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(あつい…くるしい…)

 呼吸を荒げ、朦朧とした頭でアエテルニアは昔のことを思い出していた。

 あの時の自分は必死だった。

(何に…?)

 隠すのに。心の奥に芽生えていた感情を。

「ニア、鍵の場所は?」
「え…?」

 鍵?なんのことだろう。
 ぼんやりとしたままのアエテルニアに苦笑したテオドアがアエテルニアの首元を指差した。

「これの鍵の場所だ」

 アエテルニアの首元にはチョーカーが嵌められている。オメガがアルファに無理矢理つがいにさせられるのを防ぐためのものだ。

 鍵、どこだっけ。
 そうだ。発情期のとき籠る小屋の小さな棚にしまってあった…
 そういえば、僕が今いるのってあの小屋だ…
 なんで、ここにいるんだっけ?
 なんで、テオドアもここにいるんだろう…?

「ニア、教えてくれ」
「……そこのたなの…いちばんした」

 アエテルニアはテオドアに聞かれただけで、あっさり鍵の場所を教えてしまった。
 だって、はやくこの首輪を外して欲しいから。外して、それから…それから?

 それ以上考えてはいけない気がして、アエテルニアは頭を振った。

 テオドアは小さな鍵を見つけて、アエテルニアのチョーカーの鍵穴に差し込んで、チョーカーを外した。

「ぁ……」

 まっさらな首筋がさらされる。
 アエテルニアの身体は甘い期待で震えた。

「だ、だめ…」

 心とは裏腹な言葉をこぼす。

「だめ、か?」
「ん、あっ…やぁあ」

 でも、テオドアにうなじを舐められたら頭がぐちゃぐちゃになってしまう。
 アエテルニアはびくびくっと震えて射精してしまった。

「ふっ…そんなに噛んでほしいのか…?」
「ち、ちがう…ちがう…あぅ」

 テオドアがアエテルニアの後孔に人差し指を入れる。もうどろどろに溶けていたそこはなんの抵抗もなくテオドアの指を受け入れる。

「こっちも挿れてほしくて仕方ないようだな」
「は、ぅ…そんな…あぁ」

 テオドアがなかに入れた人差し指と中指をくぱぁ、と開いた。
 こぽこぽとはしたなく愛液が溢れるのがわかって、アエテルニアは消えてしまいたい気持ちだった。

「慣らす必要もなさそうだ」
「へ、や…だめ、あっ…やぁぁああ!」

 腹の奥の方まで一度で入れられる。
 こんなの、だめなのに…足りなかったところが満たされている気がして、無意識にテオドアの背に縋るように手を回してしまった。

 「はっ……は、う」

 息が上がる。
 肺が燃えるように熱い。

「ニア……こっちを向け」
「う、うぅ~!」

 テオドアがアエテルニアの顎を掴んでそのまま強引なキスをした。

 唾液の甘さにアエテルニアは酔いしれる。

「本当に…お前の瞳は綺麗だな」

 アエテルニアの白金の髪をかき上げて、蛍石の瞳を血のように赤い瞳がじっと見つめた。

「ニア…アエテルニア。やっとお前と番になれる」

 テオドアは見たことないような満足げな笑みを浮かべていた。
 子供のころの無邪気な笑顔とは違う…征服欲が満たされた支配者の笑みだ。

 テオドアがアエテルニアの身体をひっくり返す。中に挿っていたテオドアの男根がぐりゅ、と内側を抉ってきて、アエテルニアは枕に突っ伏して喘いだ。

 うなじを舐め上げられて、全身がびくびく震えて悦んだ。

「ひっ…う、だめ、だめ……」
「どうして?」

 囁くような彼の声だけで逝ってしまいそうだ。
 このまま快楽に流されてしまいたい。

 でも、かろうじて残っている理性がだめだと叫んだ。

「だって……かぞくなのに…だめ」

 ぽろぽろ流す涙で枕はぐっしょりと濡れている。
 もう、自分でも悲しくて泣いてるのか、嬉しくて泣いてるのかわからない。

「俺は…お前のことをそう思ったことはないよ」
「っひ…」

 残酷な言葉とともにアエテルニアのうなじに彼の歯が突き立てられた。
 鋭利な犬歯が皮膚を突き破る痛みすら、悲しいほどに気持ちよかった。

 どうして、どうしてこんなふうになってしまったんだろう。

 僕と、彼の関係は…もっと、暖かくて尊いものだったはずなのに。
 こんなに、熱くて生々しい……そして、背徳的なほどの快楽に染まったものではなかったはずなのに……

 悲しさ、悦楽、苦しみ、歓喜…
 色々な感情の渦のなかで、アエテルニアはただ泣くことしか出来なかった。
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