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二十一話 恩恵
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夜のうちに王都からなるべく離れたかった。動向を追われるのを恐れて、ゼルトリアとは反対の西門から王都を出る。
暗い夜道はほとんど光もない。
手元の灯りでは足元のすぐ近くしか照らせない。
ほとんど外に出たことのないミシャにとっては初めて歩く場所しかない。
暗い中歩くのは困難だったし、限られた視界でコンパスと地図を読みながら道を探すのは想像以上に大変だった。
「ゼルトリアに着くのに、何日かかるんだろう…」
徒歩では時間がかかる。
やはり相乗りを探した方が良さそうだ。
昼間は相乗り、夜は徒歩で進めば、かなり早くゼルトリアまでつけるはずだ。
ミシャは夜明けまでに宿場町に着くのを目指して足早に歩いた。
結局宿場町に着く頃には日も登ってしまっていた。
これ以上明るくなると、視界が明るくなりすぎてほとんど何も見えなくなってしまう。
ミシャは急いで牛車や馬車を探した。
「すいません。ゼルトリア付近に行かれる方はいませんか?」
「ゼルトリア行きの商団なら向こうだよ」
ミシャはゼルトリアへ向かう商団の元へ行った。
商団はどうやらゼルトリア人の集まりの様だった。
少しだけアマルティナ人もいる。
「あの…すいません」
ミシャはゼルトリア人らしき男性に声をかけた。
「ゼルトリアに向かうと聞いたのですが」
「そうだよ」
「空いている場所があれば乗せてくれませんか…?」
「空いてる場所ォ?」
男の人はまじまじとミシャを見る。
「そんな深々と帽子をかぶって…お前ワケ有り?面倒ごとはごめんだよ」
「ま、まってください…」
太陽が登ってきて肌がぴりぴりと傷み始める。急がないと。
「あの…あなたは、ゼルトリアの方ですか?」
「……そうだけど。見りゃわかるだろ?」
「その、こちらに来てくれませんか?」
ミシャは男を人目のつかない物陰に誘う。
「え、えぇー?こ、困るよそーゆうの。キミ男の子でしょ?」
「少しだけなのでっ…」
ミシャには珍しい強引さで男の手を引っ張る。
ミシャにとっては一か八かの賭けだった。
ミシャは物陰で、男以外の誰からも見られていないことを確認した。
そして、震える手で帽子を脱いだ。
「っ…!」
男は帽子からこぼれ落ちた白髪をみて目を見張る。
「白髪の……天使?」
「僕は急いでゼルトリアの王都に行かなくては行けないんです。助けてくれますか…?」
男が信じられないものを見るようにミシャの髪に触れた。
「本物だ…」
帽子を脱いだことで視界がぼやぼやと白む。
「ゼルトリアの王都に行きたいのか?」
「はい」
「わかった。団長に話をつけて来よう」
男がそう言ったことに安心してミシャは帽子を被り直した。
ゼルトリア人はなぜか白髪のものを信仰している。
ミシャにとっては不思議で仕方ないことだが、今はそれに救われた。
暗い夜道はほとんど光もない。
手元の灯りでは足元のすぐ近くしか照らせない。
ほとんど外に出たことのないミシャにとっては初めて歩く場所しかない。
暗い中歩くのは困難だったし、限られた視界でコンパスと地図を読みながら道を探すのは想像以上に大変だった。
「ゼルトリアに着くのに、何日かかるんだろう…」
徒歩では時間がかかる。
やはり相乗りを探した方が良さそうだ。
昼間は相乗り、夜は徒歩で進めば、かなり早くゼルトリアまでつけるはずだ。
ミシャは夜明けまでに宿場町に着くのを目指して足早に歩いた。
結局宿場町に着く頃には日も登ってしまっていた。
これ以上明るくなると、視界が明るくなりすぎてほとんど何も見えなくなってしまう。
ミシャは急いで牛車や馬車を探した。
「すいません。ゼルトリア付近に行かれる方はいませんか?」
「ゼルトリア行きの商団なら向こうだよ」
ミシャはゼルトリアへ向かう商団の元へ行った。
商団はどうやらゼルトリア人の集まりの様だった。
少しだけアマルティナ人もいる。
「あの…すいません」
ミシャはゼルトリア人らしき男性に声をかけた。
「ゼルトリアに向かうと聞いたのですが」
「そうだよ」
「空いている場所があれば乗せてくれませんか…?」
「空いてる場所ォ?」
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「そんな深々と帽子をかぶって…お前ワケ有り?面倒ごとはごめんだよ」
「ま、まってください…」
太陽が登ってきて肌がぴりぴりと傷み始める。急がないと。
「あの…あなたは、ゼルトリアの方ですか?」
「……そうだけど。見りゃわかるだろ?」
「その、こちらに来てくれませんか?」
ミシャは男を人目のつかない物陰に誘う。
「え、えぇー?こ、困るよそーゆうの。キミ男の子でしょ?」
「少しだけなのでっ…」
ミシャには珍しい強引さで男の手を引っ張る。
ミシャにとっては一か八かの賭けだった。
ミシャは物陰で、男以外の誰からも見られていないことを確認した。
そして、震える手で帽子を脱いだ。
「っ…!」
男は帽子からこぼれ落ちた白髪をみて目を見張る。
「白髪の……天使?」
「僕は急いでゼルトリアの王都に行かなくては行けないんです。助けてくれますか…?」
男が信じられないものを見るようにミシャの髪に触れた。
「本物だ…」
帽子を脱いだことで視界がぼやぼやと白む。
「ゼルトリアの王都に行きたいのか?」
「はい」
「わかった。団長に話をつけて来よう」
男がそう言ったことに安心してミシャは帽子を被り直した。
ゼルトリア人はなぜか白髪のものを信仰している。
ミシャにとっては不思議で仕方ないことだが、今はそれに救われた。
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