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ついに部屋から…
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「今日がパーティーか…」
ゲームではキャラクターが集まってパーティーが行われる。
(このパーティーを逃したら僕が解放されるチャンスはないかもしれない…)
むしろ、味方だったアザゼアがいなくなる分もっと逃げにくくなるかもしれない。
そう思ったら恐怖がみるみるこみ上げてくる。
なんとしてでも外に出ないと…
そう思って扉に向かった。
(でも、鍵がかかってるから…)
そう思ったが、試しに開けてみると扉はあっさり開いた。
「え…?」
驚くと扉の下に紙が挟まれていた。
『パーティーの会場は一階の広間よ』
アザゼアの筆跡でそう書かれていた。
(ありがとう…アザゼア)
幸い今まで脱出しようとしたことがなかったおかげでジオルドも油断していたのか僕を閉じ込めるのはこの鍵だけだった。
(この日まで我慢してて良かった…)
流石にジオルドも今日はアザゼアのパーティーにいるはず。
ユキに妄執している以外は乙女ゲームの攻略対象になるぐらいはちゃんとした人なのだ。
久しぶりの部屋の外はもううろ覚えで階段の場所すら曖昧だった。
みんなパーティーに参加してるのかユキの部屋のある三階には誰もいない。
(誰かに会う前ににぃさまに出くわしたら最悪だ…)
そんなことが起きないことを願いながらユキは恐る恐る階段を降りた。
一階まで降りてきたら、たくさんの人の声が聞こえてきた。
(本当にパーティーやってるんだ…)
そう思うと急に足がすくんだ。
パーティー会場にはもちろんジオルドもいる。ジオルドが僕を見たら、どうするだろう。
(こわい…こわいっ…)
こんなにたくさんな人に会うのも久しぶりで僕はとてつもなく怖くなってきてしまった。
カーテンの陰に隠れて座り込む。
(やっぱり部屋に戻ろう…部屋にいれば、部屋にいた方が安全なんだ…)
ジオルドに長年吹き込まれた言葉ばかりが頭に浮かぶ。
涙を流しながら僕はカーテンから出た。
するとそこには
「うわっ!なんでそんなところから……アザゼア?」
金髪碧眼の青年、第二皇太子のミカエルがいた。
「ど、どうして泣いてるの?というかアザゼアにそっくりだけど、君はアザゼアの兄弟…?アザゼアには兄しかいないって…」
一瞬、ジオルドに見つかったと思って心臓が止まると思った。
そうではなかった安心からか涙がこぼれてくる。
「っう…う、ふぇえええ」
「えぇ…そんな赤ちゃんみたく泣かないでよ。君いくつ?アザゼアの弟?」
「じゅうはち…」
「アザゼアと同い年!?」
僕は発育が悪いから幼くみられていたようでミカエルは驚いて大きな目をさらに大きくした。
たしかに僕はミカエルよりも身長も体格も劣っていた。
「ええっと…だれか呼んだ方がいいですか?ジオルドさんとか…」
「だめっっ!!!!!……にぃさまは、だめ…」
尋常じゃない僕の様子に何かを察したのか、ミカエルはしゃがみこんで僕の顔を見つめた。
「兄様ってことはやっぱりあなたはアザゼアの兄弟なんですね。今日までどうして外に出てこなかったんですか?」
「部屋から出ちゃダメって…にぃさまが」
ミカエルの表情が固まった。
「僕の手には負えないな…」
ミカエルは周りを見回した。
「とりあえず、僕の馬車が迎えにきているので乗ってください。もう帰るつもりだったので…」
ジオルド様に見つかったらまずいでしょう?
そう言われて、僕は恐怖に震えた。
勝手に外に出て、しかも外部の人間と喋るなんてジオルドが見たらどれほど激昂するか分からない。
「行きましょう」
「はい…」
ミカエルに手を引かれ僕は屋敷を出た。
屋敷の前には立派な馬車が止まっていて、僕はそれに乗せられた。
「ここで待っていて下さい。兄上にどうするか相談してくるので…」
「待って!!!」
また屋敷に戻ろうとするミカエルの袖を握った。
「もし、おにいさんが僕を連れてくの、ダメって言ったら、どうするの…?」
「っ…」
「僕をまた家に戻すの?」
(いやだ、絶対に戻りたくない…一度脱出したことがバレたら、きったにぃさまは僕をもっと厳しく監禁する)
ミカエルは震える僕の手を握って優しく撫でた。
「大丈夫、仮に兄上が反対してもあなたを戻すことはしません。かならず僕が、あなたを助けます」
「本当…?」
「はい。あくまで相談するだけです。だから少しだけ大人しく待っててくれますか?」
僕はこくりと頷いてミカエルの手を離した。
「いい子」
ミカエルは僕の頭を撫でると馬車のドアを閉めて行ってしまった。
ゲームではキャラクターが集まってパーティーが行われる。
(このパーティーを逃したら僕が解放されるチャンスはないかもしれない…)
むしろ、味方だったアザゼアがいなくなる分もっと逃げにくくなるかもしれない。
そう思ったら恐怖がみるみるこみ上げてくる。
なんとしてでも外に出ないと…
そう思って扉に向かった。
(でも、鍵がかかってるから…)
そう思ったが、試しに開けてみると扉はあっさり開いた。
「え…?」
驚くと扉の下に紙が挟まれていた。
『パーティーの会場は一階の広間よ』
アザゼアの筆跡でそう書かれていた。
(ありがとう…アザゼア)
幸い今まで脱出しようとしたことがなかったおかげでジオルドも油断していたのか僕を閉じ込めるのはこの鍵だけだった。
(この日まで我慢してて良かった…)
流石にジオルドも今日はアザゼアのパーティーにいるはず。
ユキに妄執している以外は乙女ゲームの攻略対象になるぐらいはちゃんとした人なのだ。
久しぶりの部屋の外はもううろ覚えで階段の場所すら曖昧だった。
みんなパーティーに参加してるのかユキの部屋のある三階には誰もいない。
(誰かに会う前ににぃさまに出くわしたら最悪だ…)
そんなことが起きないことを願いながらユキは恐る恐る階段を降りた。
一階まで降りてきたら、たくさんの人の声が聞こえてきた。
(本当にパーティーやってるんだ…)
そう思うと急に足がすくんだ。
パーティー会場にはもちろんジオルドもいる。ジオルドが僕を見たら、どうするだろう。
(こわい…こわいっ…)
こんなにたくさんな人に会うのも久しぶりで僕はとてつもなく怖くなってきてしまった。
カーテンの陰に隠れて座り込む。
(やっぱり部屋に戻ろう…部屋にいれば、部屋にいた方が安全なんだ…)
ジオルドに長年吹き込まれた言葉ばかりが頭に浮かぶ。
涙を流しながら僕はカーテンから出た。
するとそこには
「うわっ!なんでそんなところから……アザゼア?」
金髪碧眼の青年、第二皇太子のミカエルがいた。
「ど、どうして泣いてるの?というかアザゼアにそっくりだけど、君はアザゼアの兄弟…?アザゼアには兄しかいないって…」
一瞬、ジオルドに見つかったと思って心臓が止まると思った。
そうではなかった安心からか涙がこぼれてくる。
「っう…う、ふぇえええ」
「えぇ…そんな赤ちゃんみたく泣かないでよ。君いくつ?アザゼアの弟?」
「じゅうはち…」
「アザゼアと同い年!?」
僕は発育が悪いから幼くみられていたようでミカエルは驚いて大きな目をさらに大きくした。
たしかに僕はミカエルよりも身長も体格も劣っていた。
「ええっと…だれか呼んだ方がいいですか?ジオルドさんとか…」
「だめっっ!!!!!……にぃさまは、だめ…」
尋常じゃない僕の様子に何かを察したのか、ミカエルはしゃがみこんで僕の顔を見つめた。
「兄様ってことはやっぱりあなたはアザゼアの兄弟なんですね。今日までどうして外に出てこなかったんですか?」
「部屋から出ちゃダメって…にぃさまが」
ミカエルの表情が固まった。
「僕の手には負えないな…」
ミカエルは周りを見回した。
「とりあえず、僕の馬車が迎えにきているので乗ってください。もう帰るつもりだったので…」
ジオルド様に見つかったらまずいでしょう?
そう言われて、僕は恐怖に震えた。
勝手に外に出て、しかも外部の人間と喋るなんてジオルドが見たらどれほど激昂するか分からない。
「行きましょう」
「はい…」
ミカエルに手を引かれ僕は屋敷を出た。
屋敷の前には立派な馬車が止まっていて、僕はそれに乗せられた。
「ここで待っていて下さい。兄上にどうするか相談してくるので…」
「待って!!!」
また屋敷に戻ろうとするミカエルの袖を握った。
「もし、おにいさんが僕を連れてくの、ダメって言ったら、どうするの…?」
「っ…」
「僕をまた家に戻すの?」
(いやだ、絶対に戻りたくない…一度脱出したことがバレたら、きったにぃさまは僕をもっと厳しく監禁する)
ミカエルは震える僕の手を握って優しく撫でた。
「大丈夫、仮に兄上が反対してもあなたを戻すことはしません。かならず僕が、あなたを助けます」
「本当…?」
「はい。あくまで相談するだけです。だから少しだけ大人しく待っててくれますか?」
僕はこくりと頷いてミカエルの手を離した。
「いい子」
ミカエルは僕の頭を撫でると馬車のドアを閉めて行ってしまった。
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