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猫ちゃん、目覚める

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「んぅ…」

 酷い頭痛で澪は目を覚ました。

「ここどこ?」

 澪はいつもの寝室じゃない場所に眠っていた。

「僕確か、発情期で…」

 澪は慌てて布団から降り鏡を覗き込んだ。

 頑張って首の後ろを見ると、そこにはくっきりと歯形が残っていた。

「番になったんだ。慶斗さんと…」

 信じられない思いで、澪はその場にへたり込んでしまった。

 澪がそのまま何もできずにいると、物音を聞きつけたのか侍女が部屋に入ってきた。

「み、澪さまっ…お目覚めになったのですね、今お医者様をお呼びします!」
「あ…ちょっとまっ…て…」

 お医者様って…自分は医者にかかるほどの重体だったのだろうか。

 原因はなんとなく察しがつく。慶子に飲まされたあの薬だろう。

「澪様、大丈夫ですか?!あぁ…寝ていなくてはいけませんよ」

 しばらくして入ってきた医者は澪を布団に戻した。

「あの…僕、どれくらい眠っていたんですか?」
「六日ほどですね」
「む、六日!?…じゃあ、ここは病院…?」

 病院にしては和風出し設備もないが…

「いいえ、こちらは新しい澪様たちの邸宅です」
「…へ?」

 侍女が平然と言った言葉に澪は首を傾げる。

「澪様が寝ていらっしゃる間に移されました」
「ど、どうして…」
「慶斗様が、慶子様が同じようなことをしたら困ると…慶斗様は澪様をとても大切に思っていらっしゃるから」
「だからって引っ越しって…」

 そこまでする必要があるのだろうか。

「澪様、安静にしていてください」
「はいっ…」
「…もしかしたら、妊娠なさっているかもしれないですし」
「へっ?」
「あくまで予想ですが。猫種は狼種の子を孕みやすいです。それに、今回の発情期は長かったですし…慶斗様は避妊はしていないとおっしゃっていますしね」
「妊娠…」

 澪はぺったんこのお腹を見つめた。
 ここに子供がいるなんて信じられない。しかも、慶斗と澪の子供が…

「とにかく、体調を崩されたことも心配ですし…安静になさってください。子供がいるかもしれないですしね」
「はい」

 確実に孕んでいるわけではないが、そうである可能性が高いなら、ちゃんと注意しなくてはいけない。

「澪っ…目を覚ましたのか!?」
「け、慶斗さん!?…仕事中じゃ…」
「仕事よりお前が大事だ」

 慶斗は澪の元に駆け寄ると澪の小さな体を抱きしめた。

「ただでさえ小さいのに…この六日間どんどん痩せて…心配でならなかった」
「ごめんさない…」
「謝らなくていい。無事でよかった」

 随分大事だな、と澪は思ったが、六日と言う時間は確かに長いかもしれなかった。

「とりあえず、いまは体を休めろ」
「はい…」




 数日間医師の面倒を受けて澪はなんとか体調を回復させた。

 それからしばらくして、澪が妊娠してることがわかった。
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