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最後の献身

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 狂おしい発情が終わり、目を覚ましたアエテルニアは激しい自己嫌悪に襲われた。
 テオドアの前であんなに乱れた姿をさらしてしまった。

 意識がもうろうとしてあまり覚えていないが、部屋に入ってきたテオドアが抑制剤を呑ませてくれたことは覚えている。
 抑制剤のおかげで発情期は一晩で治った。抑制剤のおかげではなく、大量に注がれたアルファの精液のおかげかもしれないが。

 目が覚めたとき、テオドアはもう仕事に行ってしまっていたが、たぶんお風呂に入れてくれたのだろう、身体は綺麗になっていたが、身じろぐたびに残滓がなかから溢れてきた。

 あわてて浴室に行って体を清めた。そのとき鏡でうなじを見たが、噛み跡は残っていなかった。

 テオドアはアルファだ。アルファであれば発情期のオメガ前にすれば欲情し、うなじを咬んで自分だけの番にしたくなる。

 でも、テオドアはそうしなかった。

 テオドアはたぶん抑制剤を呑んできていたのだろう。そうでもなければうなじを噛む衝動を抑えられるわけがない。

(そこまでして、僕を番にしたくなかったの…?)

 テオドアがアエテルニアを大事にしてくれているのはわかっている。
 でも、それはきっとアエテルニアを愛しているからではない。

 テオドアは母の忘れ形見だからアエテルニアをこうして守ってくれているのだ。

(やっぱり、お母さんじゃない僕じゃだめなのかな…)

 アエテルニアは母の代わりにテオドアに抱かれたとしてもよかった。でも、やっぱりアエテルニアなんかがあの美しい母の代わりになるわけがなかった。

「はぁ…僕ってなんのために生きてるんだろう」

 いつもはテオドアとアエテルニアは同じベッドで寝ている。それはこの部屋での生活が始まった時から今まで続いてることだ。

 でも、それも今日で終わりなんだろうな、アエテルニアは思った。

 テオドアが番にしてくれていたらよかったのに。そうしたら、アエテルニアは生きる意味があると…テオドアのそばにいていい理由になると思ったのに

 自分がオメガなのは発情期の前からなんとなく察していた。テオドアと比べて発育は遅いし、体つきはどことなく女性的だった。

 発情期がきたらオメガである自分を隠すのは難しくなる。フェロモンの匂いじゃ扉では防ぎきれない。
 屋敷の中にアルファである父がいればほぼ確実にアエテルニアの存在はばれてしまう。
 そうなったらアエテルニアは殺されるだろうし、テオドアも無事では済まないだろう。

 それでも、テオドアはアエテルニアの首筋をかまなかった。
 アエテルニアは覚悟を決めた。

 テオドアの負担になるぐらいなら……
 
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