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side A07
しおりを挟む水曜日がやってきた。
ちゅ。ちゅ。
今日は部屋に入るなり、くおんは少しだけ前髪を切った俺をベッドに押し倒してキスをしてきた。
「はっ……」
「前髪切ったな」
「んっ……」
くおんの長い指が、切りたての髪を梳く。
鼻先まであった前髪を目にかかるくらいまで切っただけなのに、遮るものがなくなったせいで、余計にくおんの目がくっきりと見える。くおんが自分の唇をぺろりと舐める。そのさまが妙に生々しくて、俺はなんだか怖くなる。
「俺さ、おまえとならできる気がすんだわ。やっていいか?」
「……え?」
「セックスしていいかって言ってんだよ。服脱げ」
かなりぶっきら棒に言いながら、くおんはいきなり自分の上着を脱ぎ、パンと音を立てて床に捨てた。現れた上半身はむらなく綺麗な小麦色で、筋肉質な体躯がまるで彫刻のようだった。
「……ちょ…ま……」
くおんはエンマの返答を全く待たなかった。エンマを押し倒し、首筋や耳たぶを甘噛みする。
「うぁ……」
服の上からすっかり反応したものを撫であげられ、腰をがっしりと掴まれる。体が敏感になっていて、くおんの手が触れた場所がゾクゾクする。
「だ……」
くおんの手はエンマの体をまさぐるのをやめない。エンマの着ていたグレーのTシャツの中に潜り込むと、腰のあたりから脇腹、胸、背中から肩甲骨へとなぞり上げ、いつの間にか片袖を抜いている。
唇がエンマの白い腹を、薄い胸をたどる。すごい。エンマは思わずくおんの頭を抱く。
なんて気持ちいいんだろう。
くおんの肌は目の細かい天鵞絨のようで、なめらかでとても温かい。この気持ち良さをずっと味わっていたい……。
そしてその手は今度はジーンズの前ボタンにかかった。…いけない!
とっさにその手首を掴んで必死に首を横に振ると、くおんははたと止まった。
「あ。だめか?」
「だめ!いきなり言われてもだめだよ……」
「なんで?おまえも勃ってんじゃん!あ、萎えたか?」
「……」
「したくなかったか?まだしたくない?そういうことはしたくない?どっち」
「……」
「この間の、二人でやったのも嫌だったか?」
「嫌じゃなかった!」
嫌じゃなかったから、くおんが言うから前髪だって切った。でも、
「今日はむり……」
くおんは困ったように身を起こし、ベッドの上であぐらをかいた。何をどこまで説明すればいいのか、エンマも困ってしまった。
「あの……俺もよく知らなかったんだけど、男同士でやるのって、色々準備しないといけなくて……」
くおんの目が真っ直ぐエンマの目を見ている。エンマはそれを受け止められなくて、ふっと視線を下げた。
「来週、来週やるなら、準備してくるから……」
やっと言葉を絞り出すと、くおんがふうっとため息をつくのが聞こえた。エンマはそのため息に責められているような気がして、
「ごめん」
くおんの部屋から逃げた。
……あんな気持ち良さそうにされるがままになってて……
肝心なところで拒否してしまった。
エンマは家の自室で頭を抱えていた。盛り上げるだけ盛り上げて、つっぱねて、ちゃんと話もせずに逃げてきてしまった。くおんは俺の性癖につきあってくれているのに。
来週、とは言ってみたものの、くおんの気持ちが折れてしまっていたらどうしよう。あのため息が頭の中でこだました。
「あーあ……」
こんな日こそ、前髪に頼りたかった。
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