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04 【ダメ見本】乳首には優しく触れましょう。

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「え、うそ……」
 俺の舌が幸成の乳首に届くより先に、幸成が戸惑うような声をあげた。いきなり舐められるとは思いもよらなかったらしい。

「ぁッ、ぁぁんっ」
 小さな硬さを舌先に感じるのと同時に控えめな艶声があがり、幸成の背がぱたんとベッドの上に落ちた。
 先ほどまでは、さわってつまんで、とねだるように胸を差し出していたのに、今度は逆に背を丸めて、舐めないでとでも言いたげに胸を遠ざけ、俺の舌から逃れようとしている。それを追いかけ、乳輪のまわりの肉ごとかぷりと咥えると、ひと際高い喘ぎ声が幸成の喉から迸った。

 なるべく歯は立てない。それでもやわい胸筋には軽く歯を食い込ませて、いつでも齧ってあげるよと、エナメル質の硬さを知らしめておく。そうして開いた口の中で、幸成のあの可愛い乳首が期待に震えながら俺の愛撫を待っているのかと思うと、それだけでワクワクがとまらなくなった。
 さあ、どうしようか……。


 最初は舌の腹全体を使って、乳輪の外から内へと舐め迫った。でも、乳首にはまだ触れない。乳首へ触れるか触れないか、ぎりぎりのところで舌をひらりと翻す。それを何度か繰り返しただけで、幸成は「くぅ」とせつなげに喉を鳴らした。
 ただでさえ勃起していた乳首がさらに充血してつらくなってきたんだろう。懲りもせず身を縮こまらせて、幸成が俺の舌から逃げようとする。それに構わず続けていると、乳輪までもがふっくらと盛りあがり、舌の腹にその弾力を感じるようになってきた。
 頃合いだな。

 たっぷりと唾液を纏わせた舌に力を入れ、その充血しきったコリコリを乳輪ごとぷちゅりと潰してやった。
「く、ふぅん──っ」
 くぐもった悲鳴とともに、縮こまらせた肩のあいだで幸成の胸がくいと持ちあがる。もはや乳首が疼いて仕方がないんだろう。自分から俺の舌に乳首を押しつけてきた。

 焦らした分だけ可愛がってやりたい。そんな気持ちも確かにあったが、いまはそれよりも、くぐもった悲鳴のほうが気になった。
 横目でちらりと確認すると、幸成が自分の口を両手で塞ぎ、懸命に喘ぎ声を堪えていた。もしかしたら、先ほどあげたひと際高い艶声に自分でも驚いて、そんな行動に出たのかもしれない。
 目をきつく閉じ、両手を重ねてまで喘ぎを抑え込んでいる姿は、それはそれで可愛いんだが、これじゃ幸成はセックスを楽しめないし、俺も幸成を楽しめない。


 名残惜しい気持ちを堪え、舌を押し返してくる小さな粒をそっと解放してやる。胸筋に当てたままだった歯も同様だ。
 でも、身は起こさない。幸成の胸の上に伏せたままで、じっと幸成の反応を待った。
 横目のまま幸成を見ていると、しだいに荒かった息も治まり、きつく閉じていた目蓋からも力が抜けていく。落ち着きを取り戻したところで、刺激がまったくないことに気がついたのか、ふうっと目蓋が持ちあがった。

 快感に潤んだ瞳がゆるりと揺れながら、その視界を確かめている。そうして、自分の乳首のすぐ上で口を開けて構えている俺を見つけたんだろう。幸成が目を見開いた。
 わずかに首を傾け、俺の口元を幸成に見えやすくする。俺からも幸成が見やすくなったが、視線は合わなかった。幸成が俺の口元に集中してるからだ。
 そうだ。そのまま見ててくれ。

 幸成の集中が途切れる前に、ゆっくりと口を閉じていく。歯をやや剥きだしにして、ほかの余計な場所に当たらないよう、乳首だけに狙いを定めた。
 それを目にした幸成がゆるゆると首を振る。それでも口を塞いでいる手は外れない。喉の奥で「ふ、ふうぅー」と興奮の滲んだ唸り声が鳴るだけだ。


 そうまでして抑え込みたいのは、なんだろう。
 齧られればきっとあげてしまう喘ぎ声だろうか。それもと、さっき言わないと決めた拒絶の言葉だろうか。
 いずれにしても、聞かせたくない相手は日向だ。

 そんなに齧られたくないなら、その手で俺を押し退ければ……いや、違うか。
 緊張に息を吸い込み過ぎたのか、小さく震えはじめた幸成の胸は、いまだ可愛く突き出されたままだ。さっきのように背を丸めて逃げたそうにする様子もない。
 ということは、俺の狙いは幸成の望み通りということだ。

 歯が乳首に触れる直前になって、口を閉じる動きをとめる。
 それを認めた幸成が、せつなげに顔を歪めた。
 そんなに早く齧ってほしいなら、その手で俺を抱き寄せてしまえばいいのに、と思う。
 実際にそうされれば、乳首を齧るさまを幸成に見せつけることも叶わなくなるが、それはそれで楽しそうだから問題ない。

 けれど、幸成の手は俺へと伸びてはこなかった。相変わらず両手で口を塞ぎ、期待に満ちた瞳で早く早くと語るだけだ。
 そのことをひどく残念に思いながら、熟れきった乳首に軽く、しかし確実に歯を立てた。


「ふうっ、うううぅ────っ」
 そのまま俺が乳首にむしゃぶりついたせいで、くぐもった呻き声が長く尾を引く。
 乳首を吸い、舌先で弾き、乳輪の外側から歯で刮ぐ。そのたびに悲鳴はあがったが、いずれもくぐもったままだった。

 見てさえいれば幸成が感じていることはひと目でわかる。いまさら喘ぎ声を隠そうが、形ばかりの拒絶をしてみせようが、幸成の甘い印象は変えられない。それは、免疫がない日向の目から見ても同じことだろう。

 それでも口を塞ぐ手を緩めないのか。
 つまらないと不貞腐れた気持ちと、幸成の意地に張り合うような気持ちが同時に湧いてきた。
 それなら……。


 軽く身を起こし、下方へと手を伸ばして幸成の脚にそっと触れる。
 触れた途端にビクリと揺れたそれは、何かを隠そうとするように慌てて膝を引き寄せ、内側へと捩れた。その拍子に、さして長くもないガウンの裾が太腿のつけ根までするりと肌蹴てしまう。

 露わになった白く艶やかな太腿に、思わず肌蹴た裾を直してしまった。
 ダメだろ、俺。日向に幸成を見せると決めたじゃないか。
 幸成だって咄嗟に隠そうと身を捻ったが、興奮した性器を見せずにセックスを見せることなどできないことはわかっているはずだ。

 くそ……今日で終わらせてやる。
 さっきは、いったん中止にして今回はなしだなどと考えたが、二度目はない。これで最後だ。
 二度と誰かに見せたりなどするものか。幸成は俺のだ。

 当然のことを改めて胸の内で宣言しながら、俺は幸成の脚のあいだに手のひらを滑り込ませた。
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