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04 なにこれっ!?

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「や、あああっ」
 孔の中にキングの指が埋まってく。指が沈んだ分だけ、とぷとぷと粘液が溢れていった。

 クリスに迫られたときも、ここに指を入れられた。あのときは、嫌で嫌で、感覚なんか覚える間もなく突き飛ばしていた。ほんの一瞬のことだったけど、たとえ長く触れられていたとしても、こんなに気持ちよくなったりはしなかった。それだけは断言できる。

 僕がこうなってしまうのは、相手がキングだからだ。
 キングの指が内側を擦るたびに、全身がちりちり痺れて力が抜ける。なのに、尻尾だけはじっとしていられなくて、バシャバシャと無意識に湯を掻いていた。

「あっ、あっ、ああんっ」
 喘ぎ声がとまらない。浴室の壁に反響して、実際以上に賑やかしいのが恥ずかしい。こんなに騒いでたら、いくら離れていてもケント先生やアンナの部屋まで聞こえてしまう。


「だめだめ。ゆび、だめぇ」
 喘ぎ声をとめたくてキングにダメだと言ってみたけれど、孔を探るイケナイ指にとまる様子はまったくない。

 人間の姿のときも、だいたいそうだ。キングの指をとめようと思ったら感じてちゃダメなのに、その指がとまらないから快感も途切れない。結果、ほどんどの場合が、喘ぎ声をとめることはできなかった。

 そのうち、声なんかに構っていられないほど頭がぼうっとしはじめた。
「は、あっ、キング、キング……」
 熱い。
 熱いよ。
 頭の芯が。下腹が。孔の中の、キングの指が触れるその奥が。
 熱くて、疼いて、膨らんで……なんだか、破裂しそうだ。


「ベリル。これ、もしかして」
 キングの驚いたような声に、閉じていた目をあけた。
 いつのまに体勢が入れ替わったのか。さっきまでキングの上に乗りあげていたはずなのに、いまはバスタブの内壁を背にキングを見上げている。

 キングの視線に促されて見遣ると、感じすぎて潤んでしまった視界に、水嵩がだいぶ減ってしまった水面とその奥へと続くキングの腕が映った。
 キングがそっと腕の角度を変える。僕の下腹が見えやすくなった。そこには、腹びれとキングの手とで囲まれるようにして、その頭を覗かせている……。

「なっ、なにこれっ!?」
 こんなもの、見たことがない。
 まじまじと見つめてしまったそこには、指より少し太めの細長いものが、キングの指を押し退けるようにして孔から顔を出していた。
 にょきりと天を向いた先端の形が、その色もあいまって逆さを向いたハートにしか見えない。その逆さのハートが、孔から溢れていたのと同じ粘液を纏い、水中で浴室の灯りを反射してぬらぬらと揺れていた。


「なんか、かわいいな」
 キングがやわらかな声でそんなことを言いながら、孔を弄るのとは反対の指で逆さハートをそっとつつく。
「やっ、あああんっ」
 その途端に、先端から孔の奥までビリリと走った甘い刺激に、ひときわ甲高い喘ぎ声が喉の奥から飛び出した。

「そうか。気持ちいいのか」
 嬉しそうな、それでいてやや感心したような声で、キングがつぶやき、さらに熱心に手を動かしてくる。そのたびに甘い悲鳴があがり、浴室に響いた。

「これはたぶん、ベリルのおちんちんだな」
 イルカの生殖器も普段はこうして排泄孔に隠れてるんだ、とキングが教えてくれる。
 そのことなら僕も海で見て知っていた。だけど、人魚とイルカにそんな類似点があったなんて。


「おちんちんがこんなふうになったの、はじめてか?」
 キングがそう言いながら、孔に収めたままの指をそろりと動かした。

 動かされて気がついた。知らないあいだに孔には二本も指が入ってる。僕のおちんちんとキングの指とで、孔の縁は限界ギリギリまで引き伸ばされている感じだ。
 その張りつめた際を、キングの指の股がそろりそろりと擦っていく。
 それだけでも堪らないのに、逆さハートの先端をやわやわと押し潰され、同時に孔の奥まで続くその根元を二本の指で挟まれ扱かれたのでは、もうひとたまりもなかった。

 孔の奥から込みあげた快美感が、たちまち全身へと行き渡る。
 キングの腕に縋る指先が痺れて、その輪郭も怪しくなってきた。まるで皮膚の薄い箇所から快感が染み出てるみたいで、縋る指にも力が籠る。
 すでに吸い込み過ぎて苦しい息が、さらに酸素を求めるせいで身体が自然と仰け反った。当然、喘ぎどころか、返事もできない。

 僕に聞きたいことがあるときは愛撫したらダメなんだと、キングはそろそろ学んだほうがいい。悦楽にすっかり痺れた頭の隅で、ぼんやりとそんなことを考えた。


「なあ、ベリル。はじめてなんだろ?」
 それでも、重ねて問われたその声にわずかに滲む不安を感じて、どうか伝われ、と首を大きく縦に振る。
 すると、
「よかった……」
 と、ごくごく小さな声でキングがつぶやいた。

 ふたたび閉じていた目蓋をあげると、心の底からホッとしたようなキングの顔が目の前にあった。
 キングが安心できたならうれしい。
 キングとは違うこんな身体でも、やさしく触れてもらえてうれしい。
 万が一、僕が人間でいられなくなったとしても、キングと僕なら大丈夫。なんの疑いもなくそう思えることが、何よりもうれしかった。


「ふあっ!?」
 突然だった。
 キングが僕に跨ったかと思ったら、おちんちんをキツく握られた。
 いや、違う。ああいや、違わない。
 確かに握られてるんだけど、この熱くて硬い感触は……。

 それをはっきりと知覚する前に、ばしゃばしゃと湯が激しく波立った。
「ああっ、いあっ、キングっ、はっ、あああっ」
 キツく握ってくる大きな手の中を、熱くて硬いものが行き来する。そのたびに僕のおちんちんが潰され、擦られ、捏ねられた。

 それといっしょに孔の中も責められる。力強い指先が、おちんちんの根元のさらに裏へと食い込んで、すべてを掻き出そうとするみたいに圧をかけて上下するから、おちんちんがどんどん熱くなってとまらない。

「もっ、もうっ。だめ、ああっ」
 気持ちよすぎて、じっとしていられない。なのに、キングが跨いでるから、思うように尾も動かせなかった。


「ベリル」
 ふいに呼ばれて、みたび瞳をあげた。
 荒い息に、烈しい眼差し。何かを求めてるのに、キングも言葉を紡げないらしい。

 なんだろう。何が欲しいんだろう。
 凄まじい快感に何度も目を瞑ってしまったけど、それでも目を凝らして大好きなその色を覗き込んだ。

 キングの首に腕を巻きつけ、その唇に口づけたのは、キングがそう望んでいると思ったからか……もしかしたら、自分がそうしたいと望んでただけかもしれない。
 でもそれは、ハズレではなかったようで、がぷがぷと齧るようなキスがすぐさまキングから返ってきた。

 両手の埋まってる彼のかわりに互いの身を寄せ、荒れて苦しい二人分の息を何度も塞ぐ。
 そのあいだも、全身を走り抜ける快感はあちこちで火花を散らして、脳裏を白く白く塗り潰していった。

 ああ、どうしよう。僕はどうなるの。
 白い世界の中、抑えきれない期待と不安にそんな疑問も浮かんだけど、その答えを掴めないままその瞬間はやってきた。
「ひあっ、あああああーッ」
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