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三十四話 誘い
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ミシャが消えた。
公務が終わり、いつものようにミシャの待つ寝室に帰ったら、そこはもぬけの殻だった。
「ミシャ…?」
ミシャを部屋に繋ぎ止めていた鎖は強引に切られていた。ミシャが自力で抜け出せるはずもない。
誰かによって、ミシャは連れ去られたのだ。
カイはすぐさまミシャを探し始めた。
もう一度ミシャを失ったら…カイは本当に狂ってしまう。
真っ先に疑ったのはカミュだった。ミシャを監禁しているのを知っていたのは彼だけだったからだ。
しかし、カミュに関連する貴族の邸宅や別荘を隅々まで調べても、ミシャは見つからなかった。
国外に連れて行かれた?
だとしたらどこに?アマルティナか?
間諜に各国を探らせても全く情報は入ってこない。
ミシャが消えてから一ヶ月、カイはすっかり疑心暗鬼に陥っていた。
そしてなりより…不安で不安で仕方なかった。
…もし、ミシャが命を落としていたら…?
こんなに情報が入ってこないということは、その可能性も十分ある。
「ミシャ…ミシャ…どこにいるんだ?」
どこでもいい。生きていて欲しい。
もしカイが憎いなら、嫌いなら、帰ってこなくていい。ただ、生きていて欲しい。
ミシャはカイにとっての聖域、生きるよりどころなのだ。
ミシャがこの世にいなければ、カイが生きれる意味も無くなってしまう。
「陛下、大丈夫ですか」
「カミュ…」
カミュが声をかけてきた時、カイは少し驚いた。
ミシャが消えてから、二人とも距離を取り合ってきたからだ。
「三日後に、私の家で晩餐会を開こうと思っています。よければお越しください」
「なにを言っているんだ…?俺にそんな暇はない」
「ミシャ様について情報を持っているという方もいらっしゃいます」
「本当か…?」
今はほんの少しの情報でも欲しい。
それに、正直カイもだいぶ参っていた。
久しぶりに幼馴染と夕食を共にするのも悪くないかもしれない。
「わかった、行く」
うなずいたカイを見て、やけに緊張した面持ちでカミュは一礼した
公務が終わり、いつものようにミシャの待つ寝室に帰ったら、そこはもぬけの殻だった。
「ミシャ…?」
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国外に連れて行かれた?
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「ミシャ…ミシャ…どこにいるんだ?」
どこでもいい。生きていて欲しい。
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「陛下、大丈夫ですか」
「カミュ…」
カミュが声をかけてきた時、カイは少し驚いた。
ミシャが消えてから、二人とも距離を取り合ってきたからだ。
「三日後に、私の家で晩餐会を開こうと思っています。よければお越しください」
「なにを言っているんだ…?俺にそんな暇はない」
「ミシャ様について情報を持っているという方もいらっしゃいます」
「本当か…?」
今はほんの少しの情報でも欲しい。
それに、正直カイもだいぶ参っていた。
久しぶりに幼馴染と夕食を共にするのも悪くないかもしれない。
「わかった、行く」
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