21 / 38
二十一話 悲しい
しおりを挟む
寂しい。
カイトくんが居なくなってから僕はずっとその気持ちに支配されていた。
もう作ってくれる人も食べる人もいないから石臼の自動魔法は止めた。
魔法を解除したとき、悲しくて少し泣いた。
そうして、カイトくんがいなくなったことをちょっとしたことで実感しては泣き暮らしていた。
「ノアー…?いいかげん泣き止みなよ」
「う……っく」
ユリが呆れたように僕の背中を撫でた。
「自分で決めたことだろ?」
「そうだけどぉ……ぐす」
「わかった」
ユリは呆れ気味でため息をついた。
「ほんとはこんなことしたくないけど…」
ユリはうにょんとスライムの姿に戻ったかと思うと、また違う姿をとった。
金髪碧眼の長身の青年。
「カイト、くん…」
「ほら、見かけだけだけど…甘えてもいいよ」
いや甘えるって、僕はカイトくんに甘えたくて泣いてるんじゃないし、ただ恋しいだけで…
でもにっこり笑って僕に手を差し伸べるカイトくん(ユリ)の誘惑には抗えなくて、
「うっ…カイトくーんっ」
僕はユリに抱きついた。
「よーしいい子いい子…」
ユリが僕の背中を撫でる。
なんとなく動物扱いされてる気がする。
ユリは匂いまで再現できるらしく抱きついたお腹からはカイトくんのおひさまみたいな匂いがした。
「落ち着いた?」
「うん…正気に戻った」
僕がすっと離れるとと、ユリはにゅるんといつもの姿に戻った。
「また限界になったらこうしてあげるから、いつまでもめそめそするのはもうやめな」
「はーい…」
「あいつ、戻ってくるって言ったんでしょ?」
「絶対戻ってくるとは言ってなかったよ…」
「でも、帰ってくるかもしれないんだからさ、悲しくなったら『きっとカイトくんにまた会える』って思えばいいよ。そもそも元は一人暮らしだったんだから。前みたいにアホみたいな実験してればいいよ」
「アホって思ってたんだ…」
僕は前世の科学の知識と魔法をかけ合わせて新しい魔法を考案しようとしてたのに…(僕は理系だったので、こう言う実験が好きなのである)
「ほら、アホみたいな実験でも、なんかすごいの出来たらカイトが褒めてくれるかもしれないじゃん。だから頑張んな」
「うん…」
こくんと頷いて僕は実験室に向かった。
それからも寂しい日々は続いたけど、泣くことは減った。
ほんのたまに、すごく悲しくなった時はユリにカイトくんになってもらって甘えたけど、なんとか過ごすことができていた。
カイトくんが居なくなってから僕はずっとその気持ちに支配されていた。
もう作ってくれる人も食べる人もいないから石臼の自動魔法は止めた。
魔法を解除したとき、悲しくて少し泣いた。
そうして、カイトくんがいなくなったことをちょっとしたことで実感しては泣き暮らしていた。
「ノアー…?いいかげん泣き止みなよ」
「う……っく」
ユリが呆れたように僕の背中を撫でた。
「自分で決めたことだろ?」
「そうだけどぉ……ぐす」
「わかった」
ユリは呆れ気味でため息をついた。
「ほんとはこんなことしたくないけど…」
ユリはうにょんとスライムの姿に戻ったかと思うと、また違う姿をとった。
金髪碧眼の長身の青年。
「カイト、くん…」
「ほら、見かけだけだけど…甘えてもいいよ」
いや甘えるって、僕はカイトくんに甘えたくて泣いてるんじゃないし、ただ恋しいだけで…
でもにっこり笑って僕に手を差し伸べるカイトくん(ユリ)の誘惑には抗えなくて、
「うっ…カイトくーんっ」
僕はユリに抱きついた。
「よーしいい子いい子…」
ユリが僕の背中を撫でる。
なんとなく動物扱いされてる気がする。
ユリは匂いまで再現できるらしく抱きついたお腹からはカイトくんのおひさまみたいな匂いがした。
「落ち着いた?」
「うん…正気に戻った」
僕がすっと離れるとと、ユリはにゅるんといつもの姿に戻った。
「また限界になったらこうしてあげるから、いつまでもめそめそするのはもうやめな」
「はーい…」
「あいつ、戻ってくるって言ったんでしょ?」
「絶対戻ってくるとは言ってなかったよ…」
「でも、帰ってくるかもしれないんだからさ、悲しくなったら『きっとカイトくんにまた会える』って思えばいいよ。そもそも元は一人暮らしだったんだから。前みたいにアホみたいな実験してればいいよ」
「アホって思ってたんだ…」
僕は前世の科学の知識と魔法をかけ合わせて新しい魔法を考案しようとしてたのに…(僕は理系だったので、こう言う実験が好きなのである)
「ほら、アホみたいな実験でも、なんかすごいの出来たらカイトが褒めてくれるかもしれないじゃん。だから頑張んな」
「うん…」
こくんと頷いて僕は実験室に向かった。
それからも寂しい日々は続いたけど、泣くことは減った。
ほんのたまに、すごく悲しくなった時はユリにカイトくんになってもらって甘えたけど、なんとか過ごすことができていた。
30
お気に入りに追加
540
あなたにおすすめの小説

涯(はて)の楽園
栗木 妙
BL
平民の自分が、この身一つで栄達を望むのであれば、軍に入るのが最も手っ取り早い方法だった。ようやく軍の最高峰である近衛騎士団への入団が叶った矢先に左遷させられてしまった俺の、飛ばされた先は、『軍人の墓場』と名高いカンザリア要塞島。そして、そこを治める総督は、男嫌いと有名な、とんでもない色男で―――。
[架空の世界を舞台にした物語。あくまで恋愛が主軸ですが、シリアス&ダークな要素も有。苦手な方はご注意ください。全体を通して一人称で語られますが、章ごとに視点が変わります。]
※同一世界を舞台にした他関連作品もございます。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/index?tag_id=17966
※当作品は別サイトでも公開しております。
(以後、更新ある場合は↓こちら↓にてさせていただきます)
https://novel18.syosetu.com/n5766bg/
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

釣った魚、逃した魚
円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。
王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。
王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。
護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。
騎士×神子 攻目線
一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。
どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。
ムーンライト様でもアップしています。

寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

宰相閣下の絢爛たる日常
猫宮乾
BL
クロックストーン王国の若き宰相フェルは、眉目秀麗で卓越した頭脳を持っている――と評判だったが、それは全て努力の結果だった! 完璧主義である僕は、魔術の腕も超一流。ということでそれなりに平穏だったはずが、王道勇者が召喚されたことで、大変な事態に……というファンタジーで、宰相総受け方向です。

【完結】水と夢の中の太陽
エウラ
BL
何の前触れもなく異世界の神という存在に異世界転移された、遠藤虹妃。
神が言うには、本来ならこちらの世界で生きるはずが、まれに起こる時空の歪みに巻き込まれて、生まれて間もなく地球に飛ばされたそう。
この世界に戻ったからといって特に使命はなく、神曰く運命を正しただけと。
生まれ持った能力とお詫びの加護を貰って。剣と魔法の世界で目指せスローライフ。
ヤマなしオチなし意味なしで、ほのぼの系を予定。(しかし予定は未定)
長くなりそうなので長編に切り替えます。
今後ややR18な場面が出るかも。どこら辺の描写からアウトなのかちょっと微妙なので、念の為。
読んで下さってありがとうございます。
お気に入り登録嬉しいです。
行き当たりばったり、不定期更新。
一応完結。後日談的なのを何話か投稿予定なのでまだ「連載中」です。
後日譚終わり、完結にしました。
読んで下さってありがとうございます。

彼はやっぱり気づかない!
水場奨
BL
さんざんな1日を終え目を覚ますと、そこは漫画に似た世界だった。
え?もしかして俺、敵側の端役として早々に死ぬやつじゃね?
死亡フラグを回避して普通に暮らしたい主人公が気づかないうちに主人公パートを歩み始めて、周りをかき回しながら生き抜きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる