隠しキャラに転生したけど監禁なんて聞いてない!

かとらり。

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もしかして僕が隠しキャラ?

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 それから時がいくらたっても夢から覚めることはなく、僕は転生したと言うことを認めざるを得なくなった。

 そして、成長して僕はさらに驚くことがあった。

「ユキ、今日はお外で遊びましょ」

 僕に話しかけてくる女の子、僕の双子の姉のアザゼア。
 僕と同じ真っ白な肌と髪、真っ赤な唇と瞳を持つ美少女。

 この子はかつて僕がプレイした乙女ゲーム、『雪の魔法使い』の主人公だ。

「ごめんなさい、ねぇさま。お外は出ちゃだめなの」
「そう…」

 アザゼアは半ば僕の答えが予測できていたようにあっさりと諦めて行ってしまった。

『雪の魔法使い』は前世の僕のお姉ちゃんが買った乙女ゲームで、報酬であるオマケのゲームだけやりたかったらしいお姉ちゃんにお小遣いをもらう代わりに本編だけクリアしたことがある。

 雪の妖精のような美しい容姿のアザゼアが魔法学校で出会うイケメンな男の人たちと恋に落ちるストーリーだった。

 いまこの時点でゲームの世界観やアザゼアの幼少期の思い出はそのままこの世界と同じだ。
 ただひとつ、『僕がいる』という点を除いて。

 ゲームにはアザゼアの兄は出てきたが双子の弟なんて出てこなかった。

(お姉ちゃんはゲームの報酬のストーリーでは隠しキャラが主人公だっていってた…やらせてはもらえなかったけど、もしかしたらその隠しキャラが今の僕…?)

 隠しキャラにふさわしく、僕は家の中に隠されていた。

「ユキはかわいいからね、お外は危ないから出ちゃだめだよ」

 僕はにぃさまにそう言われて屋敷の部屋から出してもらえなかった。

 僕の異母兄のジオルド。
 ゲームでは一応攻略対象だった。
 
 東洋出身の母親に似たのか、僕やアザゼアとは異なる黒い髪に黒い瞳を持つ。
 優しく理知的なお兄さんというキャラ。もちろん実際そうなんだけど…

「ユキ…ほんとにかわいいね。まるで妖精みたいだよ。ユキがお外出たらみんなユキを攫おうとするからね。お家が一番安全だよ。だから絶対でちゃだめだよ」

 毎日こんなことを言いに僕の部屋に来るにぃさま。

(正直ちょっと怖い…)

 ジオルドが僕に話しかける様子は『推し』について語るお姉ちゃんにすごく似ている。早口だし、声がワントーン高くなるし、顔が怖い。

「ゆき、おへやから出ないからだいじょうぶだよ。でも、ねぇさまがお外でいっしょにあそぼって…ゆき、ねぇさまとあそびたい」

「お外で遊ぶ…?アザゼアがそんなことを言ったのか?」

「う、うん…」

 まっくろい目で見つめるジオルドはかなり怖い。

 怯える僕に気づいたのか、ジオルドは取り繕ったように笑顔を浮かべて僕の頭を撫でた。

「そっか…じゃあ、今度アザゼアにお外で遊ぶように誘われたらお外行っても良いよ」

「え…」

 そんなにあっさり許してくれるんだ。
 なんだ、意外に良心的じゃん。
 その時僕はそう思った。




 その日からアザゼアが僕を遊びに誘う時、外に行きたいと言うことは無くなった。
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