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ゆがんだ初恋

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 テオドアが学園に来て、新たに知ったことは二つある。一つはアエテルニアの出自だ。

 アエテルニアの瞳は珍しい色だ。ヴァルキュリア家には数多くの使用人がいるが、アエテルニアと同じ瞳を持つものはいない。
 しかし、テオドアは学園に入ってアエテルニアと同じ瞳を持つものを見つけた。
 それがアンリだ。

 蛍石の瞳は王族の証。
 学園…いや、貴族の間では有名な話だったがテオドアだけは知らなかった。
 父はあの瞳を忌み嫌っていたし、テオドアに瞳について話すこともなかった。
 家庭教師が王族の瞳については教えてくれなかったのも父の指示だろう。
 
 しかし、この知識はテオドアにとってはいい方向に働くものだ。
 アエテルニアはヴァルキュリア家の庇護なしでは生きていけないわけではなくなったのだ。
 その瞳さえあれば、王族の庇護を受けることができる。もちろん、アエテルニアの母は庶民だったしアエテルニアが王位を継承するなんてことはないだろうが。
 アエテルニアをヴァルキュリアの籍から外すことは、テオドアの目的を叶えるために必要なことだった。

 テオドアの目的……アエテルニアを自分のものにすることだ。

 学園に来て知ったことの二つ目。それは、アエテルニアが自分の運命の番ということだった。
 運命の番。抗いようもなくひかれあうアルファとオメガ。
 テオドアは学園に来てから初めてその存在を知った。

 運命の番は出会った瞬間にひかれあう。ひかれあう、それだけではあまりにも曖昧で根拠に欠けるものだが、運命の番にはもう一つ大きな特徴があった。

 運命の番は、第二次性徴前でも互いのフェロモンを感じることができる。

 テオドアはまだ七歳のアエテルニアからかおる匂いを感じ取っていたし、おそらくアエテルニアもそうだ。
 テオドアの匂い…嫌いではないがそわそわする匂いがすると言っていた。

 テオドアとアエテルニアは運命の番。

 そうと知ってから、テオドアは本能的に気づかないふりをしていたアエテルニアへの欲情をいやおうなしに気づかされた。
 でも、それに気づいたとき、テオドアは16歳、アエテルニアは11歳だった。
 アエテルニアに関しては第二次性徴も来ていない。

 気づいたからと言って昇華できるものではなかった。

 どこにもぶつけられない恋心は屈折し、歪んでいった。
 テオドアはまだ思いを通わせてもいないのに、戸籍上は弟であり結婚できないアエテルニアと結ばれるために、戸籍を抜こうと画策していた。

(いや…違う。ニアをヴァルキュリアに縛り付けたら可哀そうだから…)

 テオドアは誰に責められているわけでもないのに自己弁護をしていた。
 しかし、自分が一番わかっている。

 テオドアは、アエテルニアにどうしようもなく惹かれている、と。
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