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迷子の子猫ちゃん、犬のおまわりさんに助けられる

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「もう、僕のバカ…アホ、あんぽんたん…」

 澪は一人、縁側に座って尻尾をたしたしと床に叩きつけていた。

 何も考えず部屋を飛び出して走ったら迷子になっていた。
 中庭を見ながら澪は落ち込んだ。

「せっかく慶斗さんと結婚できたのに、結局お話しできなかったら何も変わらないじゃん」

 うりゅりゅと涙が込み上げてくる。

「あれー?なんで俺ん家ににゃんこちゃんがいるの?」
「っ!?」

 そんなときにいきなり話しかけられて澪はびっくりして涙を引っ込めた。

「だ、だれ?…ですか」
「いやそれは俺のセリフっていうかぁ…」

 男は慶斗と同じ狼の耳を持っていた。

「あ、もしかして慶斗のお嫁さん?」
「そ、そうですけど」
「えーめっちゃ可愛いじゃん。いいなぁ、慶斗こんな可愛い子もらえて」
「うゆ」

 その人は失礼にも澪の両頬をむにっと掴んで引っ張った。この家の人は頬っぺたを引っ張るように教育されてるのか。  

「それにしてもなんで猫種?慶子さん、異種配合とか断固拒否って感じだったのに…」
「あ、あの!!」
「ん?」

 澪はむにゅむにゅ頬っぺたを弄んでいた手を取った。

「あなた、誰ですか?僕、いま迷子になってて…このお家の方だったら案内して欲しいんですけど」
「ぷっ…ま、迷子?家の中で?」
「わ、笑わないで下さい!失礼ですよ!」
「ごめんごめん。んふっ…で?慶斗の部屋に連れてけばいいの?」
「はい」
「はーい、じゃあ一名様ご案内ー」
「みゃ!?」

 男は澪の脇に手を突っ込んだかと思うと、そのまま持ち上げた。

「ちょ、ちょっと!」

 まるで高い高いをされそうな体制に澪は足をパタパタ振って抵抗するが、男はびくともしない。

「自分で歩けます!」
「いやぁ、ほんとにちっこくて軽いねぇ。こんな赤ちゃんみたいなのよく抱けたよね、慶斗」  

 ずきん、と澪の胸が痛んだ。

 狼種からみたら猫種は成人しても子供サイズだ。
 そんなの普通は性的対象にはならない。そんなことは分かっているけど、いざ本当に言われると傷つく。

「はい、ついたよ」
「へ?」

 すとん、と廊下に降ろされる。

「俺が連れてきたのは慶斗には内緒な」
「なんで?」
「なんでも。まぁ、仲良くしろよ、新婚さん。初っ端から嫁の家出なんて幸先悪いけどな」
「……」

 図星で何にも言えない。

「じゃあな」
「ありがとうございました」

 澪は目の前の障子を開いた。

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