忌子は敵国の王に愛される

かとらり。

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十三話 あの人の人柄

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 それからミシャはときどきカイと遊戯盤で遊ぶようになった。

 昼間もすることができてミシャそれまで自分が随分と暇していたことに気づいた。

「あの、カミュさんも良ければ相手になってくれませんか…?」

 最近はだいぶ打ち解けて話せる様になった庭師のカミュにそう誘うぐらいにはミシャは遊戯盤にはまっていた。

「私が、ですか?うーん…」
「あ、忙しいなら大丈夫です!ごめんなさい、わがまま言って…」

 ミシャは自分の言った言葉の恥ずかしさにおそばせながら気づいた。
 ミシャの退屈しのぎの相手なんて嫌に決まっている。なんて自分勝手なことを言ってしまったのだろう。

 いつもカイがミシャがなにかを頼むと嬉しそうにするから、ついこんな事を言ってしまったのだろう。
 ミシャは顔を真っ赤にして己を恥じた。

「いえ、私は全然暇なんですが、ただ……陛下が嫉妬してしまうのではないかと」
「しっと…?陛下が?」

 カイが一体誰に対して、なんの嫉妬をするのかミシャは見当もつかない。

「陛下はできればミシャ様を独り占めしたいんですよ。本当は私とこうして一緒にいることも苦々しく思っているんじゃないでしょうか」
「そ、そんな…」
「この前陛下に会ったとき、ミシャ様が庭の話ばかりすると私に愚痴をこぼしていましたよ」

 たしかに、カイとの夕食ではミシャは庭の話をしてばかりだった。
 カイからすると退屈な話だっただろうと反省する。

「カミュ様と陛下はよくお話されるのですか?」

 庭師と王に接点があるのが不思議でミシャはそう尋ねてみた。

「実は私はもともと近衛騎士だったんですよ」
「えっ…」

 ミシャは驚いてカミュを上から下までまじまじと見てしまう。
 たしかにカミュは庭師にしては筋骨隆々としていた。

「だから陛下とは交友があったんです」
「どうして今は庭師をなさっているのですか?」
「実は任務の中で左目を失明してしまったんです。それでもう騎士は無理だと。それで陛下が他に行くところがないなら庭師になればいいと言ってくれて」

 これだけガタイがいいと高い場所の作業とか力仕事に重宝されるんです。それに、私は植物が好きなので、と言ってカミュはにこにこと笑った。

「そう、なんですか」

 やっぱりあの人は優しい人なんだな。とミシャは思った。
 ミシャにも優しいし、それ以外の人にも優しい。

「陛下は一度自分のもとに来た者は最後まで責任を取るとおっしゃっているんです。だから敵国から陛下の元に寝返るものも少なくないんですよ」
「陛下は…どなたにでも優しいんですね」

 ミシャが俯いてそう言ったのを見てカミュは何を思ったのか

「ミシャ様には特別にお優しいと思いますよ」

 と慰める様に言った。

 
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