忌子は敵国の王に愛される

かとらり。

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二十話 たぶん、大丈夫

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 家の警備は無いと言っても過言ではなかった。

 ゼルトリアの城にいたときもそうだったが、そもそも逃げると思われていなかったらしい。

 ミシャは生まれてからゼルトリアに引き渡されるまで、兄と出かけた一回を除いで無断で外に出たことはない。

 だから兄も見張りは付けなかったのだろう。

 しかし、警備がないからと言って、外に出ることが簡単なわけではない。

 ミシャは忌子、その髪と瞳を見られれば町中の人がミシャを取り囲み断罪するだろう。

 ミシャはこの髪と瞳を隠してゼルトリアまで行かなければならない。

(フード…は、目立つ。帽子にしよう)

 父の外出中に父の部屋を漁ったら丁度いい帽子を見つけた。
 髪を全部しまって目深に被れば髪も瞳も隠せる。

 昼間、太陽が出ている間は目もよく見えないし、肌も痛む。
 動けるのは夜だけ。

 夜に動くなら山や森を抜けるのは危険だから、大きな道を選ばなければいけない。

 出る前に地図を確認した。
 少しと遠回りになっても大きな道を選べば、相乗りを探すこともできる。

(…たぶん、大丈夫)

 アマルティナに来てたら二週間が経っている。
 戦争の準備がいつ終わるかわからない。始まってしまう前に早く行かなくては。

 ミシャはその日の夜。誰もが寝静まってから、膝ほどまであった髪を、肩程まで無造作に切った。

 帽子に全て髪を入れ、最低限の食料と、父の部屋からとってきた金目のものを持って家から出た。
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