忌子は敵国の王に愛される

かとらり。

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十話 思いもよらない

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 城に連れて来られてから、ミシャは自分には不釣り合いな豪奢な部屋に篭りがちだった。

 庭に夕方には行くもののそれ以外は本当に部屋から出なかった。

 幼少期から家に閉じこもっていたミシャは部屋の外に出ても何をすれば良いのか分からない。

 それに、カイはミシャが部屋から出るときは護衛の騎士を側につけるようにしているから、なんだか申し訳ない感じもした。
 ミシャが部屋から出ないにしても彼らはミシャの部屋の前に立っているのだが、特にも用もなくぷらぷらとミシャが歩き回るのについてきてもらうのは身が引ける。

 しかし、ミシャがほとんど部屋から出ないことを護衛の騎士はカイに報告してしまったらしい。

「ミシャ、ここは退屈か?」
「え…?」

 夕食の時、躊躇いがちにカイにそう聞かれてミシャは驚いてしまう。

「そ、そんなことない、です」

 たしかにすることもなく一日中ぼーっとしているが、それはアマルティナにいたときもそうだった。

「でも、あの部屋にはなにもないだろう?」
「なにも…?」

 ミシャは自分の部屋を思い出したが、むしろないものを探す方が難しいぐらいだった。

「本とか、絵画だとか…遊戯盤…俺もそういうものは分からないが、欲しくないか?」

 絵画、と言われて、ミシャはここに来た最初の日にみたあの天使の絵画たちを思い出してドキッとしたが、なんとか動揺を隠す。

「えと、実は僕も、あまり知らなくて…字も…恥ずかしながら、あまり読むのは得意、じゃないんです。学校に行ってないので」

 アマルティナとゼルトリアは多少の違いはあれど文字も言葉も同じだが、ミシャは幼少期、まだ兄と仲がよかったころ、少し教えてもらっただけなので文字は簡単な単語しか読めない。

「遊戯盤ならチェスぐらいは俺も知っているが…」

 そんなに気を遣って貰わなくても、退屈じゃないのに、とミシャは思ったが、カイは考え込んだあとさらりとこう言った。

「実際に一緒に買いに行くか?」

 

「……え?」


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