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side A20
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いつも通りソファに座らず背もたれにして、二人でテレビで流れる深夜映画をうとうとしながら見ていた。深夜映画らしく、ニッチで文学的なやつ。最近では水曜日はどちらかの家に泊まる。今晩はくおんの家。
「寝る?」
「寝ようかな」
「やる?」
「さっきやったじゃん」
「もっかい」
「はは」
くおんは本当に体力あるよね。俺はキスだけしてベッドに先に入る。だいぶ眠かったので目を閉じるとすぐに夢が混ざり始める。遠くに映画のBGMが聞こえる。
ドンドンドンドン!ガチャガチャ!ピンポンピンポン
はっと目が覚める。夢?現実の音?
「ブッチー!開けてー」
誰かの声がする。夢じゃなかったらしい。くおんがドアに近づく気配がする。
「あのな」
「ごめんー、終電なくなって……」
くおんの友達かな。すごく懐かしい感じがした。まだ俺とくおんが映画見るだけだったころはよくこんな感じでいきなり誰かが部屋に飛び込んできていた。
「うちダメだから。水曜ダメだって言ってんじゃん。他行って」
くおんはドアを開けずに話している。向こうの声がだいぶ大きい。酔っているのかも知れない。
「ええー!他のやつの家知らんし。もう水曜じゃないじゃん!木曜になった!入れてくれー」
「屁理屈こねんな。だめなものはだめ。加藤んちは?」
「あいつんち北門の方じゃん。遠い」
「黙れ。騒ぐな。ぜったい開けない」
くおんは言い捨てて電気を全部消し、ベッドに潜り込んできてしまった。しばらくドアには人の気配があったが、やがて足音が遠ざかっていった。
「よかったの?」
「いいよ。こんな時間に来るやつがわりーだろ」
「てか、この家に鍵がかかっていたことに驚いたわ。いつもかけてないよな」
「かけてるよ」
「え?そうなの?」
かかっていた試しがないので、エンマはちょっと信じられなかった。
「俺一回もかかってる所に遭遇したことねーけど」
「そらそうだろ。おまえが来たらかけてんだよ」
「えー……いつから?」
「あ?気づいてなかったのか。付き合い始めてすぐから。あのさー、ちょっと鈍すぎじゃね?」
暗闇の中でくおんの手が俺の髪を見つけ、ひたいを見つけ、唇を見つける。頬にくおんの唇が触れる。少し顔を上げると、唇が重なる。
「お。やる気なった?」
「なんね」
「おまえさ、またちょっと変わったよな。前はやった後すげー不満~て感じだった」
「不満てわけじゃなかったんだけど」
あのころはわからなかったから。
くおんの体から熱量が伝わってくる。ひたいとひたいがくっつく。唇が吸い寄せられる。大きな手が俺の体をなぞり上げる。いつのまにか自分の腕がくおんの背を抱きしめている。体中に熱い血が廻り出す。熱が移ってしまう。細胞のひとつひとつがくおんを希求する。求めている。求められている。ふと、いつかの英語の宿題を思い出す。引き合うちから。
「不満てわけじゃなかったんだけど?」
「……ん?」
「続きは?」
「気になんの?」
「……満足させられねーってつれえのよ」
「……ちがう、あれは」
「……」
「くおんが火星人だったつー話よ」
「は?」
「続きは?」
「寝る?」
「寝ようかな」
「やる?」
「さっきやったじゃん」
「もっかい」
「はは」
くおんは本当に体力あるよね。俺はキスだけしてベッドに先に入る。だいぶ眠かったので目を閉じるとすぐに夢が混ざり始める。遠くに映画のBGMが聞こえる。
ドンドンドンドン!ガチャガチャ!ピンポンピンポン
はっと目が覚める。夢?現実の音?
「ブッチー!開けてー」
誰かの声がする。夢じゃなかったらしい。くおんがドアに近づく気配がする。
「あのな」
「ごめんー、終電なくなって……」
くおんの友達かな。すごく懐かしい感じがした。まだ俺とくおんが映画見るだけだったころはよくこんな感じでいきなり誰かが部屋に飛び込んできていた。
「うちダメだから。水曜ダメだって言ってんじゃん。他行って」
くおんはドアを開けずに話している。向こうの声がだいぶ大きい。酔っているのかも知れない。
「ええー!他のやつの家知らんし。もう水曜じゃないじゃん!木曜になった!入れてくれー」
「屁理屈こねんな。だめなものはだめ。加藤んちは?」
「あいつんち北門の方じゃん。遠い」
「黙れ。騒ぐな。ぜったい開けない」
くおんは言い捨てて電気を全部消し、ベッドに潜り込んできてしまった。しばらくドアには人の気配があったが、やがて足音が遠ざかっていった。
「よかったの?」
「いいよ。こんな時間に来るやつがわりーだろ」
「てか、この家に鍵がかかっていたことに驚いたわ。いつもかけてないよな」
「かけてるよ」
「え?そうなの?」
かかっていた試しがないので、エンマはちょっと信じられなかった。
「俺一回もかかってる所に遭遇したことねーけど」
「そらそうだろ。おまえが来たらかけてんだよ」
「えー……いつから?」
「あ?気づいてなかったのか。付き合い始めてすぐから。あのさー、ちょっと鈍すぎじゃね?」
暗闇の中でくおんの手が俺の髪を見つけ、ひたいを見つけ、唇を見つける。頬にくおんの唇が触れる。少し顔を上げると、唇が重なる。
「お。やる気なった?」
「なんね」
「おまえさ、またちょっと変わったよな。前はやった後すげー不満~て感じだった」
「不満てわけじゃなかったんだけど」
あのころはわからなかったから。
くおんの体から熱量が伝わってくる。ひたいとひたいがくっつく。唇が吸い寄せられる。大きな手が俺の体をなぞり上げる。いつのまにか自分の腕がくおんの背を抱きしめている。体中に熱い血が廻り出す。熱が移ってしまう。細胞のひとつひとつがくおんを希求する。求めている。求められている。ふと、いつかの英語の宿題を思い出す。引き合うちから。
「不満てわけじゃなかったんだけど?」
「……ん?」
「続きは?」
「気になんの?」
「……満足させられねーってつれえのよ」
「……ちがう、あれは」
「……」
「くおんが火星人だったつー話よ」
「は?」
「続きは?」
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