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六話 王の盲信
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次に目が覚めた時、ミシャはガタガタと揺れる小さな部屋の中にいた。
窓から見える景色が動いているので、そこが大きな馬車の中だと気づく。
「目が覚めたか」
「あ…」
ミシャにそう声をかけたのは、ミシャの身体を好き勝手に蹂躙した男だった。
男が気遣わしげにミシャに手を伸ばすが、反射的に身を捩って避けてしまう。
「すまない。あんな乱暴なことをしてしまって…あまりの怒りにどうかしていた」
「あ、あなたは…誰なんですか…もしかして、あなたがゼルトリアの王なのですか?」
ミシャは怯えて震える声でそう問いかけた。
「そうだ、俺がゼルトリア王、カイ・ゼルトリアだ」
「じゃあ、あなたが僕を……どうして、僕を捕虜なんかに選んだんですか…僕なんて、何の価値もないのに」
ミシャ自身に土地や金に勝る利点はない。
昨日の残虐な行為を目的としているわけでもなさそうだ。
「お前が、俺の天使だからだ」
「天使…?」
「だからこそ、昨日は激昂してしまったんだ。今でも、お前をああして貫いたのが俺だけでないと思うと腑が煮え繰り返る…」
カイの目にまたあの時のような怒りの炎が燃え上がりつつあるのを見てミシャはまた恐怖に震えた。
「あ、あの…僕、あんなことをされたのは、昨日が初めて、で…」
なんとかカイを落ち着けようとそう弁明すると、カイの目は怒りの色を消す。
「どういうことだ?」
「僕は忌子なので…お父様ぐらいしか、僕に触れる人はいなくて…そ、その…あんなところなんて、だれからも…」
忌子に触れると呪いが移る。
父もべたべたとミシャに触れる方でもなかった。
あんなに身体中弄られるのはミシャには初めてのことだった。
「でも、お前は否定しなかったじゃないか」
「こわくて、声も出なかったんです…質問の意味も、わからなかったし…」
カイがため息を吐いて、それを見たミシャはびくん、とまた怯える。
「悪かった」
「ぇ…」
「強引に犯すなど、元より許されないことだが、お前の初めてをあんな形で奪うことになってしまったこと、深く謝罪する」
カイはミシャに向かって深く頭を下げた。
国が違えども頭を下げる意味は同じだ。
王ともあろう男が、ミシャなんかに頭を下げるなんて受け入れ難いことだ。
「や、やめて下さいっ…恐れ多いです」
ミシャがそう言うとカイは素直に頭を上げてじっとミシャを見つめた。
誠実な瞳だった。
昔からミシャの鈍色の瞳を真っ向から見つめるものは誰もいなかった。
目が合っていることが居た堪れなくて、ミシャは目を逸らした。
窓から見える景色が動いているので、そこが大きな馬車の中だと気づく。
「目が覚めたか」
「あ…」
ミシャにそう声をかけたのは、ミシャの身体を好き勝手に蹂躙した男だった。
男が気遣わしげにミシャに手を伸ばすが、反射的に身を捩って避けてしまう。
「すまない。あんな乱暴なことをしてしまって…あまりの怒りにどうかしていた」
「あ、あなたは…誰なんですか…もしかして、あなたがゼルトリアの王なのですか?」
ミシャは怯えて震える声でそう問いかけた。
「そうだ、俺がゼルトリア王、カイ・ゼルトリアだ」
「じゃあ、あなたが僕を……どうして、僕を捕虜なんかに選んだんですか…僕なんて、何の価値もないのに」
ミシャ自身に土地や金に勝る利点はない。
昨日の残虐な行為を目的としているわけでもなさそうだ。
「お前が、俺の天使だからだ」
「天使…?」
「だからこそ、昨日は激昂してしまったんだ。今でも、お前をああして貫いたのが俺だけでないと思うと腑が煮え繰り返る…」
カイの目にまたあの時のような怒りの炎が燃え上がりつつあるのを見てミシャはまた恐怖に震えた。
「あ、あの…僕、あんなことをされたのは、昨日が初めて、で…」
なんとかカイを落ち着けようとそう弁明すると、カイの目は怒りの色を消す。
「どういうことだ?」
「僕は忌子なので…お父様ぐらいしか、僕に触れる人はいなくて…そ、その…あんなところなんて、だれからも…」
忌子に触れると呪いが移る。
父もべたべたとミシャに触れる方でもなかった。
あんなに身体中弄られるのはミシャには初めてのことだった。
「でも、お前は否定しなかったじゃないか」
「こわくて、声も出なかったんです…質問の意味も、わからなかったし…」
カイがため息を吐いて、それを見たミシャはびくん、とまた怯える。
「悪かった」
「ぇ…」
「強引に犯すなど、元より許されないことだが、お前の初めてをあんな形で奪うことになってしまったこと、深く謝罪する」
カイはミシャに向かって深く頭を下げた。
国が違えども頭を下げる意味は同じだ。
王ともあろう男が、ミシャなんかに頭を下げるなんて受け入れ難いことだ。
「や、やめて下さいっ…恐れ多いです」
ミシャがそう言うとカイは素直に頭を上げてじっとミシャを見つめた。
誠実な瞳だった。
昔からミシャの鈍色の瞳を真っ向から見つめるものは誰もいなかった。
目が合っていることが居た堪れなくて、ミシャは目を逸らした。
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