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猫ちゃん、狼さんと出会う
しおりを挟む澪は昔から引っ込み思案の子だった。
ネコ種のしかもΩだった澪はかなり小柄だったので、臆病になるのも仕方なかったかもしれない。
澪は学校でも宇伊を同伴させていた。貴族学校だったので珍しくはなかったが、目立っていたのは確かだった。
「宇伊…」
澪はいつも宇伊を側につかせていた。そのせいであまり友達もできず、余計に社交性を失っていた。
しかし澪が小学三年生の時、澪の祖母が心を鬼にして宇伊をつかせずに澪を学校に行かせた日があった。
澪が慶斗に会ったのはその日だった。
「えと、第三校舎ってどこだろ…」
宇伊に頼りっぱなしだったせいで澪は学校で迷子になっていた。
そして、きょろきょろ辺りを見回しながら歩いているうちに、澪は転んでしまった。
「う…いたい」
いつもなら宇伊が飛んできて助けてくれるが宇伊はいない。
心細いのと痛いのとで澪は泣き出してしまった。
「ふ、ふぇえええ」
澪が猫種の名門貴族であることは学園中に知れ渡っていたので誰もが澪に注目したが、機嫌を損ねるのを恐れてか、手を貸そうとしない。
澪がついに携帯で宇伊を呼ぼうとしたとき、誰かが澪の前に立った。
「お前、どうしたんだ」
「ぇ…?」
子供ながら大きくて立派な耳にふさふさのしっぽ。一目でオオカミ種とわかった。
「…なんだ、ただ転んだだけか。それくらいで泣くな」
「だ、だって…」
男の子は黙って澪を抱き上げた。
「どこいくの?」
「まず傷を洗わないと。それで保健室。普通このくらい自分でできることだ」
「ごめんなさい…」
小柄とはいえ子供なのに澪を軽々持ち上げるなんて。
王子様みたい。澪はそう思った。
男の子は水道で澪の傷を洗い白いハンカチで拭いてくれた。
「あ、ハンカチ…」
「気にするな」
そのあとその男の子は澪を保健室まで送り届けてくれた。
「ありがとう、ごさいます…」
「お大事にな」
澪は男の子が去ってしまってから名前を聞いていないことに気づいた。男の子のハンカチは傷口を抑えるのに使ってしまっている。
返してお礼を言わなくちゃ。
そう思って澪はその後男の子の名前を宇伊に調べさせた。
男の子の名前は慶斗。澪より三つ年上のオオカミ種の名門貴族の後継だった。
その後、澪はハンカチを返そうと何度も慶斗に会いに行こうとしたが、引っ込み思案のせいで話しかけることができず、結果ストーカーのようになってしまったのだった。
ヒートが来てからは猫種はヒートが不定期に訪れるので自宅学習になってしまい、ますます会えなくなり、澪のたまにの楽しみとして宇伊と一緒にならストーカー行為を許された。
まさかそんな澪が慶斗と結婚するなんて誰も予測していなかった。
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