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十話 小麦探しの旅
しおりを挟む「やっぱ小麦を手に入れなきゃかな?」
この森に不足しているもの。
それは炭水化物だ。
米はもちろん小麦も育てなきゃそうそう手に入らない。
となれば森から出て村で手に入れる必要がある。
「なんか高そうなもの持っていけば交換してもらえるかな?」
「それより食べ物の方がいいんじゃない?」
「…両方持っていくか、一応」
錬金術は習得済みだ。
金を作ってもいいけど、金は成功確率が低いから宝石を作った。
村に出る道中に魔獣を一匹仕留めて、これで食料もゲット。
僕は初めて森から出た。
魔法使いっぽいローブは脱いで、平民っぽい服を身につけたけど、大丈夫かな?
村は畑の中に家がポツンポツンと立っているだけで人気はなかった。
「なんか人気がないね…村ってこんなものなの?」
「さぁ?」
近くの家に近づく。
こんこん、とノックしてみた。
「こんにちはー」
何度かノックしても出てこない。
留守かと思って引き返そうとすると、ゆっくりドアが開いた。
「あ、こんにち…」
「早く入って!」
「え?」
ユリと僕は中の人に引っ張られてピシャリと扉は閉められた。
「あなたたち、人間よね」
僕たちを引っ張り込んだのは中年の女性だった。
「う、うん…」
「よく外に出て無事だったね…」
え、外ってそんなに危ないの?
特に何もなかったけど。
「それに、あんたえらい別嬪さんじゃない。こんな時じゃなくても危ないよ」
「別嬪さんって…」
僕男なんだけど。
解せない気持ちになりながらも僕は目的を果たすことにした。
「あの…僕小麦が欲しくて…いま魔獣と宝石なら持ってるんですけど、交換してもらえます?」
「すまないね、うちも小麦は取られちまったんだ」
「取られたって、だれに?」
「魔物だよ」
魔物?
ゲームでは魔物は村にはいなかったはず。
魔物がいるのは街や城、村以外の荒野とかだけだ。
「うちの村も、魔王が倒されてからちょっとして魔物に襲われ始めたんだよ」
「そんな…」
そういやユリもそんなこと言ってたな。
魔王のいないせいで魔物たちの秩序が崩れて暴れ回ってるんだ。
「ノア、どうするの…?小麦がないんじゃ」
「…魔物から奪い返そう」
「へ?」
ないのならあるところから貰えば良い。
「すみません。小麦を奪った魔物がどこにいるかご存知ですか?」
「え、えぇと、東の山にあいつらのアジトがあるけど…」
「ユリ、行こう」
「はぁ?行くって、俺ら二人でぇ?」
「魔物って言っても所詮魔王の手下でしょ?」
「そうだけど…」
嫌がるユリを連れて僕はそこに向かうことにした。
「すみません、お邪魔しました。その魔獣は置いていくので食べてください」
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