忌子は敵国の王に愛される

かとらり。

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九話 忘れてはいけないこと

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「庭はどうだった?」

 庭を見た後の夕食の席でミシャはそう尋ねられた。

「あ…あの、とっても広くて、びっくりしました。あと、その、あのお庭、王妃様のお庭だって聞いて…」
「ミシャは王妃以上に大切な存在だ。それにお前がいる以上王妃を娶る気もないしな」

 さらっとカイが言ったのを聞いてミシャは赤面して黙り込んでしまう。

「ミシャ?」
「……どうして、陛下はこんなに僕に優しくしてくれるのですか?」

 ミシャがそう言うと、なぜかカイは少し驚いた顔をする。

「お前には、俺が優しく見えるのか?」
「はい…すごく…」

 自分を犯した相手に優しさを感じるなんて、おかしいだろうか。

 でも、カイからは、父がミシャに向けていたものとは違う優しさを…愛情を感じる。
 ミシャのことを尊重してくれている感じがするのだ。

「もしそうなら、お前が俺を優しくさせているんだろう。俺は…お前が愛おしいから、優しくしたくなるんだ」

(溺れちゃいそう…)

 ミシャは思った。

 ミシャは生まれた時から周りに疎まれてきた。
 唯一ミシャを大切にしてくれた父の愛も歪んでいた。

 でも、カイの愛情はまっすぐミシャに向かってくるからたじろいでしまう。
 憎しみの受け止め方は分かるけど、愛の受け止め方は分からないのだ。

 ミシャには愛を受け取る資格なんてない。
 だって、ミシャは呪われた子なんだから。不幸を撒き散らす子なんだから。

(そうだ、忘れてた…)

 カイは勘違いしてるだけ。
 ミシャは天使でもなんでもない。それを知ったらカイも今みたいな優しい顔を向けてくれることはないだろう。

 カイが怒ったら恐ろしいことはミシャは十分に知っている。

(溺れちゃだめ。水から出ないと、早く…)

 俯いて暗い表情をするミシャをカイが切なげに見つめていた。
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