い聞かせ、私は馬にも本日何度目かの治癒の力を流し込んだ。
「もうすぐ着く、ここで馬を降りよう」
ルルタの言葉と共に、馬が駆け足から、ゆるやかな歩みに変わる。
そうしてやっと馬が足を止めると、ルルタが先に降りて近くの木に馬を繋ぎ、両手をこちらに向けてくれた。
私が戸惑っていると、ルルタは疲労の色なんて顔に出さずに微笑む。
「ずっと掴まっていたから、降りる力も無いでしょ?」
その言葉通り、ずっとルルタに捕まっていた手には力が入らず、上手に鎧に足をかけて降りるなんて事ができる気はしなかった。
そっと手を伸ばすと、ルルタが私を捕まえて抱き上げ、地に下ろしてくれる。
「ありがとうございます、ルル様」
「メイにはこの後で沢山がんばってもらわないといけないからね。それまでは、ちょっとだけ下がって待っててくれる?」
そう言いながら、ルルタは白い手袋を片方ずつ装着する。そうして一度目を閉じて、深く息をついた。呼吸が整った所で両手を打ち鳴らすと手の間で光が弾ける。それは神官が使う浄化の力にそっくりだった。
「武器を持ってこれなかったから、ちょっと時間がかかるかもしれないけど、ごめんね」
言葉と共にルルタがそっと目を開く。琥珀の瞳の奥でも、キラキラと光が弾けていた。
私はそれを見た瞬間に、雷に撃たれた様な衝撃を覚える。
だって、私は、その光を知っている。
下がって待っていてと言われていなかったら、きっと私はその背を追いかけていた。
「ルル様、ご無事で……」
私はせめてもと、両手を組み合わせて祈る。
今は、ただ、ルルタの戻りを待つことしかできなかった。
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