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Vol.28.スーパーコミュニケーション☆彡
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「……大樹と、こうやってスーパー行くの初めてだよね」
「ん」大樹は、そっとあたしの肩を抱くと、「これはおれがやるから。貸して」
「えー」あたしは大樹のほうを向くと、「カートはあたしが押すのー。駄目ぇー」
「……ったく。手のかかるやっちゃぁ」
なんて言うと大樹は、ひょいっ、と、あたしを米俵みたく担ぎ上げる。……って、ひゃああ……!
みんな、見てるし……。
目線を感じ。頬がめちゃくちゃに熱ーくなるのを感じつつも、下ろされ、……あたしは素直に彼に、従った。「……それではお任せします」
ひゃーっ。いまの見たぁーっ。イケメーンッ。
JKとお母さんが騒いでいるのを目の当たりにし、こくん、とあたしは頷いた。そんなあたしの頭をわしゃわしゃと大樹は撫でると子犬のように笑い、
「うん。……任されな」
* * *
「なにが食べたい? 美紗。……たまには煮物とかもいいよなぁ。おれ、つい、豚の細切ればっか使っちまうんだよなあ……便利で」
「豚の細切れは無敵ですから」ふふん、とあたしは笑う。「生姜焼きにしても、ケチャップとソースを混ぜたものを和えても美味しいし。無敵にございますなぁ」
本日、平日の午後。たまにはゆったりと。ふたりで午後休を取得した。……帰ってからあんなにも求められ、からだの芯がまだ熱いのを感じながら、こうして、大樹にエスコートをされている。……大樹。ナチュラルに、腰の後ろに手を回すのはなんなの。日本なんですよここは。……通りすがりのおばあさんが、あらまあ、と、目を細めているではあーりませんか。岡田あーみん。
「……豚の角煮」思いついたように大樹が言う。「お。塊肉安いじゃん。……したら、とんこつラーメンにしようっか。このスーパー確か……期間限定で……あ。あっちだ」
手を繋ぎ、慌てた感じで大樹にエスコートされる。こちらのスーパー、普段は行かない、ちょっとリッチな立地でお気に入りなのよ。なかなか来られないから。それに――
大樹と、スーパーデート。……無敵じゃない? 最高の彼氏と、スーパーマーケットでおデート、だなんて。
一生懸命な、大樹が、可愛い。催事場に辿り着くと、大樹は、興奮した様子で、「あ。……ここのとんこつ赤玉、すんごい美っ味いんだよなあ……よし今夜はラーメンだ。美味しい汁をすすろう」
……ていうか大樹。声、でかい。なにごとかとご婦人が見てくるじゃないですか……完っ全、同棲中のいちゃいちゃカップルって構図。……だが。
(悪くない)
あたしは、すこし背の高い彼に向けて、かかとを浮かせ、ほっぺにちょん、と、触れると、
「たまにはすする側に回らないとね」
* * *
「やっば。……無茶苦茶美味しいじゃん。……あわあわ。口を開くと旨味が……逃げていく……ッ」
「どこの世界の食レポだよ」ぽん、とあたしの頭を撫でる大樹は、「やーっぱ。美紗が美味そうに食ってる顔ってえっろいなあ……。はむはむしてるときと同じ顔してるもんな。……よし。今後は、絶対に男と外で飯食うなよ。世界は、きみのエロティカルな顔を見て、やらしい連想をする男にあふれている」
「……考え過ぎじゃないの?」深く考えず、あたしは言ってみる。「それより。食べるよ。……ああ、もう。角煮もとろっとろ……!」
「圧力鍋ってかなり有能なんだなあ」ずずーっ、と麵をすする大樹。それから、どんぶりに手をかけて、ず、ずーっ、と豪快にすするさまに……恥ずかしながらこっちが不埒な連想をしてしまったわよ。
豪快に食べる男は大概、豪快に……。
めちゃくちゃ美味しいラーメンを綺麗に平らげた。それから、あたしは、す、すーっ、と彼の隣に移動し、「責任取ってよ」と詰問する。彼の、大きな手のひらをある部分に回す。なにも言わずに彼を見上げる。――と、
彼は眉を歪めて笑い、
「――大変なことになっちまってんなあ」
と、あたしの背に手を添えたうえで押し倒すと、手を抜き、足首に手をかけ、ふわりとしたスカートに手をかけ――
* * *
「――あたしたち。あと何回セックスしたら、セックスに飽きちゃうんだろう」
「飽きないさ」とあたしの髪を撫でて大樹が言う。胸板に頬を預ける、大好きな体勢。「お互いに……こんなに、愛し合っているんだから……」
大樹の、感触が、あたしを、手放さない。これ以上楽しいことなんてないと思っていたのに。例えば、仕事で認められたとき。お客様に喜んで貰えたとき。ファンが出来たとき。――大樹は、これらの記録を、実に軽々と破ってのけるのだ。――あたしという領域に対して。
「なんかもう……触りたくなっちゃうもんね……」
「こらこら」笑って大樹は、あたしのおでこをデコピンする。世界一やさしいデコピンかもしれない。「おにーさん、そんなことをされたら、すぐ、反応しちまう体質なんだから……おにいさんで遊ぶのはやめなさい」
「無―理。だって大樹、こんなに……」
「ああ、もう……」大樹は潤んだ瞳であたしを見つめる。既に、臨戦態勢になり、彼のうえに、馬乗りになるあたしに。「美紗のことが、……めちゃめちゃ気持ちがいい……。きみのなかに入ると、おれは、ますますおかしく……なっちまうよ」
ゆったりと彼の頬を撫でて、あたしは女神のように微笑みかける。
「まずは、……気持ちよく、なっちゃって……?」
* * *
眠るときもしっかりと抱き合う。肌と肌が触れ合う。こんなにも――人肌が恋しく、愛おしく思えるのは、生まれて初めてかもしれない。同棲を提案した大樹には、感謝だ。こうして、シングルベッドで互いに愛を育むくらいには――あたしたちの感情は、成熟している。
「だめ、……触っちゃ……」
「美紗のからだ。すべすべで、やーらかんだもん。……ほら」
「……っ、だめっ……」
睡眠時間をきっちり確保して。懸命に、丁寧に、あたしを愛しこむ大樹のことがちょっぴり憎らしい。――いじらしい、大樹の髪を、そっと撫でた。快楽に導かれながら。――ああ。
どこまで、この肉体は、大樹という人間を欲すれば、気が済むのだろう。
どこまで、このこころは――。
知らず、涙が、こぼれる。泣いちゃうくらいに感じちゃうのは、初めての経験だった。あなただからなんだよ。大樹。あなたがこんなにもあたしを――。
あたしのこんな顔を知るのは、世界でたった、ひとりだけ。外になんか見せないよ。あたし――あなたの前でだけ、女神にも、妖婦にも、なれる。こんな感情を、教えてくれて、ありがとう――。
胸の内を吹き荒れる情愛を感じながらも、今宵も、大樹の奏でるリズムに、身を任せた。
*
「ん」大樹は、そっとあたしの肩を抱くと、「これはおれがやるから。貸して」
「えー」あたしは大樹のほうを向くと、「カートはあたしが押すのー。駄目ぇー」
「……ったく。手のかかるやっちゃぁ」
なんて言うと大樹は、ひょいっ、と、あたしを米俵みたく担ぎ上げる。……って、ひゃああ……!
みんな、見てるし……。
目線を感じ。頬がめちゃくちゃに熱ーくなるのを感じつつも、下ろされ、……あたしは素直に彼に、従った。「……それではお任せします」
ひゃーっ。いまの見たぁーっ。イケメーンッ。
JKとお母さんが騒いでいるのを目の当たりにし、こくん、とあたしは頷いた。そんなあたしの頭をわしゃわしゃと大樹は撫でると子犬のように笑い、
「うん。……任されな」
* * *
「なにが食べたい? 美紗。……たまには煮物とかもいいよなぁ。おれ、つい、豚の細切ればっか使っちまうんだよなあ……便利で」
「豚の細切れは無敵ですから」ふふん、とあたしは笑う。「生姜焼きにしても、ケチャップとソースを混ぜたものを和えても美味しいし。無敵にございますなぁ」
本日、平日の午後。たまにはゆったりと。ふたりで午後休を取得した。……帰ってからあんなにも求められ、からだの芯がまだ熱いのを感じながら、こうして、大樹にエスコートをされている。……大樹。ナチュラルに、腰の後ろに手を回すのはなんなの。日本なんですよここは。……通りすがりのおばあさんが、あらまあ、と、目を細めているではあーりませんか。岡田あーみん。
「……豚の角煮」思いついたように大樹が言う。「お。塊肉安いじゃん。……したら、とんこつラーメンにしようっか。このスーパー確か……期間限定で……あ。あっちだ」
手を繋ぎ、慌てた感じで大樹にエスコートされる。こちらのスーパー、普段は行かない、ちょっとリッチな立地でお気に入りなのよ。なかなか来られないから。それに――
大樹と、スーパーデート。……無敵じゃない? 最高の彼氏と、スーパーマーケットでおデート、だなんて。
一生懸命な、大樹が、可愛い。催事場に辿り着くと、大樹は、興奮した様子で、「あ。……ここのとんこつ赤玉、すんごい美っ味いんだよなあ……よし今夜はラーメンだ。美味しい汁をすすろう」
……ていうか大樹。声、でかい。なにごとかとご婦人が見てくるじゃないですか……完っ全、同棲中のいちゃいちゃカップルって構図。……だが。
(悪くない)
あたしは、すこし背の高い彼に向けて、かかとを浮かせ、ほっぺにちょん、と、触れると、
「たまにはすする側に回らないとね」
* * *
「やっば。……無茶苦茶美味しいじゃん。……あわあわ。口を開くと旨味が……逃げていく……ッ」
「どこの世界の食レポだよ」ぽん、とあたしの頭を撫でる大樹は、「やーっぱ。美紗が美味そうに食ってる顔ってえっろいなあ……。はむはむしてるときと同じ顔してるもんな。……よし。今後は、絶対に男と外で飯食うなよ。世界は、きみのエロティカルな顔を見て、やらしい連想をする男にあふれている」
「……考え過ぎじゃないの?」深く考えず、あたしは言ってみる。「それより。食べるよ。……ああ、もう。角煮もとろっとろ……!」
「圧力鍋ってかなり有能なんだなあ」ずずーっ、と麵をすする大樹。それから、どんぶりに手をかけて、ず、ずーっ、と豪快にすするさまに……恥ずかしながらこっちが不埒な連想をしてしまったわよ。
豪快に食べる男は大概、豪快に……。
めちゃくちゃ美味しいラーメンを綺麗に平らげた。それから、あたしは、す、すーっ、と彼の隣に移動し、「責任取ってよ」と詰問する。彼の、大きな手のひらをある部分に回す。なにも言わずに彼を見上げる。――と、
彼は眉を歪めて笑い、
「――大変なことになっちまってんなあ」
と、あたしの背に手を添えたうえで押し倒すと、手を抜き、足首に手をかけ、ふわりとしたスカートに手をかけ――
* * *
「――あたしたち。あと何回セックスしたら、セックスに飽きちゃうんだろう」
「飽きないさ」とあたしの髪を撫でて大樹が言う。胸板に頬を預ける、大好きな体勢。「お互いに……こんなに、愛し合っているんだから……」
大樹の、感触が、あたしを、手放さない。これ以上楽しいことなんてないと思っていたのに。例えば、仕事で認められたとき。お客様に喜んで貰えたとき。ファンが出来たとき。――大樹は、これらの記録を、実に軽々と破ってのけるのだ。――あたしという領域に対して。
「なんかもう……触りたくなっちゃうもんね……」
「こらこら」笑って大樹は、あたしのおでこをデコピンする。世界一やさしいデコピンかもしれない。「おにーさん、そんなことをされたら、すぐ、反応しちまう体質なんだから……おにいさんで遊ぶのはやめなさい」
「無―理。だって大樹、こんなに……」
「ああ、もう……」大樹は潤んだ瞳であたしを見つめる。既に、臨戦態勢になり、彼のうえに、馬乗りになるあたしに。「美紗のことが、……めちゃめちゃ気持ちがいい……。きみのなかに入ると、おれは、ますますおかしく……なっちまうよ」
ゆったりと彼の頬を撫でて、あたしは女神のように微笑みかける。
「まずは、……気持ちよく、なっちゃって……?」
* * *
眠るときもしっかりと抱き合う。肌と肌が触れ合う。こんなにも――人肌が恋しく、愛おしく思えるのは、生まれて初めてかもしれない。同棲を提案した大樹には、感謝だ。こうして、シングルベッドで互いに愛を育むくらいには――あたしたちの感情は、成熟している。
「だめ、……触っちゃ……」
「美紗のからだ。すべすべで、やーらかんだもん。……ほら」
「……っ、だめっ……」
睡眠時間をきっちり確保して。懸命に、丁寧に、あたしを愛しこむ大樹のことがちょっぴり憎らしい。――いじらしい、大樹の髪を、そっと撫でた。快楽に導かれながら。――ああ。
どこまで、この肉体は、大樹という人間を欲すれば、気が済むのだろう。
どこまで、このこころは――。
知らず、涙が、こぼれる。泣いちゃうくらいに感じちゃうのは、初めての経験だった。あなただからなんだよ。大樹。あなたがこんなにもあたしを――。
あたしのこんな顔を知るのは、世界でたった、ひとりだけ。外になんか見せないよ。あたし――あなたの前でだけ、女神にも、妖婦にも、なれる。こんな感情を、教えてくれて、ありがとう――。
胸の内を吹き荒れる情愛を感じながらも、今宵も、大樹の奏でるリズムに、身を任せた。
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