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17 限界に挑みましょう。

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 薄い肉越しに腰骨を鷲掴んで、残り数センチの高さから幸成を引き落した。
 ぺニスが狭い深みを掻き分ける。甘い痺れが突き抜ける。とめようもなく腰が勝手に揺れて、最奥にいきあたった亀頭が奥壁をちゅくちゅくと撫でまわした。

 請われて呼んだその名前は、歯の隙間から漏れでた唸るような声だった。顎にでき得る限りの力を込めていたはずなのに、それでもペニスを襲う痺れにふわりと力が抜けてしまった。
 さっきペニスの芯をとぷりと抜けていったのは先走りか……いや、もしかしたらいくらか漏れてしまったかも。悔しさと焦りにさらに奥歯を食い縛る。

「いっ、あぁッ、あたるっ、あたってるッ」
 幸成がおでこを合わせたままで髪を振り乱す。零れた涙が俺の頬にも飛び散った。
 この最奥も幸成の快感スイッチのひとつだ。もともと奥深くまでみっちりと塞がれるのを好む幸成だったが、最近は「おくのコリコリがビリビリする」のが堪らなくイイらしい。


 ああ、このままイッてしまいたい。幸成の大好きなここへ、堪えに堪えた精液を思いきり撃ち込んだら、どれだけ気持ちがいいだろう。
 けど、「そこっ、そこだめぇっ」と可愛く乱れる幸成に、ふたたび欲が湧いてきた。

 幸成をもっと高みに連れていきたい。さっきの、うっかり射精してしまうだなんて中途半端な快感じゃなく、とびきり気持ちよくしてやりたい。

 自分よりも幸成へと向かう欲の強さを自覚しているあいだにも、亀頭に纏わりつく熱い肉が俺のかたちに馴染んできたのがわかった。幸成の腰もゆるゆると揺れだしている。あとは俺がどこまで持ちこたえられるのか……ここまでくると、もはや限界への挑戦だ。


 覚悟を決めて、幸成の腰骨を掴む手を大きく手前に引き寄せた。俺のぺニスがその付け根を軸に手前へ倒れ、アナルの腹側の壁奥をぞろりと撫でる。途端に「あああッッ」と、甲高い悲鳴があがった。
 すかさず今度は腰骨を向こうへと押し遣る。さらに同じ要領で、幸成の腰を右へ左へぐるりぐるりとまわしながら、幸成の望む深みをぺニスの先端でごりごりと撫でまわした。

「やぁっ、かきまぜ、んなぁっ」
 これは、「もっと」って意味だ。あきらかに声の艶が増している。

 しかし、期待に応えてやりたいのは山々だったが、いまの俺にローリングは刺激が強すぎた。
 腰を突き抜けていく鋭い快感に、慌てて幸成を持ちあげる。
「は、あぁんっ」
 と漏れた喘ぎには幾分か不満が滲んでいたが、いまの俺にはどうしてやることもできない。


 いくらかペニスを引き抜いて幸成を焦らしているあいだに、深呼吸でもしてなんとか立て直すつもりでいた。なのに、
「ふっ、あぁ、あっ、」
 たちまちアナルの内圧がぐぐっとあがり、浅い部分にカリ首を不規則にしゃぶられてしまう。

 しまった。インターバルを置くつもりで半端に抜いたペニスが、幸成の前立腺をモロに刺激してしまったんだ。

 幸成を持ちあげたせいで、いまはその表情がよく見えた。きつくしかめた眉。焦点のぼやけた瞳。力なく戦慄く唇も、浅く細切れな吐息も、幸成がドライの高みへとゆっくり登り始めた証だった。

 下腹を波うたせた幸成が、さらに気持ちのいいポイントを探りにかかる。ゆるゆると背中が丸まって、そろりと腰が突きだされる。きゅっきゅと不規則に収縮を繰り返すアナルが、的確に前立腺へと俺の亀頭を擦りつけだした。


「あぁ……ふあ……」
 幸成の喘ぎが、その輪郭をあやふやにする。これは、確実にドライへ乗れそうだ。

 幸成にとって、深くて強い快感に浸れるドライオーガズムは、至るまでの行程が繊細な分、とても貴重なものだった。幸成をもっと感じさせたかった俺としては大歓迎のはずなんだが、これで不用意には動けなくなってしまった。

 カクンカクンと痙攣を繰り返す腰と、ぎゅぎゅっと絞ってくるアナルに、益々窮地へと追い込まれる。気を緩めればぐずぐずと溶けてしまいそうな下半身が、幸成を持ちあげ支える腕を震わせる。もうインターバルどころじゃない。

 それでもドライの邪魔だけはしたくなかった。目を瞑り、顎を引き、ひたすら下腹に意識を集中させる。
 けどもう、限界だ。そんな小細工なんか通用しないギリギリのところまで追い詰められていた。


 くそっ。何かないのか。こんなゆるゆると登り詰めていくようなぬるいドライなんかじゃなくて、幸成を高みの、そのまた上まで勢いよく放り投げてしまえるような方法は。
 必死に考えてみたところで、すでに霞んで鈍る俺の思考回路じゃ、そんな都合のいい手など浮かぶはずもない。

 苦し紛れに目を開けると、俺の歯形をうっすら纏った乳首に目が留まる。見れば、幸成のガウンはいつの間にか着崩れて、片方の肩がすっかり肌蹴てしまっていた。その崩れたほうの襟から尖った乳首がツンとその先を覗かせている。それが、幸成を持ちあげているせいで、ちょうどいい具合に俺の目の前へ位置していた。

 やらしいその眺めを目にした瞬間、幸成の乳首を舐め転がしたときの、こりこりとした感触が舌先によみがえった。途端に、じゅわりと唾液が口内に溢れてくる。

 ああ、しゃぶりたい。張り詰めたようにぴりぴりと勃ちあがっているこの乳首に吸いつきながら、ドライのせいでしっとりと汗ばんだ幸成の胸元を舐めて嗅いで心ゆくまで味わいたい。
 目の前で揺れる乳首に、そんな欲望で頭がいっぱいになった。


 ダメだ。いま動いたら幸成のドライの邪魔になる。
 それだけは意識のどこかに残っていた。幸成の腰骨を掴む手と、自分の腰の位置だけは動かさないよう、そこだけはきっちり固定する。

 乳首から目を逸らせないまま、滴りそうなほどの唾液を舌先にのせて吸い寄せられるように顔を寄せていった。
 鼻先を掠めた幸成の匂いに、さらに気が遠くなるのを感じながら壁に貼りついていた背も浮かせる。

「あっ、あ、あ、」
 幸成がせつなげに声を震わせた。どうやらぺニスの角度が変わってしまったらしい。
 幸成の腰が亀頭を追いかけ、乳首が俺から離れていく。それを首を伸ばしてさらに追いかけ、ついに乳首に吸いついた。

「ふぇ? あぁっ、だめ、いまだめぇ」
 いくらか呂律のまわっていない拒絶の言葉が、頭上から聞こえてくる。幸成の手が、掴んでいたガウンの襟ごと俺の肩を遠くへやろうと押してきたが、ろくに力が入らないのか、そんな妨害は邪魔にもならない。


 腹の底まで吸い込んだ蒸れた汗の匂いに、脳の奥が痺れていく。震える胸筋をべろりと舐めあげると、くくんっと幸成の胸が突きだされた。

 いっそうしゃぶりやすくなった乳首を、テクも駆け引きもなしに夢中で舐めねぶる。吸いついたまま舌先で乳首を転がすと、
「は、ぁあああぁぁっ」
 と、ひと際高く細い嬌声があがった。

 その声が消え入ると同時に、幸成の頭がかくんとうしろに落ちる。そのまま幸成の肩と胸が、ゆっくりと背中側へ傾いていって……。
「っ、ゆきッそっちはッ」
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