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十四話 忘れたころに
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ミシャは陽が落ちた後や、雲が厚くて暗い日に庭の世話をするようになった。
リミネリアは順調に育っている。
このまま上手く育って、カイの瞳と同じ真紅の花が咲いたら、彼に見せてあげたい。
きっと彼は喜んでくれる。
(それくらい、いいよね…?)
カイが少し怖い顔で優しく微笑むのを想像してミシャは笑みを浮かべた。
そんなミシャに背後から忍び寄る男がいた。
「お前がミシャ・セルヴィレアか?」
「っ…へ」
ミシャは後ろから突然話しかけられたことよりも、呼ばれた名前の方に驚いた。
セルヴィレアは紛れもないミシャの姓だが、アマルティナからゼルトリアに受け渡されるとき、ミシャはセルヴィレアの籍から抜けた。
だから、ゼルトリアでミシャの姓を呼ばれたことは今までなかった。
「あなた、誰ですか?」
「お前の父親が秘密裏にお前を連れ戻そうとしている。俺はその協力者だ」
「お父様が…?」
たしかにアマルティナで父以外に自分を連れ戻そうと思うような人物はいないだろうが、まさか父がこんな危険を冒してまでミシャを助けるとは思っていなかった。
「明日の深夜第4塔の一階に来い」
「ちょ、ちょっと待って」
「長く話していると怪しまれる。アマルティナまでの帰還の準備もできている。何も持たずに来い」
そう言い捨てて男は去っていった。
リミネリアは順調に育っている。
このまま上手く育って、カイの瞳と同じ真紅の花が咲いたら、彼に見せてあげたい。
きっと彼は喜んでくれる。
(それくらい、いいよね…?)
カイが少し怖い顔で優しく微笑むのを想像してミシャは笑みを浮かべた。
そんなミシャに背後から忍び寄る男がいた。
「お前がミシャ・セルヴィレアか?」
「っ…へ」
ミシャは後ろから突然話しかけられたことよりも、呼ばれた名前の方に驚いた。
セルヴィレアは紛れもないミシャの姓だが、アマルティナからゼルトリアに受け渡されるとき、ミシャはセルヴィレアの籍から抜けた。
だから、ゼルトリアでミシャの姓を呼ばれたことは今までなかった。
「あなた、誰ですか?」
「お前の父親が秘密裏にお前を連れ戻そうとしている。俺はその協力者だ」
「お父様が…?」
たしかにアマルティナで父以外に自分を連れ戻そうと思うような人物はいないだろうが、まさか父がこんな危険を冒してまでミシャを助けるとは思っていなかった。
「明日の深夜第4塔の一階に来い」
「ちょ、ちょっと待って」
「長く話していると怪しまれる。アマルティナまでの帰還の準備もできている。何も持たずに来い」
そう言い捨てて男は去っていった。
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