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番外編3 「直後」のふたり――敏感な莉子SIDE

#EX03-12.対面座位からの―― *

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「ああ、やぁん……あんっあぁん……っ」

 課長の上で腰を振る自分はどれほど淫らだろう。思えば――わたしが自分から動くのはこれが初めてだ。

 深く――課長を奥に押し込んで、小さく腰を揺らすと、課長が、衣服越しにわたしの蕾に口づける。「ワンピース越しでも分かるよ……立ってる……莉子」

 肩で荒い呼吸をするわたしに、「気持ちがいい?」と課長。

「いつもと違うところに当たって――感じたりしない?」

 実を言うとほんとに。課長のペニスが、ちょうどわたしの恥丘の裏辺りに当たってもう――たまらない。

 課長がいやらしい顔をして腰を揺らす。もう――なかに入ったペニスでわたしを愛撫するだなんて。どんな策士よ。

 動けないわたしの乳房を、吸い、課長は、

「ねえ……もっと動いてみて。乱れる莉子がおれは――見たいな」

 * * *

「あ……、ん、あぁんっ、あん、あん……遼一さん……遼一さぁん!」

 髪を振り乱し腰を振るこの動物はどれほど淫靡なのだろう。――わたしのなかからあふれる愛液が、どんどん抽挿をスムーズにしていく。そして快感を高めていく。

 わたしのウエストを両側から支える課長は、

「えっちだね……莉子。もっと、いっぱい、泣いて……感じて? 激しくいっちゃいな」

 その言葉が導火線となったらしい。大声で叫んで、わたしは――崩れそうになる。びく、びく、びく……と全身がふるえる。そんなわたしをがっちりと支える課長は、

「よし――次の段階に行こう」

 と、課長はわたしと繋がったまま、どこかへ運んでいく。……て、リビング? なにしに。

 と思ったときには既に、わたしは、ソファーに対してからだを横方向に、膝裏をちょうどソファーの肘に引っ掛けて、足をぶらぶらさせる姿勢で下ろされる。わたしを見降ろした課長は、

「もうちょっとこっち」……と、到達の余波にふるえるわたしのからだを、ウエストを支えて、足がもっと出るように引っ張る。そして、満足げに笑った。

「うーんいい眺め」

 舌なめずりをするかのように課長は、わたしの足を広げると、いきなり――スカートの下に、顔を突っ込む。

「や、ちょ、……課長」

「雌の匂いがする……」

「あの、課長、駄目……恥ずかしいです」

 スカートのなかに隠れて課長の顔が見えない。くんくんと、わざと鼻を鳴らす課長は、

「とろーり。濡れてる……」

「――ひ、あぁあ……」

 わたしの濡れ濡れの溝を、後ろから前にかけて指先でトレースする。そして、課長はとうとう、わたしのそこを貪った。

 * * *

 それをされるのは初めてではないのだけれど。ショーツ越しというのが、気持ちよく、でも生でされるほどの威力はない、その焦燥感とのコントラストが、こちらを煽る。――ぴんと立った乳首がブラに押し返され、痛いほどだ。課長に愛されて明らかにわたしのバストはサイズアップをした。ふたりだけのときはいつでも――どこでも揉んでくれて。ブラジャーをつけるときに、谷間がくっきりと入ること――それから、石のように固かったはずの乳房がすっかり柔らかくなっていることにも驚かされる。

 わたしの膝を支える課長は、激しく、わたしを――味わう。

「あーきみのパンティぐっちょぐちょ……。可哀想だから取ってあげる――」

「あ……」課長はわたしのパンティを引っかけると、わたしの足先に引っ掛ける。「落とさないようにするんだよ」なんて言って。

 ソファーの位置から見る課長は、背が高く、美しく――こんな男に愛されているという現実が、わたしの胸を切なくさせる。……ああ、大好き……。

「……莉子。大好き……」スカートをまくって、顔を入れ込むと、スカートに隠された課長が、ちゅ、とそこに口づける。「綺麗なピンク色で……濡れ濡れで、すぐ――びらびらになるんだ。おれ、莉子のおまんこ大好き。莉子のおまんこも大好き」

「課、長が好きなのは、わたしのおっぱいでしょう……」

 息を吹きかけられながらも気丈にわたしが言い返せば、「全部」と課長は即答する。

「莉子の感じやすいおまんこもおっぱいも、すべすべで触り心地がいい肌も、綺麗な髪の毛も、長いまつげも、うるんだ瞳も、全部好き。おれ、……暴力的なまでに莉子が好きだな。だから――こうする」

 すると、散々わたしの全身を味わい尽くした――わたしの口内で暴れ狂った、あの、課長の魅惑の舌が直接そこを舐めあげる。下の穴から前にかけてをちろちろ、と舌を這わされるだけで、気絶しそうなほどの快楽に見舞われる。

「いやぁ……課長……」

「どんどんあふれてくる……」おびただしい蜜を丹念に吸いながら、課長は、「愛しているから、こんなにも濡れるんだよ……おれのことが欲しくて、こんなにも蜜を垂らすきみが――大好きだ」

 セックスにおける常識をわたしは知らない。けれど、わたしの目から見て課長は、ものすごく献身的なひとだ。自分のことを後回しで、相手の快楽を優先する。――でも、課長がそれがいいって言ったから、あまえてみよう――。

 課長の手腕に酔いしれるわたしの目にまたも――星空が広がった。手をあげれば触れそうな距離に光がまたたいており、それが、一気に落ちてくる。

 流れゆく快楽に身を任せた。――信じられるから。愛しているから。愛されることの幸せを感じながら、わたしは自分を解き放った。

 * * *

 ところが、この課長が、それだけで終わるはずがなく。今度はソファーにお腹を下にする体勢で、お尻を突き上げられる。視界にソファーの一部と接する壁が入る。なにをするんだろう。期待と興奮を覚える自分が存在する。それは、現実的なる自分を駆逐するほどで。

「ちょっと、いいものを持ってきた」言って課長がわたしの前に回り込み、跪くと差し出したのは――万年筆?

 戸惑いが顔に出たらしい。「大丈夫挿れないよ」と課長は笑い、そのペンを見せつけると、わたしに――咥えさせた。

 え、なにするの――。

 課長はわたしの頬を下から上になぞりあげて笑った。「咥えたまま――こうする」

 言って課長はわたしの後ろに回り込むと、スカートを背中の辺りまでまくりあげ、そして――

「ひ……あぁっ……」

 なにかあたたかい液体が垂らされる。勿論場所は――

「……莉子は、ここも、いいんだよね……」うっとりと歌うような口調で課長は、「さぁて。今度は――ナマでいくよ。おれの精液を莉子のなかに――ぶち込んでやる」

 * * *

 感覚が馬鹿になってしまう。いたずらに涙があふれて――ううん、悲しいからじゃない。

 感じすぎて。感じすぎてしまうからこそ――。

 服を着たままというのがまた、やばい。見えないところで課長は――わたしの隠し持つ本能を、暴き出す。熱い凶器を使って。

「ふぁ……ふあぁ……課長……」

 ペンを咥えたままなのでうまく言葉にならない。「駄目だよ莉子」と課長。

「それ落としたら、今度はもっとエグいことをするから……」

 ――エグいこと。なんだろう。興味を引かれる自分がいる。課長になら――どんななにをされたって、このこころとからだは悦んでしまう。

 犬みたいに四つん這いで。しかも、お気に入りのワンピースを着たままで。よそゆきの格好で野蛮な体勢を取る自分が滑稽だった。しかも、愛されているのは――。

「……莉子。慣れてきたね。……ひくひく言ってる――こっちは、どうかな?」

 なんと課長はわたしの股の下に手を添えると――わたしのどろどろにぬかるんだそこをなぞった。媚肉が飛び出し、ぱっくり口を開いているだろう状態――実を言うと課長に性の味を教え込まれて以来、わたしは毎週月曜に自慰をしている。あの快楽の味がわたしを虜にして、放そうとしない。

「ああ……花びらみたいだね莉子のここ……」腰を振りながら課長は、「ねえ……もっと、気持ちよくさせたげようか……?」

「えっなんですか――あっ……」

 ぽろりとペンが落ちて、床を転がった。ここでわたしは気づいた。課長の言いつけを守れなかったことに。どうしよう。課長、なにか――怖いことをするのかなあ?

 く、と課長が小さく喉を鳴らした。

「可愛い莉子ちゃんにはご褒美をあげないと」そして彼はどうやら――指を挿れた。とろっとろの、常に課長のペニスを待ち望むそこは、なんなく受け入れる。やわらかさが――課長の指先を通して、跳ね返ってくる。一通りわたしのなかを味わいこむと課長は、

「ここが――莉子ちゃんのGスポット。オナニーするときにも役立つから、覚えておいて……」

 はいそうです、なんて言えるはずがなく。それにしても課長――課長の指が深く入り込んで、更にペニスを奥深くまで入れ込まれ、わたしの内壁を通して課長の指とペニスがぶつかりそうだ。これで動かれようものならいったいわたし――どうなってしまうの?

 わたしの不安は間もなく現実となる。高らかに課長は、

「我慢の出来ない莉子ちゃんには――ご褒美だ」

 * * *

 嵐に攫われたようで、視界が滲む。なにも――見えない。視界が白く爆ぜて、大雪のなかにでもいるよう。

「昨日までアナルバージンだったのに。……莉子ちゃん、センスあるね……教え甲斐があるよ」

 ぐ、と課長はわたしのなかに指を入れ込んだまま、わたしの腰を持ち上げ、

「うん大分ほぐれてきた。頃合いだね。激しく――いくよ」

 がつ、がつ、がつ、と肉欲で責め立てられ。ふたつの課長がわたしのなかでぶつかる。ぶつかって壊れそうになるんじゃないかと思えるくらいにそれは激しくって。なのに――淫乱な獣のようにわたしは涎を垂らし、課長の提供する快楽に、頭のてっぺんから足先に至るまで、のめり込んでいる。

 しかも、生の肉。どちらも生の肉であり――あれほどまでに丹念にわたしの全身を愛しこんだ課長の素肌が、と思うだけで――濡れる。

 生のペニスは恐ろしいほどに気持ちがよかった。世の中には装着をしたがらない男がいると聞くが、……申し訳ないが淫らなほうのわたしは納得してしまう。課長の素肌。この口で頬張った大きなペニス。血管の浮いた赤黒い物体――。それは、わたしの残された理性を粉砕する凶器と化す。――いや、狂っているのはわたしのほうか。

「ああ……やぁ、あぁ……課長ぉ……」

 課長が抜き差しするほど高い声をあげる。どこぞのセクシー女優も顔負けの声が。

 課長のほうも感じているらしく、課長が動くたびに、粘っこい響きが混ざる。

 ちちゅ、ちちゅ、……ぱん、ぱん。課長の肉が打ち付けるたびにわたしの眼前で火花が散る。見たことのない景色――青空、夜空、世界のきらめき――笑い合う影の残像――虹に開かれた高原――知らない景色がわたしの前に広がっていた。信じられるのは課長だけ。誰よりも深く愛してくれる課長だけ――。

「……いく。いくよいくよおれ……莉子ぉ……っ」

 課長が加速する。そのときが迫るのが分かっていた。わたしも、めいっぱい叫びながらそして――最奥に射精される。初めてのときは熱い精液を背中にぶっかけられた――あの熱さが急速に再生され、恐ろしいほどのオーガズムに襲われる。――ひく、ひく、と、課長と一体になって余波を味わう。そのリズム――課長の熱い熱い精液をたっぷりと注ぎ込まれた。その事実に、たまらないほどの幸せを感じていて……。

「ああ……莉子、莉子……愛している」

 わたしの背中に覆いかぶさる課長に、重たさを預けられる。このときの、余裕をなくした彼が好きだ。いつも超然としていて――泣き上戸で、弱いところを持つ、このひとの万華鏡のようにきらめく存在を、わたしは愛している――。

 初めての射精。――きらめく星々を眺めながら、わたしは、射精を通じて、わたしの細胞のひとつひとつにまで、課長の愛が広がっていく感覚を覚えていた。

 課長も、相当気持ちがよかったらしい。ぐったりとして動かない。――重たさは感じるけれど、その重みを預けてくれることが幸せだった。課長こそ――課長のほうこそ、ひとりでいろいろ考えて決めちゃうところがあるから。わたしに自由を与える陰で煩悶もしているに違いないのに――。

 だからわたしは、そんな課長の味方でいたい。彼という愛を受け入れる、強靭な器になりたい。

 胸のなかが熱くなり、いいようのない花が咲き誇る。そのいろが――美しくて。余韻にまぶたをふるわせながら、わたしは、その感動にずっと浸っていた。――想いを通わせることでのみ得られる幸せを。

 *
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