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猫ちゃん大丈夫?

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 澪と慶斗の結婚が決まってから二週間後。
 あれよあれよと結婚の準備が進められ、ついに今日、澪は大神家に嫁ぐことになった。

「う、宇伊、この格好変じゃないかな?男が白無垢着るのキモくない?」

 澪は恥ずかしそうに着替えさせられた白無垢衣装を宇伊に見せた。

「ちゃんと似合っておりますよ。着物は胸が小さい方が似合うと聞きますし、胸のない澪様には最適な服装だと思います」
「なんか複雑な気分…」

 いつもはぶんぶん振り回されている澪の尻尾も、さすがに緊張しているのが今日は大人しい。

「ねぇ、宇伊。僕と慶斗さんって、実質今日初めて会うわけでしょう?」

 澪は一方的に慶斗を見てきているが、慶斗は澪と顔を合わせるのも初めてである。
 本当にこの結婚は大丈夫なのか宇伊は改めて心配になってきた。

「なんて言ったらいいのかな。はじめまして?ずっと前から見てましたって言ったらキモいよね」
「自分がキモいことしてるって自覚あったんですね…」
「ん?なんか言った?」
「いえなにも」

 脳みそがお花畑の澪は気付いていないだろうがこの結婚は政略結婚であり、果たして相手のほうに澪と良い関係を育もうという気があるかどうか。
 子作りが目的というからには婚礼の儀をあげたらそのまま激しい初夜に突入するということもありえない話ではない。

結婚相手は文字通りオオカミなのだ。つまり、澪が二週間も考えていた慶斗と仲良くなる妄想は叶わない可能性が高い。

「あぁ…緊張してきた。とりあえず、はじめましてって言って僕はあなたのことが大好きですって言おう」

 初対面の男に大好きと言われるのもキモいのでは、と宇伊は思ったがぐっと堪える。十七歳児は傷つきやすいため、的を射ている助言も時には控える必要があるのだ。

「じゃあ、そろそろ僕行くね」

 澪は慣れない衣装に戸惑いながら大神家の侍女達に囲まれて部屋から出て行った。
 それを見送り、手のかかる娘を送り出す親のような気持ちを宇伊は味わった。
 これからしばらくは澪と会えなくなるだろう。一抹の寂しさを感じるながら宇伊は澪を見送った。
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