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十九話 単純な答え
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ミシャは家の敷地の中でなら何をしても良いことになった。
でも、庭を作る気も起きない。
家には多くの使用人がいる。
彼らはミシャを見つけたら、おぞましいものを見てしまったかの様な顔をして逃げていく。
きっとミシャが部屋にこもっていた方が彼らも安心だろう。
でも、
(ゼルトリアとキールが戦争するって、本当かな…)
ミシャはそれが不安で仕方なかった。
自分一人のために戦争が起きる訳ないと思うが、カイのあの目を思い出すとどうしても不安になってしまう。
怒りに燃えた赤い瞳。あれは獣の目だ。
理性を燃やし尽くし、本能のままに動く。
あの目をしたカイだったら戦争だってしてしまうかもしれない。
現にカイはアマルティナに侵攻している。ただ、ミシャを手に入れるためだけに。
(ゼルトリアがどうにかなってしまったら、どうしよう…)
ゼルトリアが負けたらミシャは殺される。でも、そんなこと以前に、ミシャのせいで起きた戦争でゼルトリアが崩壊してしまったら…ミシャは耐えられない。
ゼルトリアは強い。でもキールだって強いのだ。
カイも、ミシャを優しく迎え入れてくれたゼルトリアの人たちも心配で仕方なかった。
(一回だけ…)
一回だけ、行こう。
ミシャは決めた。
カイのために自分はカイの目の前から消えた方がいい。
それは変わらない。
でも、ミシャがいなくなったせいでゼルトリアが危機に瀕してしまうのであるなら話は別だ。
一回だけゼルトリアに行き、カイに戦争を止めるように言って……ミシャがそんな価値なんてない、忌子である事も言って、またアマルティナに戻れば良い。
(でも、アマルティナに戻る必要なんて、あるのかな…)
アマルティナに戻っても、ミシャが忌子であることは変わらない。
そうだ。ミシャがいて良い場所なんて無い。
なら、死んでしまえばいい。
死んでしまえば、また兄のような者に利用されることはない。
そう考えたらやけにすっきりした。
ミシャはきっとずっと前から死にたかったんだ。自分がそれに気づけなかっただけで。
死ぬ前にせめて自分の振り撒いた不幸を出来るだけ払わないと。
そう思い、ミシャは計画を練った。
でも、庭を作る気も起きない。
家には多くの使用人がいる。
彼らはミシャを見つけたら、おぞましいものを見てしまったかの様な顔をして逃げていく。
きっとミシャが部屋にこもっていた方が彼らも安心だろう。
でも、
(ゼルトリアとキールが戦争するって、本当かな…)
ミシャはそれが不安で仕方なかった。
自分一人のために戦争が起きる訳ないと思うが、カイのあの目を思い出すとどうしても不安になってしまう。
怒りに燃えた赤い瞳。あれは獣の目だ。
理性を燃やし尽くし、本能のままに動く。
あの目をしたカイだったら戦争だってしてしまうかもしれない。
現にカイはアマルティナに侵攻している。ただ、ミシャを手に入れるためだけに。
(ゼルトリアがどうにかなってしまったら、どうしよう…)
ゼルトリアが負けたらミシャは殺される。でも、そんなこと以前に、ミシャのせいで起きた戦争でゼルトリアが崩壊してしまったら…ミシャは耐えられない。
ゼルトリアは強い。でもキールだって強いのだ。
カイも、ミシャを優しく迎え入れてくれたゼルトリアの人たちも心配で仕方なかった。
(一回だけ…)
一回だけ、行こう。
ミシャは決めた。
カイのために自分はカイの目の前から消えた方がいい。
それは変わらない。
でも、ミシャがいなくなったせいでゼルトリアが危機に瀕してしまうのであるなら話は別だ。
一回だけゼルトリアに行き、カイに戦争を止めるように言って……ミシャがそんな価値なんてない、忌子である事も言って、またアマルティナに戻れば良い。
(でも、アマルティナに戻る必要なんて、あるのかな…)
アマルティナに戻っても、ミシャが忌子であることは変わらない。
そうだ。ミシャがいて良い場所なんて無い。
なら、死んでしまえばいい。
死んでしまえば、また兄のような者に利用されることはない。
そう考えたらやけにすっきりした。
ミシャはきっとずっと前から死にたかったんだ。自分がそれに気づけなかっただけで。
死ぬ前にせめて自分の振り撒いた不幸を出来るだけ払わないと。
そう思い、ミシャは計画を練った。
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