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Routine Work Of The Erotical Monster/*色魔獣の日常*/
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西口の地下道を進む集団のなかに見知った人間の姿を見つけた。彼は自分から声をかけた。「――おはよう。笠内(かさうち)くん。早いねえ……」
因みに杉崎は生まれてから一度足りとも人違いをしたことがない。記憶力のよさをもっと別のなにかに活かせたらと思うのだが。彼の部下である笠内は、彼の姿を認めるとスピードを緩め、大きく頭を下げる。「社長こそ。おはようございます」
「そのな」軽く彼は手を振り、「社長っての、やめてくれよ。そーゆーがらじゃないんだよぼくは」
ここで意図的に立ち止まる。「いつも言ってるだろ? 『杉崎さん』でいいって……」
「それだとなーんかぼくが落ち着かないんすよ。『杉崎社長』とかなんかいい呼び方、ないっすかね」
新宿の地下道を歩く人間は多い。皆同じく自分の戦場である仕事場に向かっているのだ。その流れに乗りつつ杉崎は、「――なら。『スギちゃん』でどうよ」
「消えそうな芸人ナンバーワンじゃないすか……」と笠内は苦笑いをするのだが。「ぼく。結構生き延びると思うよ、彼は……永野もヤバいと思う。あいつが頂点に立つ日もそう遠くはないと、ぼくは見ている……ダウンタウンに和田アキ子にナインティナインにとんねるずにウッチャンナンチャンに好かれる者は芸能界を制する、ってね……勝俣や松村もぼくは尊敬している。あと出川哲朗も」
「芸人だと誰が一番好きなんすか」と笠内が訊けば、松本人志、と杉崎は即答する。「毎年年末は『あれ』見てんだよ。一番好きなのは妹の病気とか嘘ついて引きずられてく劇団ひとり。あの真剣さが何故笑いを誘うのかそのからくりをいまだぼくは分析できていない。最近出てこないで寂しいよ。ムッシュかまやつもヤバかったね……なんであすこで落っことすのか、くっくっくっ……」
話が長くなると見てか、「ところで杉崎さん」と笠内が声を潜める。「『例の件』なんですけど……」
杉崎は黙って手で制した。顔をあげる笠内は、納得のいかない表情をしている。――どうやら、分かるように説明しなければならない。入社時に説明を受けたはずなのだが、戸愚呂(弟)流に言えば『危機感が足りない』。
「あのねえ。どんな火急の用件であっても。お客さんの話を外でするのはだーめ。
どこでだれが聞いてるかも分からないし。ぼくらがしているのは客商売だ。お客さんの信用ありき。どんなかたちでも、裏切っては、ならないんだよ……」
「ぼ、くは、別に、具体的な話なんか……」と笠内が弁明を試みるのだが。「1%でも20%でもだーめ。戸愚呂(弟)のパワーとおんなじ。60%までイくと幻海師範を倒したくなるでしょう?」
平成生まれは知らないのか。――無念。なので杉崎は言い方を変える。「『ちょっとでも』『すこしでも』『ぼかして』外で話しだすと、そーゆーのって絶対に癖になるわけよ。一度でも惚れた元カノの悪口言うばりにカッコ悪い。断言するね」
彼らの足取りはスピーディーで淀みがない。そのリズムを感じつつ杉崎は、「よくねえ。和民とかでさあ」と前方に目をやる。――外では、誰に聞かれても構わない話をするよう心がけている。「スーツ着慣れてない感じのリーマン――どう見ても新入社員がさあ、お客さんの情報べんらべんら話してるわけ。完全なる情報漏えい。奥田民生が叫ぶ以上に、だ、い、めいわく。いやユニコーンの復活は大歓迎なんだけど。おじさんは嬉しい。……USBデータ一本しかバックアップ取らずしかもそれ電車に忘れちまったってのもありがちな問題だけどさー。あーゆーの見聞きすっと、……悲しくなるわけよ。彼らを雇う会社が彼らを一人前或いは半人前に育て上げるのに何百万もの費用を投じ、そして三年以内に辞めていくか。きっと――知らないんだろうね」
悄然とした笠内が、なんだか気の毒になり、「期待しているんだよ」と背中にそっと手を添える。「きみは元気ばりばりぃーって感じがするからさ。それで採用したんだ。だからね。引き続き、うちの会社の力になってくれると、ぼくは嬉しいな」
「――杉崎さん」早足で歩きながらも下を向いていたかに見えた笠内が突然顔を起こす。「なんか、――いいこと、あったんすね? 女ですか?」
――ぎくり。
なんで分かるのだ。「いんやあ……、べっつになにもぉ……」
「杉崎さんて案外嘘つけないひとなんすね」十歳以上年下の笠内に笑われてしまう始末だ。「仕事んときの顔となんか違うっつうか、……それで女のひとはくらっくら来ちゃうんじゃないっすか?」
険しい顔を作り杉崎はワイシャツの襟元に触れる。現在クールビズ仕様。「いやいや。ぼくはいつもこんな雰囲気ですよ。こっわーい顔していかめしー感じの……」
ぶはは、と笠内が笑う。「なーに言ってんすか。先輩たちみーんな杉崎さんのこと慕ってんすよ? 知らないんですか?」
「仮にそうだとしても、うちの敏腕秘書さんは例外。絶対例外」
「えー」その頃にはビルに着いていた。迷わずホールに入るとエレベーターの待機列に並び、笠内は声を潜める。「……あのひと。絶対杉崎さんに気ぃあると思いますよ」
「いやいやありえん。完全ありえん。PCの待ち受け画像見たことないの? ジョニデだぜ? それもパイレーツ・オブ・カリビアンじゃなくてシザーハンズのほうの。意味分かんないよね……つか音楽は絶対マリマン好きだと思う。これ絶対」
音を立ててエレベーターが到着したので素早く乗り込む。ここからはさらに当り障りのない話題にすべき。――なのだが。
ぽつり。
「ケー番聞き忘れちゃった……」
「うわまじすか!?」顔をあげて笠内。「……て。ガチでついさっき可愛い女の子に出会っちゃったとかそーゆー……」
ものすごく声量を落とす。幸いにしてお喋りをしているのがもう一組。声が大きい。ワールドカップのギリシャ戦の予想スタメン……。蛍が来るか大久保が来るか。みんなそっちに注目しているのが分かる。
「自分の名刺渡しただけで別れた。……残念。無念」
「社長なら絶対連絡来ますって!」強く叩かれた。痛い。ていうか到着。角を曲がりセキュリティカードをかざす……のは笠内に任せる。こういうのは社長がやっちゃあ駄目なのだ。それなりに威厳を示す必要がある。
フロアに入ると既に仕事を開始しているのが数名。全員に対し、おっはよー! と杉崎は挨拶をする。ひとりひとりに一言だけ声をかけ、フロアを縫い歩き、社長室へとたどり着く。――前に。
デスクにて業界雑誌を読みふける美女がひとり。受付嬢及び秘書は顔がいいというのは絶対条件。クライエントに『いい印象』を与える必要があるのだ。というわけで杉崎は彼女に近づく。ちらと、自席に戻ったはずの笠内が立ちあがってこちらを見ているのを確かめた。――あーばればれってわけね。
「美堂(みどう)くん。ちょっと社長室で話があんだけどいい? プラベの用件。三分で済む」
「かしこまりました……」なかなかの美声。本日もスーツが決まっている。
美堂の席の裏の社長室はそれなりに広めで。フロアに続く壁は下四分の三がオール透明。見えっ見えの強化ガラス。必要に応じてブラインドは下げるけども開いているのでお互いに様子が見える。これは意図あってのこと。――監視され監視する側だというアピールである。世の中を監獄に例えたのはミシェル・フーコーだったか。お友達感覚では、社長はやっていけない。
美堂が社長室の扉を閉めるのを見届けると、杉崎は彼女に向かい、手を合わせる。「これね。絶対秘密の案件。――黙秘できる?」
美堂の表情は動かない。人形と話しているみたいだ、と杉崎は思う。「社長がお望みとあらば……」
「『カナちゃん』って子からぼくあてに電話があったら、なにを差し置いても、ぼくに取り次いで欲しい。
もし、ぼくが社外にいたら、ぼくの携帯の番号を教えてくれる?
ほんとに、お願い……」しまいには涙目。かっこつけて去るんじゃなかった。ああ抱きたい。触りたいよおカナちゃぁん……。
「しかと、承りました」胸を押さえ美堂は一礼する。――あのねえカナちゃん。色魔獣(エロティカルモンスター)たるぼくはきみ以外のどんなおっぱいを見たとてちっともそそられないぞ。「――ご用件は、それだけですか」
杉崎は、美堂の、無駄なトークをしないところも気に入っている。なので、「――んと。はい。そうです」と素直に答える。
「それではわたくしはこれにて」お辞儀の仕方が美しい。デパート嬢なんですかって感じ。前職が秘書だったので、一連の所作が身についている。
あとはただ見送るだけ。ビジネスバッグを置いて社長椅子に座り、火影となったナルトばりのてんこ盛りのペーパーワークの開始――のはずが。
何故か、美堂が入り口の前で立ち止まったままだ。「どしたの?」と杉崎が問えば「いいえ」と美堂は首を振り、
「杉崎社長の恋愛が成就するよう、わたくしも、願っております。――よい一日を」
美声と女っぽい空気を残し――去っていった。なんとまあ、エロティカル……。
それでも本家本元の色魔獣(エロティカルモンスター)ほどじゃねえぞお。
『なにがし』カナちゃんなのかを確かめるまでには絶対に交通事故なんかに遭わねえっつうの! 眠眠打破飲んでおじさん『頑張っちゃうもんねー』! うおお吉井和哉ぁー! LOVELOVESHOうー!
いざ腕まくりを開始。指サックもつけてやる。よりによってハートマーク付きのピンクのデザイン。杉崎さんつけてみてくださいって面白がって部下の静海(しずみ)が買ってくれたものだ。勿論会社の経費。
「さーて。今日も頑張るぜい!」
その前に、窓の外を振り返りふと一言。
(カナちゃんも――『踏ん張る』んだぞ?)
愛する女への想いを胸に秘め、男は仕事に没頭するのだった。
因みに杉崎は生まれてから一度足りとも人違いをしたことがない。記憶力のよさをもっと別のなにかに活かせたらと思うのだが。彼の部下である笠内は、彼の姿を認めるとスピードを緩め、大きく頭を下げる。「社長こそ。おはようございます」
「そのな」軽く彼は手を振り、「社長っての、やめてくれよ。そーゆーがらじゃないんだよぼくは」
ここで意図的に立ち止まる。「いつも言ってるだろ? 『杉崎さん』でいいって……」
「それだとなーんかぼくが落ち着かないんすよ。『杉崎社長』とかなんかいい呼び方、ないっすかね」
新宿の地下道を歩く人間は多い。皆同じく自分の戦場である仕事場に向かっているのだ。その流れに乗りつつ杉崎は、「――なら。『スギちゃん』でどうよ」
「消えそうな芸人ナンバーワンじゃないすか……」と笠内は苦笑いをするのだが。「ぼく。結構生き延びると思うよ、彼は……永野もヤバいと思う。あいつが頂点に立つ日もそう遠くはないと、ぼくは見ている……ダウンタウンに和田アキ子にナインティナインにとんねるずにウッチャンナンチャンに好かれる者は芸能界を制する、ってね……勝俣や松村もぼくは尊敬している。あと出川哲朗も」
「芸人だと誰が一番好きなんすか」と笠内が訊けば、松本人志、と杉崎は即答する。「毎年年末は『あれ』見てんだよ。一番好きなのは妹の病気とか嘘ついて引きずられてく劇団ひとり。あの真剣さが何故笑いを誘うのかそのからくりをいまだぼくは分析できていない。最近出てこないで寂しいよ。ムッシュかまやつもヤバかったね……なんであすこで落っことすのか、くっくっくっ……」
話が長くなると見てか、「ところで杉崎さん」と笠内が声を潜める。「『例の件』なんですけど……」
杉崎は黙って手で制した。顔をあげる笠内は、納得のいかない表情をしている。――どうやら、分かるように説明しなければならない。入社時に説明を受けたはずなのだが、戸愚呂(弟)流に言えば『危機感が足りない』。
「あのねえ。どんな火急の用件であっても。お客さんの話を外でするのはだーめ。
どこでだれが聞いてるかも分からないし。ぼくらがしているのは客商売だ。お客さんの信用ありき。どんなかたちでも、裏切っては、ならないんだよ……」
「ぼ、くは、別に、具体的な話なんか……」と笠内が弁明を試みるのだが。「1%でも20%でもだーめ。戸愚呂(弟)のパワーとおんなじ。60%までイくと幻海師範を倒したくなるでしょう?」
平成生まれは知らないのか。――無念。なので杉崎は言い方を変える。「『ちょっとでも』『すこしでも』『ぼかして』外で話しだすと、そーゆーのって絶対に癖になるわけよ。一度でも惚れた元カノの悪口言うばりにカッコ悪い。断言するね」
彼らの足取りはスピーディーで淀みがない。そのリズムを感じつつ杉崎は、「よくねえ。和民とかでさあ」と前方に目をやる。――外では、誰に聞かれても構わない話をするよう心がけている。「スーツ着慣れてない感じのリーマン――どう見ても新入社員がさあ、お客さんの情報べんらべんら話してるわけ。完全なる情報漏えい。奥田民生が叫ぶ以上に、だ、い、めいわく。いやユニコーンの復活は大歓迎なんだけど。おじさんは嬉しい。……USBデータ一本しかバックアップ取らずしかもそれ電車に忘れちまったってのもありがちな問題だけどさー。あーゆーの見聞きすっと、……悲しくなるわけよ。彼らを雇う会社が彼らを一人前或いは半人前に育て上げるのに何百万もの費用を投じ、そして三年以内に辞めていくか。きっと――知らないんだろうね」
悄然とした笠内が、なんだか気の毒になり、「期待しているんだよ」と背中にそっと手を添える。「きみは元気ばりばりぃーって感じがするからさ。それで採用したんだ。だからね。引き続き、うちの会社の力になってくれると、ぼくは嬉しいな」
「――杉崎さん」早足で歩きながらも下を向いていたかに見えた笠内が突然顔を起こす。「なんか、――いいこと、あったんすね? 女ですか?」
――ぎくり。
なんで分かるのだ。「いんやあ……、べっつになにもぉ……」
「杉崎さんて案外嘘つけないひとなんすね」十歳以上年下の笠内に笑われてしまう始末だ。「仕事んときの顔となんか違うっつうか、……それで女のひとはくらっくら来ちゃうんじゃないっすか?」
険しい顔を作り杉崎はワイシャツの襟元に触れる。現在クールビズ仕様。「いやいや。ぼくはいつもこんな雰囲気ですよ。こっわーい顔していかめしー感じの……」
ぶはは、と笠内が笑う。「なーに言ってんすか。先輩たちみーんな杉崎さんのこと慕ってんすよ? 知らないんですか?」
「仮にそうだとしても、うちの敏腕秘書さんは例外。絶対例外」
「えー」その頃にはビルに着いていた。迷わずホールに入るとエレベーターの待機列に並び、笠内は声を潜める。「……あのひと。絶対杉崎さんに気ぃあると思いますよ」
「いやいやありえん。完全ありえん。PCの待ち受け画像見たことないの? ジョニデだぜ? それもパイレーツ・オブ・カリビアンじゃなくてシザーハンズのほうの。意味分かんないよね……つか音楽は絶対マリマン好きだと思う。これ絶対」
音を立ててエレベーターが到着したので素早く乗り込む。ここからはさらに当り障りのない話題にすべき。――なのだが。
ぽつり。
「ケー番聞き忘れちゃった……」
「うわまじすか!?」顔をあげて笠内。「……て。ガチでついさっき可愛い女の子に出会っちゃったとかそーゆー……」
ものすごく声量を落とす。幸いにしてお喋りをしているのがもう一組。声が大きい。ワールドカップのギリシャ戦の予想スタメン……。蛍が来るか大久保が来るか。みんなそっちに注目しているのが分かる。
「自分の名刺渡しただけで別れた。……残念。無念」
「社長なら絶対連絡来ますって!」強く叩かれた。痛い。ていうか到着。角を曲がりセキュリティカードをかざす……のは笠内に任せる。こういうのは社長がやっちゃあ駄目なのだ。それなりに威厳を示す必要がある。
フロアに入ると既に仕事を開始しているのが数名。全員に対し、おっはよー! と杉崎は挨拶をする。ひとりひとりに一言だけ声をかけ、フロアを縫い歩き、社長室へとたどり着く。――前に。
デスクにて業界雑誌を読みふける美女がひとり。受付嬢及び秘書は顔がいいというのは絶対条件。クライエントに『いい印象』を与える必要があるのだ。というわけで杉崎は彼女に近づく。ちらと、自席に戻ったはずの笠内が立ちあがってこちらを見ているのを確かめた。――あーばればれってわけね。
「美堂(みどう)くん。ちょっと社長室で話があんだけどいい? プラベの用件。三分で済む」
「かしこまりました……」なかなかの美声。本日もスーツが決まっている。
美堂の席の裏の社長室はそれなりに広めで。フロアに続く壁は下四分の三がオール透明。見えっ見えの強化ガラス。必要に応じてブラインドは下げるけども開いているのでお互いに様子が見える。これは意図あってのこと。――監視され監視する側だというアピールである。世の中を監獄に例えたのはミシェル・フーコーだったか。お友達感覚では、社長はやっていけない。
美堂が社長室の扉を閉めるのを見届けると、杉崎は彼女に向かい、手を合わせる。「これね。絶対秘密の案件。――黙秘できる?」
美堂の表情は動かない。人形と話しているみたいだ、と杉崎は思う。「社長がお望みとあらば……」
「『カナちゃん』って子からぼくあてに電話があったら、なにを差し置いても、ぼくに取り次いで欲しい。
もし、ぼくが社外にいたら、ぼくの携帯の番号を教えてくれる?
ほんとに、お願い……」しまいには涙目。かっこつけて去るんじゃなかった。ああ抱きたい。触りたいよおカナちゃぁん……。
「しかと、承りました」胸を押さえ美堂は一礼する。――あのねえカナちゃん。色魔獣(エロティカルモンスター)たるぼくはきみ以外のどんなおっぱいを見たとてちっともそそられないぞ。「――ご用件は、それだけですか」
杉崎は、美堂の、無駄なトークをしないところも気に入っている。なので、「――んと。はい。そうです」と素直に答える。
「それではわたくしはこれにて」お辞儀の仕方が美しい。デパート嬢なんですかって感じ。前職が秘書だったので、一連の所作が身についている。
あとはただ見送るだけ。ビジネスバッグを置いて社長椅子に座り、火影となったナルトばりのてんこ盛りのペーパーワークの開始――のはずが。
何故か、美堂が入り口の前で立ち止まったままだ。「どしたの?」と杉崎が問えば「いいえ」と美堂は首を振り、
「杉崎社長の恋愛が成就するよう、わたくしも、願っております。――よい一日を」
美声と女っぽい空気を残し――去っていった。なんとまあ、エロティカル……。
それでも本家本元の色魔獣(エロティカルモンスター)ほどじゃねえぞお。
『なにがし』カナちゃんなのかを確かめるまでには絶対に交通事故なんかに遭わねえっつうの! 眠眠打破飲んでおじさん『頑張っちゃうもんねー』! うおお吉井和哉ぁー! LOVELOVESHOうー!
いざ腕まくりを開始。指サックもつけてやる。よりによってハートマーク付きのピンクのデザイン。杉崎さんつけてみてくださいって面白がって部下の静海(しずみ)が買ってくれたものだ。勿論会社の経費。
「さーて。今日も頑張るぜい!」
その前に、窓の外を振り返りふと一言。
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愛する女への想いを胸に秘め、男は仕事に没頭するのだった。
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