121 / 229
04 (e)VAC(u)ATION
05 Vesta (ひそひそ話)
しおりを挟む
翌日のことだった。一人でこつこつルーティンのコールをしていた。一人では怪しくても訪問ができないから、変だなと思うやつはメモしてキープしておく。ザムザからコールが来た。
『バルトロイは? 何度か掛けてるんだけど出ない』
「バルなら昨日から休暇を取ってるよ。二週間」
『昨日から? 間が悪いってか……』
画面の向こうでザムザが顔を顰めた。
「何かあった?」
『……あのな、まだオープンになってないから誰にも言うなよ。遅かれ早かれお前にも聞き取りが入ると思うけど、昨日俳優のデイノス・フォルトバーグが殺されたんだ。殺人現場に犯人からの殴り書きがあって』
ピコっと画像が飛んできた。開いてみる。白い壁に黒い粗い文字。
TRY TO KILL ME I'M HYBRID B
「なに、これ」
『だから。犯人からの……なんだろうな。俺たち捕まえる側に対するコメントなんだろうな。このせいでハイブリッドのやつらに容疑がかかってる。身長は185から190。バルトロイもそれくらいあるだろ。イニシアルもBだし』
「……これ、何時?」
『夜中さ。しかもだぜ、犯人は俺たちの関係者かってくらい証拠を残さなかった。考えてみな、世界的に有名な俳優だ。防犯はバリバリ。カメラもセキュリティシステムもついてた。それなのに身長しかわからない』
「バルはこんなことしない」
『そうだろうな。あいつならもっとましなことをすると思うよ、俺だって。でも、捜査局関係でハイブリッドで背が高くてBはあいつくらいだ……。
ヴェスタ、この話だってほんとはお前には話せないんだ。証拠隠滅の恐れがあるんだから。話してんのはバルトロイがやるはずないって思ってるからだ』
「そんなの……身長の高いハイブリッドなんて、そんなに珍しくないだろ?」
『めちゃめちゃ珍しいんだ、ヴェスタ。いいか、ハイブリッドってのは、三十年以上前に五年間だけやった遺伝子操作治療を受けたやつの子どもだけ。この治療はクソみたいに高くて成功率は低かった。この街の人口知ってるか?』
「124万人?」
『あたり。遺伝子治療を受けた人間は五年で600人前後と言われてる。そのうちバルトロイみたいにちゃんと遺伝子操作が発現するのは三割』
「二百人?」
『そいつらが仮にみんな一人ずつ子どもを作ったとする。でもやっぱりみんなが再生能力を持つわけじゃない。半分だったとすると』
「百人……」
『124万分の100だ。パーセンテージで言うと?』
「……0.008パーセント」
『ヴェスタ、俺は29年生きてきてハイブリッドに生まれて初めて会ったんだよ。バルトロイに。そういう確率なんだ』
「………でもバルじゃない」
『だからさ……昨日も普通に仕事してたよって言ってもらえたらと思ったのに……変なメールがくるから』
「何それ」
『俺はしばらくいなくなるからヴェスタに何かあったら頼むって』
どきっとした。言ってた。ザムザとアラスターにも頼んでおくけどって。ほんとだったんだ。
「休暇は……二週間だよ。ただの休暇! すぐ連絡もつくし戻ってくるよ」
『バルトロイから連絡があったら俺にも知らせてくれ。念のため。この案件は俺たちのコンビのじゃない。捜査局のトップのコンビが受けてる。殺されたのがVIPだから。バルトロイは先月入院したせいで病院にデータがあったし、一番に目をつけられてるよ。さっさと疑いを晴らせ』
ピンとまた何かが俺の端末に届いた。ザムザがバルからのメールを転送してくれたものだった。開いてみた。
「しばらくいなくなるからヴェスタが困っているようなら助けてやってくれ」。
バルがいなくて困ってる。すごく。
『バルトロイは? 何度か掛けてるんだけど出ない』
「バルなら昨日から休暇を取ってるよ。二週間」
『昨日から? 間が悪いってか……』
画面の向こうでザムザが顔を顰めた。
「何かあった?」
『……あのな、まだオープンになってないから誰にも言うなよ。遅かれ早かれお前にも聞き取りが入ると思うけど、昨日俳優のデイノス・フォルトバーグが殺されたんだ。殺人現場に犯人からの殴り書きがあって』
ピコっと画像が飛んできた。開いてみる。白い壁に黒い粗い文字。
TRY TO KILL ME I'M HYBRID B
「なに、これ」
『だから。犯人からの……なんだろうな。俺たち捕まえる側に対するコメントなんだろうな。このせいでハイブリッドのやつらに容疑がかかってる。身長は185から190。バルトロイもそれくらいあるだろ。イニシアルもBだし』
「……これ、何時?」
『夜中さ。しかもだぜ、犯人は俺たちの関係者かってくらい証拠を残さなかった。考えてみな、世界的に有名な俳優だ。防犯はバリバリ。カメラもセキュリティシステムもついてた。それなのに身長しかわからない』
「バルはこんなことしない」
『そうだろうな。あいつならもっとましなことをすると思うよ、俺だって。でも、捜査局関係でハイブリッドで背が高くてBはあいつくらいだ……。
ヴェスタ、この話だってほんとはお前には話せないんだ。証拠隠滅の恐れがあるんだから。話してんのはバルトロイがやるはずないって思ってるからだ』
「そんなの……身長の高いハイブリッドなんて、そんなに珍しくないだろ?」
『めちゃめちゃ珍しいんだ、ヴェスタ。いいか、ハイブリッドってのは、三十年以上前に五年間だけやった遺伝子操作治療を受けたやつの子どもだけ。この治療はクソみたいに高くて成功率は低かった。この街の人口知ってるか?』
「124万人?」
『あたり。遺伝子治療を受けた人間は五年で600人前後と言われてる。そのうちバルトロイみたいにちゃんと遺伝子操作が発現するのは三割』
「二百人?」
『そいつらが仮にみんな一人ずつ子どもを作ったとする。でもやっぱりみんなが再生能力を持つわけじゃない。半分だったとすると』
「百人……」
『124万分の100だ。パーセンテージで言うと?』
「……0.008パーセント」
『ヴェスタ、俺は29年生きてきてハイブリッドに生まれて初めて会ったんだよ。バルトロイに。そういう確率なんだ』
「………でもバルじゃない」
『だからさ……昨日も普通に仕事してたよって言ってもらえたらと思ったのに……変なメールがくるから』
「何それ」
『俺はしばらくいなくなるからヴェスタに何かあったら頼むって』
どきっとした。言ってた。ザムザとアラスターにも頼んでおくけどって。ほんとだったんだ。
「休暇は……二週間だよ。ただの休暇! すぐ連絡もつくし戻ってくるよ」
『バルトロイから連絡があったら俺にも知らせてくれ。念のため。この案件は俺たちのコンビのじゃない。捜査局のトップのコンビが受けてる。殺されたのがVIPだから。バルトロイは先月入院したせいで病院にデータがあったし、一番に目をつけられてるよ。さっさと疑いを晴らせ』
ピンとまた何かが俺の端末に届いた。ザムザがバルからのメールを転送してくれたものだった。開いてみた。
「しばらくいなくなるからヴェスタが困っているようなら助けてやってくれ」。
バルがいなくて困ってる。すごく。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
両腕のない義弟との性事情
papporopueeee
BL
父子家庭で育ったケンと、母子家庭で育ったカオル。
親の再婚によりふたりは義兄弟となったが、
交通事故により両親とカオルの両腕が失われてしまう。
ケンは両腕を失ったカオルの世話を始めるが、
思春期であるカオルは性介助を求めていて……。
潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは
マフィアのボスの愛人まで潜入していた。
だがある日、それがボスにバレて、
執着監禁されちゃって、
幸せになっちゃう話
少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に
メロメロに溺愛されちゃう。
そんなハッピー寄りなティーストです!
▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、
雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです!
_____
▶︎タイトルそのうち変えます
2022/05/16変更!
拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です
2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。
▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎
_____
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる