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猫ちゃん、押しかける

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 澪はなるべく時間をかけて散歩に出た。
 ここがどこかは知らないが元の家からはそこまで遠くないはず。ということは澪の家からは少し距離があるのだ。

 なるべくゆっくり歩いていると、遠くから車が走って来る音がした。

(来た…多分宇伊だ)

 乗り慣れた車のエンジン音を聞き、澪は音のする方へ駆け出した。

「み、澪様!?どちらへ!?」

 慌てて侍女が追いかけるが澪も男だ。それにすばしっこい猫種。追いつかれることはない。

「おなかにお子様がいらっしゃるのですよ!」
「ごめんね、ちょっと我慢して!」

 やっぱり、黒塗りの車が向こうから走ってくる。
 車は澪の真ん前で止まった。

「澪様。お迎えにあがりました」
「宇伊!久しぶり」

 がちゃりと自動で開けられた後部座席に駆け込むとすぐに扉は開いた。
 侍女は澪を追うのを諦めたらしく報告の電話をしているようだった。

「宇伊、なるべく早く慶斗さんの実家に連れてって」
「はぁ、何が起こっているのですか、本当に。私は澪様はそのご実家に住まれていると聞いていたのですが?」
「色々あって…」

 宇伊は澪を感動した瞳で見つめた。
 荒い運転をしてるのでできれば前を向いて欲しいが。

「大人になりましたね。澪さま」
「え?」
「つい前までは一人じゃ何もできない甘えっ子でいらしたのに…感動しました」
「そ、そうかな…」

 たしかにそうかもしれない。
 子供っぽい憧れだけで慶斗の家に嫁入りした。
 でも、実際は想像してたようなあまい生活ではなかったし、思ってたより慶斗は完璧な人ではなかった。でもむしろそうだからこそ澪はもっと慶斗が好きになったし、自分が頑張らないと、と思うようになった。
 それと…

「やっぱり、この子たちのおかげかも」

 この子達の未来のために頑張らないと。仲のいい家族を子供に与えてあげたい。

「えっ…?この子達?」

 宇伊が急ブレーキをかける。

「ちょっ…と、危ない!」
「は?え?どういうことですか?え、ご懐妊されたのですか?」
「あ、慶斗さんの実家!ありがとね、宇伊」
「み、澪様っ…!」

 澪は車から出ると、慶子に会いに邸宅に向かった。
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