相対間引力 subliminal gravity

黒遠

文字の大きさ
上 下
27 / 28

side B08

しおりを挟む
 四十九日の後くらいから、お互いの家を行き来するようになった。俺の家にエンマが泊まったり、逆だったり。今日はエンマの家。エンマの家に来ると夕食をご馳走してもらえる。餌付けされている。

「普通にご飯炊いたけどよかった?」
「え?逆に他に何あんの?」
「ビーフシチューならパンて人もいるんじゃねーの」
「俺腹に溜まるほうがいい。パンだと食った気しない」
「運動部の男の子って感じだよねほんと。サラダ盛ってくんね?あとご飯自分でよそって」

 エンマは四十九日を終えてから落ち着いた。むしろ前より顔つきが穏やかになった。ドンとたっぷりシチューの入ったボウルが置かれる。肉がごろごろ入っている。かなり嬉しい。

「作りすぎくらい作ってもくおんが来るとすぐなくなる」

 クールに言うけど口元が笑っている。

「だってうまいからさ。作ろうと思うのがスゴいよ。料理に何時間とか、買うわ」
「そういえばカナエがあの話どうなりましたって」
「あーそういえば、斎藤に言っといたからまず学内メールで連絡しろって言っといて。経済の三年の、上が文で下が示すの斎藤。たぶん一人しかいないと思う。わかんなかったら俺にメールして。下の名前忘れた。ショウだかシュウだか」
「今送っとくわ。経済の三年の上が文で下が示すな」
「てか、カナエくんは合コンなんか組まなくても彼女できそうだけどな」
「あいつ、あんな感じだから何やっても女の子に本気にしてもらえないんだと」

 じゃあ合コンでも無理じゃん。いい子なのにな。往々にして、男がいいやつだと思うやつは女の子にはモテない。なぞ。価値基準が違うんだろうな。

 もう少しで夏休みも終わり。来週から後期。もう秋だ。また水曜日だけの行き来になるのかと思うと寂しい。

「大変な夏休みだったなあ」
「まあね、最悪だったな」
「一緒に住んじまうか?」
「なんでそうなんの?ダメでしょ」

 そう言うと思いました。でもエンマは機嫌が良さそうだった。

「学科選択どうすんの?」
「建築に行こうかなと。カナエも一緒」
「すごい。ちゃんと考えてたんだ。あ、おかわりいい?」
「ちょっとは遠慮しろよ!……まあいいや。夏休み長かったなー。確かに散々だったけど、少しはいいこともあったよ」
「そうなん?」


 エンマはまた山盛りのシチューをドンと俺の前に置いて、そう、と笑った。










<to be continued in "practical disguise">
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

嫌がる繊細くんを連続絶頂させる話

てけてとん
BL
同じクラスの人気者な繊細くんの弱みにつけこんで何度も絶頂させる話です。結構鬼畜です。長すぎたので2話に分割しています。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

男の子たちの変態的な日常

M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

孤独な戦い(3)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜

ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。 高校生×中学生。 1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

処理中です...