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07 ドミニオン
16 Vesta (翌朝)
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目を覚ますと、一人だった。がらんとした豪華な部屋。一瞬自分がどこにいるのかわからなくなる。
「………バル?」
スイートルームの主寝室だ。俺、どうしたんだっけ? ブリングもない。何時?
リビングに行くと、バルが朝日の街を背にしてブリングを見ていた。もう着替えている。
「おはよう。よく寝てたな」
「……今何時?」
「7時。すぐ着替えろよ。8時には出ないと。報告書は後でもいいけど、持ち出し品は今日返さないとな。オートキャリアはホテルに常駐してるみたいだ」
「えー!」
「えーじゃない。4歳児。ほら動けよ。飯食いに行くぞ」
「なんで起こしてくれなかったの!」
「そろそろ起こそうと思ってた」
「そうじゃなくて……」
せっかくこんなホテルで。せっかくやっとバルと二人きりで。せっかくドミが気を回してくれたのに………泣きたいくらいだった。ブリングに目を落とす。メッセージが来ている。ドミから。また泣きたくなる。なんで眠りこんじゃったんだろう………。
「あのな……そんなに落ち込むなよ。疲れてたんだろ?」
バルがくしゃっと俺の群青色になった髪を撫でた。疲れてたのかな。この一週間、非日常的ではあったけど。
「何がしたかった?」
「………」
バルにぎゅうと抱きつく。二人で過ごしたかった。
ずっと一週間ドミや他の人と一緒で土日もなかったから、やっと二人になって、ゆっくり過ごしたかった。ブリングやブザーの音を気にしないでその長い指で触れて欲しかった。別にここじゃなくてもいい。久しぶりに二人でいたかった。
「……今日は定時であがる! 明日代休取る! バルもだからな!」
「はは。わかったわかった。じゃあ今日は真面目に仕事しねえとな」
バルはちょっと屈むようにして俺にキスしてくれた。
「………バル?」
スイートルームの主寝室だ。俺、どうしたんだっけ? ブリングもない。何時?
リビングに行くと、バルが朝日の街を背にしてブリングを見ていた。もう着替えている。
「おはよう。よく寝てたな」
「……今何時?」
「7時。すぐ着替えろよ。8時には出ないと。報告書は後でもいいけど、持ち出し品は今日返さないとな。オートキャリアはホテルに常駐してるみたいだ」
「えー!」
「えーじゃない。4歳児。ほら動けよ。飯食いに行くぞ」
「なんで起こしてくれなかったの!」
「そろそろ起こそうと思ってた」
「そうじゃなくて……」
せっかくこんなホテルで。せっかくやっとバルと二人きりで。せっかくドミが気を回してくれたのに………泣きたいくらいだった。ブリングに目を落とす。メッセージが来ている。ドミから。また泣きたくなる。なんで眠りこんじゃったんだろう………。
「あのな……そんなに落ち込むなよ。疲れてたんだろ?」
バルがくしゃっと俺の群青色になった髪を撫でた。疲れてたのかな。この一週間、非日常的ではあったけど。
「何がしたかった?」
「………」
バルにぎゅうと抱きつく。二人で過ごしたかった。
ずっと一週間ドミや他の人と一緒で土日もなかったから、やっと二人になって、ゆっくり過ごしたかった。ブリングやブザーの音を気にしないでその長い指で触れて欲しかった。別にここじゃなくてもいい。久しぶりに二人でいたかった。
「……今日は定時であがる! 明日代休取る! バルもだからな!」
「はは。わかったわかった。じゃあ今日は真面目に仕事しねえとな」
バルはちょっと屈むようにして俺にキスしてくれた。
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