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焦燥(ミカエルside)
しおりを挟む城から馬に乗って街に出てミカエルは不審な馬車や集団がいないか聞いたが、目撃情報はなかった。
もしかしたら、森の中の細道を通って出ていったのかも知れない。
関所を通りたくない密売人の使う道が深い森の中にはいくつかあった。
見つけてふさいでもまた新しく作られるその道を探すのは容易ではない。
「どこに、どこに行ったんだ…」
ユキをさらった理由はもうだいたい分かっている。
おそらく魔法だ。
先日の大雪で一部の層にはとんでもない魔法使いがいると露見してしまった。
雪の魔法を得意とする家は限られている。そしてユキのあの目立つ容姿は特定されやすい。
ミカエルが攫う立場なら、いち早く国外に出るはずだ…
国外に出る…どのルートで?
考えても分かりそうにもなかった。
そのとき
「ミカエルー!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「レイ!それに兄上!」
レイとフィリップが馬に乗ってミカエルのもとまで来てくれた。
「お前、なにも言わずに出てくな。母さんと父さんがキレてたぞ」
フィリップはすこし咎めるようにそう言った。
「でも…」
「やみくもに探しても見つからない。多分ユキを攫ったやつらは国外に逃げる筈だ」
「でも、どのルートを使うかなんて…」
「あぁ、簡単には分からない。でも、いち早く国外に出たいやつは陸路じゃなくて海路を使うだろ」
「海……港」
「そうだ。ここから一番近い港はユネパだ。多分そこを使う筈だ」
「兄上…」
ミカエルは尊敬の目でフィリップを見つめた。
「そんな目で見るな。地理をすこし知ってれば誰でもわかる」
「でも、僕はわかりませんでした。やっぱり兄上は凄いです」
「と、とにかく、急いでユネパまで行くぞ。船が出されたら手が出せなくなる」
「僕はミレト港の方に行きます」
ということで、ミカエルとフィリップがユネパに、レイは少し遠いミレトに行くことになった。
「絶対見つけようね」
レイはそう言って二、三人の騎士と一緒に去っていった。
ミカエルとフィリップも数人の騎士と共に走り出した。
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