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46-彼の目の錯覚?
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ジャックの吠え声に、慌てて窓の外を見た。
すると、プールサイドにベリルとジャックが、プールの真ん中にはビーチボードに乗ったルークがいた。
「はあ!? ルーク、なんでまたそんなところに……」
窓の外の様子をうかがいながら、慌てて一階へと廊下を進む。
途中で裏庭の樹が邪魔になってプールの様子は見えにくくなったが、のんびり見てる場合じゃない。プールサイドに急がないと。
でも次の瞬間、俺は思わず足をとめて立ちどまった。
事態が大きく動いたからだ。
ジャックが視界から消え、ルークがプールへ滑り落ち、ほぼ同時にベリルがプールへと飛び込んだ。
ついで、消えたと思ったジャックが飛んできて、ベリルのあとを追って水飛沫をあげる。
成す術もなくただ立ち尽くしていた俺は、息を詰めて見守るしかない。
ほどなくベリルがルークを抱いて水面から顔を出した。
その様子に、ふうっと全身から力が抜けた。
ルークもベリルも笑っている。
その後ろを犬掻きで追うジャックが、『やれやれ』とでも言ってそうに見えるのは、俺の気のせいか。
俺の口からも、気の抜けた笑いが漏れた。
まったくルークのヤツ、ハラハラさせやがって……。
ベリルがいてくれて本当によかった。
彼は泳ぎが得意だ。飛び込んだフォームを見る限り、記憶は忘れてても泳ぎ方を忘れた様子はない。
彼がついてる限りルークは無事だろう。
「……ん? 待てよ?」
改めて一階を目指して歩きだしたが、俺はまたしても足をとめた。
ルークのピンチから救出まで、一連の動きは一瞬だった。
安堵して初めてそれらの映像が脳内で整理されていく。
その過程で、なにかが引っかかった。
さっき、ベリルが飛び込んだあと……あがった水飛沫に混ざって、銀色の尾びれのようなものが見えなかったか?
呆然と眺めるしかなかったときの記憶だ。正確とは言えない。
でも……。
窓の向こうで、頭にしがみつくルークを連れて、ベリルが笑いながらプールサイドへと泳いでいく。
その足元にも、きらきらとライトの光を弾くものが見える…………気がする。
「なんだろう……?」
ライトアップされたプールの水中の様子は、不自然に光が屈折していて、見えそうで見えない。
目の前に茂る樹の枝葉も邪魔で、あの光の正体が余計に気になった。
なんとも言えない予感とともに、思わず引き返して、枝の邪魔しない窓辺にかじりつく。
ふいに、『ベリルは人魚なの!』と叫んでいたニーナの声が脳裏に再生された。
「いやいや、そんなはずは……」
そうやってひとりでベリル人魚説を否定している俺の目に、ルークのあとに続いてプールサイドに乗り上がるベリルの姿が映った。
「え……?」
足が……銀色……?
っていうか、あれはまさに……。
自分の目を疑って、両目を擦ってからもう一度見直した。
「なんだ、やっぱり見間違いか」
再度確認したベリルの足は、どこからどう見ても人の足だった。
「は……疲れてんのかな、俺……」
思えば、昨夜はメアリーに説教されまくって、そのあとは自己嫌悪のあまり寝つけなかった。
今日は一日、ベリルと話をしようと振り回されていたし、疲れが溜まっていてもおかしくない。
うん、見間違いだな、きっと。
とりあえず、ルークを受け取りにプールサイドに急ごう。
足ばやに階段を駆け下り、急く気持ちを堪えながら裏庭へのドアを通り抜けた。
ルークの安全は確認できたのだから、そこまで焦る必要はないのに、繰り出す足は加速するばかりだ。
その途中で、今度はノーラの声が『にんぎょにんぎょー』と脳裏に響く。
いや、まさか。
あれだけ探していなかった人魚が、我が家にいるわけがない。
屋敷の角を曲がりプールサイドに目をやると、ルークを抱いたベリルが、まだ水中にいるジャックからなにかを受け取っている姿が見えた。
ほら、ちゃんと人の足だよ。
ライトに照らされて色白が眩しい、色っぽくて美しいラインをしたベリルの素足だ。
「やあ、ベリル。またしても大手柄だったね。ルークが無事でよかったよ」
ベリルには、今日一日、ろくに視線を合わせてもらえなかった。
すべて自業自得なんだが、せめて脅かさないようにと声をかけながら近寄ったのだけど。
「うわっ! キング!?」
俺の心遣いは効果がなかったらしい。ベリルが思いきり驚いてる。
「ベリルには感謝してもしきれないな。改めて、ルークを助けてくれてありがとう」
最高の笑顔を意識して笑いかけると、一瞬ポーッとしたベリルが、あっという間に真っ赤になって視線を逸らせた。
昼間の引き攣った笑顔より、何倍もいい反応だ。完全に嫌われたわけではないらしい。
「ところで、それはなに?」
ベリルが身体から少し離すようにして持っている塊を指差して問う。
先ほどジャックから受け取っていたものだが、プールから引き上げたばかりで水浸しだ。
ぽたぽたと雫を垂らすその塊は、見たところ、どうやら水色をした布切れのようだった。
すると、プールサイドにベリルとジャックが、プールの真ん中にはビーチボードに乗ったルークがいた。
「はあ!? ルーク、なんでまたそんなところに……」
窓の外の様子をうかがいながら、慌てて一階へと廊下を進む。
途中で裏庭の樹が邪魔になってプールの様子は見えにくくなったが、のんびり見てる場合じゃない。プールサイドに急がないと。
でも次の瞬間、俺は思わず足をとめて立ちどまった。
事態が大きく動いたからだ。
ジャックが視界から消え、ルークがプールへ滑り落ち、ほぼ同時にベリルがプールへと飛び込んだ。
ついで、消えたと思ったジャックが飛んできて、ベリルのあとを追って水飛沫をあげる。
成す術もなくただ立ち尽くしていた俺は、息を詰めて見守るしかない。
ほどなくベリルがルークを抱いて水面から顔を出した。
その様子に、ふうっと全身から力が抜けた。
ルークもベリルも笑っている。
その後ろを犬掻きで追うジャックが、『やれやれ』とでも言ってそうに見えるのは、俺の気のせいか。
俺の口からも、気の抜けた笑いが漏れた。
まったくルークのヤツ、ハラハラさせやがって……。
ベリルがいてくれて本当によかった。
彼は泳ぎが得意だ。飛び込んだフォームを見る限り、記憶は忘れてても泳ぎ方を忘れた様子はない。
彼がついてる限りルークは無事だろう。
「……ん? 待てよ?」
改めて一階を目指して歩きだしたが、俺はまたしても足をとめた。
ルークのピンチから救出まで、一連の動きは一瞬だった。
安堵して初めてそれらの映像が脳内で整理されていく。
その過程で、なにかが引っかかった。
さっき、ベリルが飛び込んだあと……あがった水飛沫に混ざって、銀色の尾びれのようなものが見えなかったか?
呆然と眺めるしかなかったときの記憶だ。正確とは言えない。
でも……。
窓の向こうで、頭にしがみつくルークを連れて、ベリルが笑いながらプールサイドへと泳いでいく。
その足元にも、きらきらとライトの光を弾くものが見える…………気がする。
「なんだろう……?」
ライトアップされたプールの水中の様子は、不自然に光が屈折していて、見えそうで見えない。
目の前に茂る樹の枝葉も邪魔で、あの光の正体が余計に気になった。
なんとも言えない予感とともに、思わず引き返して、枝の邪魔しない窓辺にかじりつく。
ふいに、『ベリルは人魚なの!』と叫んでいたニーナの声が脳裏に再生された。
「いやいや、そんなはずは……」
そうやってひとりでベリル人魚説を否定している俺の目に、ルークのあとに続いてプールサイドに乗り上がるベリルの姿が映った。
「え……?」
足が……銀色……?
っていうか、あれはまさに……。
自分の目を疑って、両目を擦ってからもう一度見直した。
「なんだ、やっぱり見間違いか」
再度確認したベリルの足は、どこからどう見ても人の足だった。
「は……疲れてんのかな、俺……」
思えば、昨夜はメアリーに説教されまくって、そのあとは自己嫌悪のあまり寝つけなかった。
今日は一日、ベリルと話をしようと振り回されていたし、疲れが溜まっていてもおかしくない。
うん、見間違いだな、きっと。
とりあえず、ルークを受け取りにプールサイドに急ごう。
足ばやに階段を駆け下り、急く気持ちを堪えながら裏庭へのドアを通り抜けた。
ルークの安全は確認できたのだから、そこまで焦る必要はないのに、繰り出す足は加速するばかりだ。
その途中で、今度はノーラの声が『にんぎょにんぎょー』と脳裏に響く。
いや、まさか。
あれだけ探していなかった人魚が、我が家にいるわけがない。
屋敷の角を曲がりプールサイドに目をやると、ルークを抱いたベリルが、まだ水中にいるジャックからなにかを受け取っている姿が見えた。
ほら、ちゃんと人の足だよ。
ライトに照らされて色白が眩しい、色っぽくて美しいラインをしたベリルの素足だ。
「やあ、ベリル。またしても大手柄だったね。ルークが無事でよかったよ」
ベリルには、今日一日、ろくに視線を合わせてもらえなかった。
すべて自業自得なんだが、せめて脅かさないようにと声をかけながら近寄ったのだけど。
「うわっ! キング!?」
俺の心遣いは効果がなかったらしい。ベリルが思いきり驚いてる。
「ベリルには感謝してもしきれないな。改めて、ルークを助けてくれてありがとう」
最高の笑顔を意識して笑いかけると、一瞬ポーッとしたベリルが、あっという間に真っ赤になって視線を逸らせた。
昼間の引き攣った笑顔より、何倍もいい反応だ。完全に嫌われたわけではないらしい。
「ところで、それはなに?」
ベリルが身体から少し離すようにして持っている塊を指差して問う。
先ほどジャックから受け取っていたものだが、プールから引き上げたばかりで水浸しだ。
ぽたぽたと雫を垂らすその塊は、見たところ、どうやら水色をした布切れのようだった。
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