10 / 54
10-覆い被さってくればコッチのものです。
しおりを挟む
大悟が俺を抱き締める。その腕が強くなる。
うれしい。終わりじゃなかった。
腰の奥からゆるゆると湧きつづける快感と、先のセックスから連なる期待とともに、大悟を思うさま抱き締めた。
大悟の匂い。硬い筋肉。アナルを塞ぐ圧迫感。
もうしばらくは俺のものだと、それらに陶然と酔っていたら、突然視界がグラリと揺れた。
「え? うわっ、なにっ? どうしたっ?」
慌てて大悟の首に腕を巻きつけ、抱きついた。大悟の力強い腕にキツく抱き返されて、やっと安心できたけど。
なあ、大悟? なんで急に立ってんの? ペニス嵌まったままなんだけど。
俺があまりの事態に愕然としているうちに、大悟がソファーを離れて歩き出す。両足が半端にぶらさがり、ゆらゆら揺れた。
「ちょっと待て、大悟っ。は、うぅんっ」
不安定な脚先が心許なくて大悟の腰に巻きつけたのは、はっきり言って失敗だった。アナルにあったペニスを、みしりと根元まで咥え込んでしまった。
腰の奥の奥に感じた鈍い突きに、大悟の首に回していた腕から力が抜けて、肘ががくりと伸びる。そのせいで重心が変わり局所が加重されて、アナルのふちが大悟の下生えに強く擦れる。
「ああっ、だいごッ。待ってッ、や、ああッ」
大悟が足を踏み出すたびに、俺の身体が上下左右にゆさゆさ揺れる。併せて大悟のペニスも、アナルのなかで上下左右に。
普通のセックスじゃ擦られないような場所まで、ぐりりと強く抉られる。アナルの奥で暴れる亀頭を追うように、太いペニスの根元がぐいぐいと前立腺を押しあげた。
浅い場所と深い場所。その両方を一度に刺激され、不安定な姿勢も相まってクラクラと視界が揺れる。
「ああッ、だいごっ、やあっ、も、掻き混ぜ、んなぁっ」
俺が恐慌のなかで悶えていると、背中からそっとベッドに降ろされた。アナルへの恐ろしい刺激はやんだけど、そのときにはもう俺は息絶え絶えで……。
なんちゅうことをしてくれるんだ、大悟のヤツっ!
いまのは、俗に言う『駅弁ファック』だ。
興味本位でやりたがる奴はいるが、挿入側の負担が大きい体力勝負の体位で、数あるセックス体位のなかでもマニアックな部類に入る。
不安定な姿勢に集中できないせいか、受ける側もあまり気持ちよくはないらしい。
と、以前茂兄が言ってたが…………あの、うそつき。
俺のアナルは、暴れ馬の名残を受けて甘く鋭い快感にひくつき、いまだ嵌まったままの大悟のぺニスに、きゅうきゅうと断続的に縋りついている。
未知の体感に痛いほどに勃起させられた俺のぺニスも同様、射精後だというのに、おびただしい先走りを溢れさせていた。
大悟のヤツ、『駅弁』だと知っててやったのか? それとも知らずに?
知っててやったのであれば、これを大悟に教えた犯人を恨んでやりたい。知らないでやったのであれば、無茶をするなと叱ってやる!
あまりの無体に苛立ちながら、強制的にイカされそうになった暴挙の余波を瞑目してやり過ごしていると、ふいに頬へとぬくもりを感じた。
目を開けると、大悟の少し心配そうな瞳と出逢う。身を伏せて俺の顔を覗き込んだその姿勢のまま、指の背でそろりと頬を撫でてきた。
駅弁なんて、大悟が知るわけないか。こんなことになると知っていればしなかったと訴えてくるその瞳を単純にも信じられるほど、その指先にはやさしさが滲んでいる。
そう言えば、以前もこうして、よく頬を撫でられた。あれも、中学のときだったか。
必ず頬を抓るのとセットで、抓ったあとに『痛そうだったから』と、その痕を撫でられたんだ。
当時は、『痛くしてるのはお前だろ?』と、照れ隠しに怒ってみせたけど、本当はちゃんとわかってた。
俺が、引き攣ったような作り笑いをしてたからだ。
あの頃の俺は、男友達との他愛ない戯れ合いにひどい緊張を強いられていて、それを誤魔化すため必要以上に笑ってた。貼りついたような作り笑いが元に戻らなくなることもしばしばで、ときには、自分がそんな状態にあることにも気づけないような有り様だった。
そんなとき、決まって大悟が抓ってくれたんだ。強張る頬の理由には一切触れず、『痛そうだ』と、抓って撫でてくれるだけのやさしさに、俺が何度助けられたか……。
懐かしい指の背の感触にふたたび目を閉じながら、抓られなくなったのはいつからだっけ、と考える。
高一の、夏? いや、秋か?
茂兄に抱かれて、ゲイの自覚を持ってからは、作り笑いをするのも減った。大悟が抓らなくなったのは、そのせいか?
確かな記憶を辿れないまま大悟を見あげれば、いつもの仏頂面がそこにあった。
大悟は口数が少ないだけじゃなく、表情も乏しい。たぶん、ずっと自分を圧し殺してきたせいで、思ったことをどう表していいかわからなくなったせいだろう。
無理もない。母親が出ていった幼稚園の頃から、ずっとだったらしいから。
中学のとき、俺が辛抱強く聞き出したときも、大悟はずっと無表情だった。父親に強いられた理不尽な要求について、自分がどう思ってるかもよくわかってないみたいだったんだ。
大悟の無口や無表情は、不器用どころの話じゃない。欠落とか、壊れてるとかって言葉のほうが、もしかしたら正解なのかもしれないけど……。
それでも、お前が大事だよ、大悟。
自分で『駅弁』をしておきながら、悶絶した俺を心配するような天然体質でも。心配なのに、かける言葉も見つけられないで、ただ見守ることしかできなくても。
しょうがないヤツだな。
出会った中学の頃から、あまり変わってない大悟に思わず小さな笑いが漏れた。
すると、珍しいことに、大悟の顔色がサッと変わった。
男らしい真っ直ぐな眉がわずかに歪み、顎に食い縛るような力が入って強張りだす。それから、唯一大悟の感情を映すその瞳が、まるで何かに縋るみたいに陰っていって……なんだかつらそうだ。
「大悟?」
どうかしたのか? って、聞くつもりだった。だって、そんな顔をされたら気になるじゃないか。俺まで胸が苦しくなってくる。
なのに、俺が問いかける前に、
「ふ、んっ、ぅんんッ!?」
大悟がいきなり屈み込んできて、俺の唇をその唇で塞いできた。
うれしい。終わりじゃなかった。
腰の奥からゆるゆると湧きつづける快感と、先のセックスから連なる期待とともに、大悟を思うさま抱き締めた。
大悟の匂い。硬い筋肉。アナルを塞ぐ圧迫感。
もうしばらくは俺のものだと、それらに陶然と酔っていたら、突然視界がグラリと揺れた。
「え? うわっ、なにっ? どうしたっ?」
慌てて大悟の首に腕を巻きつけ、抱きついた。大悟の力強い腕にキツく抱き返されて、やっと安心できたけど。
なあ、大悟? なんで急に立ってんの? ペニス嵌まったままなんだけど。
俺があまりの事態に愕然としているうちに、大悟がソファーを離れて歩き出す。両足が半端にぶらさがり、ゆらゆら揺れた。
「ちょっと待て、大悟っ。は、うぅんっ」
不安定な脚先が心許なくて大悟の腰に巻きつけたのは、はっきり言って失敗だった。アナルにあったペニスを、みしりと根元まで咥え込んでしまった。
腰の奥の奥に感じた鈍い突きに、大悟の首に回していた腕から力が抜けて、肘ががくりと伸びる。そのせいで重心が変わり局所が加重されて、アナルのふちが大悟の下生えに強く擦れる。
「ああっ、だいごッ。待ってッ、や、ああッ」
大悟が足を踏み出すたびに、俺の身体が上下左右にゆさゆさ揺れる。併せて大悟のペニスも、アナルのなかで上下左右に。
普通のセックスじゃ擦られないような場所まで、ぐりりと強く抉られる。アナルの奥で暴れる亀頭を追うように、太いペニスの根元がぐいぐいと前立腺を押しあげた。
浅い場所と深い場所。その両方を一度に刺激され、不安定な姿勢も相まってクラクラと視界が揺れる。
「ああッ、だいごっ、やあっ、も、掻き混ぜ、んなぁっ」
俺が恐慌のなかで悶えていると、背中からそっとベッドに降ろされた。アナルへの恐ろしい刺激はやんだけど、そのときにはもう俺は息絶え絶えで……。
なんちゅうことをしてくれるんだ、大悟のヤツっ!
いまのは、俗に言う『駅弁ファック』だ。
興味本位でやりたがる奴はいるが、挿入側の負担が大きい体力勝負の体位で、数あるセックス体位のなかでもマニアックな部類に入る。
不安定な姿勢に集中できないせいか、受ける側もあまり気持ちよくはないらしい。
と、以前茂兄が言ってたが…………あの、うそつき。
俺のアナルは、暴れ馬の名残を受けて甘く鋭い快感にひくつき、いまだ嵌まったままの大悟のぺニスに、きゅうきゅうと断続的に縋りついている。
未知の体感に痛いほどに勃起させられた俺のぺニスも同様、射精後だというのに、おびただしい先走りを溢れさせていた。
大悟のヤツ、『駅弁』だと知っててやったのか? それとも知らずに?
知っててやったのであれば、これを大悟に教えた犯人を恨んでやりたい。知らないでやったのであれば、無茶をするなと叱ってやる!
あまりの無体に苛立ちながら、強制的にイカされそうになった暴挙の余波を瞑目してやり過ごしていると、ふいに頬へとぬくもりを感じた。
目を開けると、大悟の少し心配そうな瞳と出逢う。身を伏せて俺の顔を覗き込んだその姿勢のまま、指の背でそろりと頬を撫でてきた。
駅弁なんて、大悟が知るわけないか。こんなことになると知っていればしなかったと訴えてくるその瞳を単純にも信じられるほど、その指先にはやさしさが滲んでいる。
そう言えば、以前もこうして、よく頬を撫でられた。あれも、中学のときだったか。
必ず頬を抓るのとセットで、抓ったあとに『痛そうだったから』と、その痕を撫でられたんだ。
当時は、『痛くしてるのはお前だろ?』と、照れ隠しに怒ってみせたけど、本当はちゃんとわかってた。
俺が、引き攣ったような作り笑いをしてたからだ。
あの頃の俺は、男友達との他愛ない戯れ合いにひどい緊張を強いられていて、それを誤魔化すため必要以上に笑ってた。貼りついたような作り笑いが元に戻らなくなることもしばしばで、ときには、自分がそんな状態にあることにも気づけないような有り様だった。
そんなとき、決まって大悟が抓ってくれたんだ。強張る頬の理由には一切触れず、『痛そうだ』と、抓って撫でてくれるだけのやさしさに、俺が何度助けられたか……。
懐かしい指の背の感触にふたたび目を閉じながら、抓られなくなったのはいつからだっけ、と考える。
高一の、夏? いや、秋か?
茂兄に抱かれて、ゲイの自覚を持ってからは、作り笑いをするのも減った。大悟が抓らなくなったのは、そのせいか?
確かな記憶を辿れないまま大悟を見あげれば、いつもの仏頂面がそこにあった。
大悟は口数が少ないだけじゃなく、表情も乏しい。たぶん、ずっと自分を圧し殺してきたせいで、思ったことをどう表していいかわからなくなったせいだろう。
無理もない。母親が出ていった幼稚園の頃から、ずっとだったらしいから。
中学のとき、俺が辛抱強く聞き出したときも、大悟はずっと無表情だった。父親に強いられた理不尽な要求について、自分がどう思ってるかもよくわかってないみたいだったんだ。
大悟の無口や無表情は、不器用どころの話じゃない。欠落とか、壊れてるとかって言葉のほうが、もしかしたら正解なのかもしれないけど……。
それでも、お前が大事だよ、大悟。
自分で『駅弁』をしておきながら、悶絶した俺を心配するような天然体質でも。心配なのに、かける言葉も見つけられないで、ただ見守ることしかできなくても。
しょうがないヤツだな。
出会った中学の頃から、あまり変わってない大悟に思わず小さな笑いが漏れた。
すると、珍しいことに、大悟の顔色がサッと変わった。
男らしい真っ直ぐな眉がわずかに歪み、顎に食い縛るような力が入って強張りだす。それから、唯一大悟の感情を映すその瞳が、まるで何かに縋るみたいに陰っていって……なんだかつらそうだ。
「大悟?」
どうかしたのか? って、聞くつもりだった。だって、そんな顔をされたら気になるじゃないか。俺まで胸が苦しくなってくる。
なのに、俺が問いかける前に、
「ふ、んっ、ぅんんッ!?」
大悟がいきなり屈み込んできて、俺の唇をその唇で塞いできた。
16
お気に入りに追加
2,527
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる