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第二章 真っ暗聖女、新しい生活
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「おかえりメイ、神官長と会ってきたんだって?」
部屋に戻ると、執務の間の休憩なのか部屋に居たルルタが、読んでいた本から顔を上げて問う。
「はい」
「彼、昔は僕の先生だったんだよ。僕の小さな頃からずっと変わらずあのままお爺ちゃんで、笑う時だけすごく声が大っきいんだ」
気やすい物言いに私は思わずふふっと声を漏らした。それと共にすっと肩から力が抜け、気を張っていたんだなと思い知る。
そして、その何気ない優しさに胸が温かくなる。
こんな顔もわからない私を聖女だからと押し付けられて尚も私を気遣ってくれる人。
それなら私は、私の役目を果たして、少しは役に立たないと!
その為にまずは『聖女』というものについて学びたい。
そう考えながらルルタの手の中の本を見て、ふと思いついた。
「今までの聖女様についての記録などを閲覧する事はできますか?」
「書庫にあると思うから後で届けるよ。他に何か欲しいものはない?」
私の少し決意を込めた声色に気づいたのか、ルルタが労わる様に聞いてくれる。
他にと言われてぱっと思いつくのは一つだけ。
「あ! できれば私の居た村に、代わりに治癒術士を一人送ってはいただけないでしょうか? あの辺りは治癒術士が少なくて……」
「わかった、すぐ手配する」
その言葉に私はほっと安堵の息を吐く。
私が戻らないとなると人手が足りない、そうなると副院長の心が折れかねない。院長は上手にサボれる人だから全然心配してないのだけど。
「急に帰れなくなって心配だし、不安だよね。ごめんね」
「殿下……いえ、ルル様に謝っていただく様な事ではありません。これは誰かがやらなくてはいけない事でしょうし」
最後は、自分を鼓舞する為の言葉。
「そう言ってくれると、少し胸の支えが下りるようだよ」
ふわっと微笑んでくれるルルタ。そして本を片手に立ち上がった。
「そろそろ戻らないと。今日は遅くなると思うから、先に寝てくれていていいよ」
「はい、いってらっしゃいませ、ルル様」
見送りの言葉に、ルルタは嬉しそうに頷いて扉を閉める。その目は少し名残惜しそうに見えた。
……私の願望が見せた幻かもしれないけど。
「本当に、いい人だなあ」
だからこそ、失望させたくない。
「よし! まずは情報収集から!」
しばらくすると、ラウミがワゴンを押して入室してきた。
「こちらが代々の聖女の記録でございます」
「ありがとう」
窓際にある机の上に積んでもらい、お茶をお願いしていざ本の山と対峙する。
その殆どが、神官による記録か、聖女自身の残した日記や走り書きを纏めたもの。私はまずはペラペラと軽く流し読んでみる。だが。
「なんで……」
何故か、具体的に何を行うかの記載が全く無い。皆、女神様の神託に従ったとしか書き残していないのだ。
どの時代にも失敗したと言う記録は残っていないのは、幸いだったけれど。
私は半ば意地になって、今度は隅々まで詳しく読み進めてみた。
何処かに隠された紙片でも挟まっていないかと、行儀が悪いが本を軽く振ってみたり、ページを透かしてみたり、暗号で書かれているなんて馬鹿なことも考えた。
そのどれも空振りで、私は本の山の間に突っ伏した。目を瞑ると、閉じた瞼の裏で文字がこちらを馬鹿にする様に踊っている。
ああ、空回りしてるなーと思っているうちに、私はスッと眠りに落ちていた。
部屋に戻ると、執務の間の休憩なのか部屋に居たルルタが、読んでいた本から顔を上げて問う。
「はい」
「彼、昔は僕の先生だったんだよ。僕の小さな頃からずっと変わらずあのままお爺ちゃんで、笑う時だけすごく声が大っきいんだ」
気やすい物言いに私は思わずふふっと声を漏らした。それと共にすっと肩から力が抜け、気を張っていたんだなと思い知る。
そして、その何気ない優しさに胸が温かくなる。
こんな顔もわからない私を聖女だからと押し付けられて尚も私を気遣ってくれる人。
それなら私は、私の役目を果たして、少しは役に立たないと!
その為にまずは『聖女』というものについて学びたい。
そう考えながらルルタの手の中の本を見て、ふと思いついた。
「今までの聖女様についての記録などを閲覧する事はできますか?」
「書庫にあると思うから後で届けるよ。他に何か欲しいものはない?」
私の少し決意を込めた声色に気づいたのか、ルルタが労わる様に聞いてくれる。
他にと言われてぱっと思いつくのは一つだけ。
「あ! できれば私の居た村に、代わりに治癒術士を一人送ってはいただけないでしょうか? あの辺りは治癒術士が少なくて……」
「わかった、すぐ手配する」
その言葉に私はほっと安堵の息を吐く。
私が戻らないとなると人手が足りない、そうなると副院長の心が折れかねない。院長は上手にサボれる人だから全然心配してないのだけど。
「急に帰れなくなって心配だし、不安だよね。ごめんね」
「殿下……いえ、ルル様に謝っていただく様な事ではありません。これは誰かがやらなくてはいけない事でしょうし」
最後は、自分を鼓舞する為の言葉。
「そう言ってくれると、少し胸の支えが下りるようだよ」
ふわっと微笑んでくれるルルタ。そして本を片手に立ち上がった。
「そろそろ戻らないと。今日は遅くなると思うから、先に寝てくれていていいよ」
「はい、いってらっしゃいませ、ルル様」
見送りの言葉に、ルルタは嬉しそうに頷いて扉を閉める。その目は少し名残惜しそうに見えた。
……私の願望が見せた幻かもしれないけど。
「本当に、いい人だなあ」
だからこそ、失望させたくない。
「よし! まずは情報収集から!」
しばらくすると、ラウミがワゴンを押して入室してきた。
「こちらが代々の聖女の記録でございます」
「ありがとう」
窓際にある机の上に積んでもらい、お茶をお願いしていざ本の山と対峙する。
その殆どが、神官による記録か、聖女自身の残した日記や走り書きを纏めたもの。私はまずはペラペラと軽く流し読んでみる。だが。
「なんで……」
何故か、具体的に何を行うかの記載が全く無い。皆、女神様の神託に従ったとしか書き残していないのだ。
どの時代にも失敗したと言う記録は残っていないのは、幸いだったけれど。
私は半ば意地になって、今度は隅々まで詳しく読み進めてみた。
何処かに隠された紙片でも挟まっていないかと、行儀が悪いが本を軽く振ってみたり、ページを透かしてみたり、暗号で書かれているなんて馬鹿なことも考えた。
そのどれも空振りで、私は本の山の間に突っ伏した。目を瞑ると、閉じた瞼の裏で文字がこちらを馬鹿にする様に踊っている。
ああ、空回りしてるなーと思っているうちに、私はスッと眠りに落ちていた。
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