親友をセフレにする方法

藍栖 萌菜香

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43-オナニーショーも楽しんで。

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 大悟の声音がいきなり甘くなった。こんな声でこんなおねだりするなんてズルいだろ。
 それでもなかなか動けずにいると、にこにこと(いや、実際にはそんなに笑ってはないんだけど、俺ビジョンでは)機嫌の良さそうな大悟が両手で俺の手を促した。

 まだ項垂れたままの俺のペニスへと誘われて仕方なく握ると、大悟の手がスッと離れていく。大悟とのあいだにできた、ほんの少しの距離が心細い。頬に残る指の感触が、大悟にもう一度触れてほしいんだとせっついてくる。
 でも、それには先に大悟の望みを叶えないと……。

 覚悟を決めて手を動かしてみるのに、どうにももたもたと要領を得ない。
 それもそのはずで、俺は普段から、グッズを使ってアナニーをするだけで、ペニスを扱きたてるようなオナニーはしないんだ。本当なら、そのアナニーを大悟にして見せればいいんだろうけど、ここにはグッズなんてないし、あったとしても……そんな特殊な嗜好をしてるんだと大悟に知られるのは躊躇われた。

 隠さない誤魔化さないって約束が頭をよぎる。それでも、自分から打ち明けるなんて、この件に関してはとてもできそうになかった。


 もともとオナニーは好きじゃない。自分のことをゲイかもしれないと疑い始めたきっかけが初めてのオナニーだったこともあって、あまりいい印象も持っていなかった。

 思春期に入ったばかりのあの頃は、熱く膨れた自分のペニスを握ってみても、クラスの男子も同じことをしてるのかと、そんなことばかりが気になって快感に集中できなかった。知識が増えてからは、勃起した自分のペニスを見るたび、こんなものがアナルに挿るのか、挿れると気持ちがいいって本当なのかとそんなことばかり。

 そんなの、確実に一般男子の思考じゃない。そう思い知るのが嫌で、オナニーは極力避けていたんだ。

 そんな抑圧の反動か、ゲイだと自覚してからは、あっという間にアナルの快感の虜になった。いまだって、どうしてもドライで達せずに仕方なくアナニーを終わらせるときくらいしかペニスは弄らない。ペニスだけで達したことなんて数えるほどしかないし、それもドライほどには酔えなくて味気ないものだった。

 ペニスの快感に酔えたのは今日が初めてだ。大悟のペニスでアナルをみっしりと塞がれながらだったから、純粋にペニスだけの快感じゃないにしても、そのときのことをなぞっていけばオナニーも……うん、何とかなるかもしれない。


 大悟はどんなふうに触れてきたっけ。
 目を閉じて気持ちのよかった記憶を辿る。
 太くて長い大悟の指は、確かペニスの胴をそっと撫でてから、裏筋を何度も往復したんだ。

 記憶のなかの大悟の指をゆっくりと反芻していると、まるで本当に大悟に触られてるみたいな気分になった。萎えていたペニスも、あのとき覆いかぶさられていた背中も、記憶のなかの大悟の影を追って少しずつ熱をあげていく。

「ゆきなり、勃ってきたね」
 少し離れた場所からそっと声をかけられた。あのときは、耳のすぐそばで囁かれたのに……。途端にその距離の差がさみしくなる。けど大丈夫、まだ熱がさがる様子はない。

 オナニーに集中しようと熱くなってきた溜め息を吐き出したら、今度は、
「ゆきなりのおちんちんは、興奮するときれいなピンク色に染まるんだよな」
 そんなことを言われて、ついペニスを両手で隠してしまった。前屈みに丸めた背中の内側で、羞恥がぐるぐると籠っては体温をさらにあげていく。

「隠しちゃだめだよ。見せてくれるんだろ?」
 そうだ、大悟に見せないと。大悟の望みを叶えて、大悟を癒すんだ。
 恥ずかしさを堪えながらゆっくりと姿勢を戻した。ついでに、正座を崩して脚をひらく。俺の潮を吸って湿ったシーツに尻が触れて、一瞬ひやりと感じたけど、すぐにその場所だけぬるくなり蒸れていった。


 大悟の視線を身体のあちこちに感じながら、ふたたびオナニーを再開する。
 目を閉じててよかった。きっと大悟は、あの狩りでもするような鋭い眼差しで俺を見てるんだろう。こんな姿をあんな目で見つめられたんじゃ、きっと羞恥と興奮でわけがわからなくなる。そうなったらオナニーどころじゃないからな。

 あのとき大悟は、鈴口に指を滑らせてた。真似してペニスの頭を撫でてみたけど、先走りが足りないのか、大悟がしたようにぬるぬるとはいかない。少し扱いて先走りを絞り出してみたけど、やっぱり量が足りなくて、あのときの再現はできそうになかった。

 先走りなんて、アナルを弄れば滴るくらい溢れるのに……。
 そんなことを考えたせいか、勝手に腰がもぞりと揺れた。腫れぼったいアナルがシーツに擦れて、甘い溜め息がこぼれる。ああ、やっぱりペニスよりもアナルを弄りたい。


「ゆきなり。もしかして、おちんちん、自分ではあまり触らない?」
 不思議そうな声で大悟に問われて、思わず目を開けてしまった。大悟のやつ、そんなことまでわかるのか。
「さっきから、俺が触ったときと同じ触り方してるよね」
 うぅ、……バレバレだった。本当にもう、約束以前に大悟には何も隠し事ができない。

「オナニーはあんまりしたことない。いつもしてるのはアナニーで、それも……ど、道具を使って、」
 してるんだ、と続けた言葉は、もごもごと口のなかで消えていった。大悟の洞察力に観念して白状したものの、自分の特殊な嗜好を口にするのは思いのほか恥ずかしい。首から耳の端まで燃えるように熱くなった。

 その一方で、不安も込みあげる。大悟にしてみれば、男がペニスを弄らないだなんて、たぶん思いもよらないことだろう。引いてやしないかと大悟を見遣ると、何事か、真剣な顔をして考え込んでいた。

「あの、大悟?」
「ん? ああ。じゃあ、続けようか」
「つ、続けるの?」
「そうだな。最初はおしりを弄りながらのほうがいいかな? だったら、ベッドヘッドに寄りかかったほうがやりやすそうだ」
 ぶつぶつと言いながらベッドヘッドに凭れやすいように、いそいそと枕をセットし始めた大悟に呆然としてしまう。

 大悟の考えてることがわからない。ここではいつものアナニーはできないんだから、大悟の望んだ『何をしたら色っぽくなるのか?』の探求は頓挫したも同然だ。なのに、オナニーを続けようって……?


 呆然としたまま手を引かれてベッドヘッドに誘導され、そっと枕へと沈められる。そうして改めて大悟の顔を見あげると……あ、このやろう。
「大悟、楽しそうだな」
 今度は、誰が見てもわかるくらいに大悟の顔が笑み崩れていた。

「当然」
「当然?」
「だって、ゆきなりのおちんちんは未開発ってことだろ? なら、俺が開発したい」
 み、未開発って。まあ、確かにそう言えるのかもしれないけど。

「色っぽくなるとかどうとかの確認はいいのか?」
「それは、いずれまた」
「いずれまた、なんだ……」
「ああ」

 それこそ当然のように『いつか見せてもらうから』と匂わされて、唖然としてしまった。アナニーショーにしてもペニス開発にしても、俺が大悟の願いを断るわけがないと、大悟はすでに確信してるんだろう。それを俺がいまここで訂正できない時点で、その『いずれ』が来ることは確定してしまった。

 仕方ない。『なんでもする』って言質はあげちゃったし、これも惚れた弱みだ。
 何にせよ、大悟が楽しそうにしてるんだから、まあいいか。

 不思議だ。さっきまで『望みを叶えなくちゃ』と切なく苦しかったのが、いまはこんなにも甘くてくすぐったい。同じ惚れた弱みでも、気持ちの持ちようひとつで百八十度違って見えるものなんだな。


「ゆきなりは自分の好きなところを触っていいよ。ゆきなりのおちんちんは、俺が気持ちよくするから」
 今日のところはね、と、少し意地悪そうにつけたした大悟が瞳をキラキラさせながら、さっそく俺のペニスに手を伸ばしてきた。
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