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03 トライアル (3)Vesta & Baltroy
27 Vesta (真実)
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当直明けの土曜日は最悪だった。アラスターの家に帰って、シャワーを浴びて眠りたくてそのままシャワールームに入ったら、アラスターから引っ張り出されてベッドに連れて行かれた。眠くて抵抗する気も起きなかった。
恒例の当直明けの身体検査。からのセックス。もう途中から半分寝ていた。こんな俺を抱いて楽しい?
「眠いんだよ、アラスター」
「わかってる。でも……」
金曜日の当直は、翌日が休みだから家に帰ったら眠ればいいと思って、ほとんど寝なかった。バルが起きたらと思うと眠れなかった。
バルは二時半に一度目を覚まして、俺に寝ろと言ったけどまだ眠そうで、当直室のベッドで寝るふりをして後で様子を見たらやっぱりデスクでうとうとしていた。朝までなんとなくそのまま隣のデスクに座っていた。
「不安なんだ」
「…………不安?」
肩を痛いくらい噛まれる。でも反応できないくらい眠い。入れていいから、眠らせて。
「君がバルと二人きりで……」
「だって……仕事だろ。バディなんだから…」
「だって君、バルが好きだよね?」
好きだよ。でも違うんだ。バルのことは。
「そういう……んじゃ、ない」
「俺の思い違いなのかな?」
ずんと奥まで入れられる。さすがに体が反応する。
「バルと一緒……だとね、君の……」
髪をかき上げられる。何色?
「君の……髪が、緑に変わる…んだ。いつも」
そうかもしれない。だってバルと一緒にいるのは……。
「バルの……名前を出すと……君の、中が動くの……知ってた?」
「そんなの………」
何も考えられない。寝てない脳みそがオーバーヒートしている。
「君は残酷だね……」
中からアラスターのが溢れてくる。自分がただの穴になったみたい。体が重い。でもシャワーを浴びなくちゃ。ベッドがひどいことになる。
なんとか体を起こしてシャワールームに入る。今度は引き戻されない。なんとなくわかった。アラスターがバルと二人で過ごしてきた俺の身体検査をするのは、バルと俺がやってないか確認してたんだ。
「ふふ……」
涙と笑いが一度に出てきた。バルは俺なんか抱かないよ。ただ俺がバルを好きなだけ。どうしようもなく。海を見てわくわくするみたいに、空を見て雲や星に胸打たれるみたいに。
アラスターのことも大好きだよ。それは嘘じゃない。一緒にいて楽しい。見たことのないものを見せてくれる。俺のことをまるで壊れ物みたいに大切にしてくれる。俺もアラスターを傷つけたくない。でも、バルを好きでいるのをやめろと言われたら、できない。
だってそれはやってみたもん。アラスターと付き合うって決めた時からずっと。
無理だ。
わかったのは、俺にはバルを友達くらいにしか好きにならないなんてできないってことだけ。
本当は気づいていた。アラスターの家を出て、局のエントランスでアラスターと別れて、捜査官のオフィスに入って。そしてバルの背中を見ると、髪が緑になる自分に。バルがまだ来ていなくても、入り口にカードをかざす姿を見つけると髪の色が変わってしまう自分に。止められない。隠すことしかできない。
シャワールームを出る。少し頭がすっきりした。ベッドにアラスターが腰掛けて俯いていた。
「ごめんね、ヴェスタ」
「そんなに不安? バルは俺のことなんか見てないよ」
「でも君は見てる」
「……そうだね」
アラスターは少し顔を上げた。驚いたようだった。俺が認めたことがなかったからだ。
「バルを見ないことなんかできない。バルは特別な人だよ。ねえ、神様みたいなもの。触れられないんだ。崇拝してるって言い方が一番いいかもしれない」
これがアラスターを傷つけるのはわかってる。でもバルを好きなのは変えられない。
「アラスターとは違う。俺が寝るのはアラスターだけだよ。それじゃだめ?」
アラスターは隣に腰掛けた俺の頬を少し触った。泣きそうな顔をしていた。ごめんね。
「それが本当の君の気持ち?」
頷くことしかできない。
「俺はじゃあ、ずっとバルに嫉妬しなきゃいけないのかな? 敵わない? 永遠に?」
「……わからないけど、アラスターのことは好きだよ」
「そういうのやめよう? ヴェスタ。俺は君が世界で一番好きなんだ。愛してる。中途半端な気持ちだけもらうなんて嫌だ」
「そう……」
そしたら。
「ごめん、アラスター。そうならもう、やめよう」
「やめようって言うのは、別れようって事?」
アラスターの目からつうっと涙が流れた。
「そう……」
この人を泣かせたくないと思っていた。今までこの人ほど俺を愛してくれた人はいない。でも今のままの俺は無限にこの人を傷つける。そして変われない。
「………君が……俺のレプリカントなら良かった……」
「………バルがオーナーかどうかはあんまり関係ないんだ……」
「それなのに……バルが特別なの…?」
「……うん」
「……そうか……」
出ていかなきゃいけない。どこにも行く当てはない。とにかく出るだけ出よう。荷物をまとめなくちゃ。
「ごめんね、デスクは少し置かせてもらっていい?」
「待って! ヴェスタ。待ってくれ……」
アラスターの手が、俺の手首を掴んだ。震えている。
「わかった。君がバルを好きでも……それでも…いい………」
アラスターの目から涙がぽろぽろと落ちこぼれる。
「そんな……急に君を……嫌いになれない……愛してる……バルが…好きな…君でいい……愛してる………行かないで……」
「アラスター……」
こんな俺の何を愛してくれるの? ごめん。ごめんなさい。
恒例の当直明けの身体検査。からのセックス。もう途中から半分寝ていた。こんな俺を抱いて楽しい?
「眠いんだよ、アラスター」
「わかってる。でも……」
金曜日の当直は、翌日が休みだから家に帰ったら眠ればいいと思って、ほとんど寝なかった。バルが起きたらと思うと眠れなかった。
バルは二時半に一度目を覚まして、俺に寝ろと言ったけどまだ眠そうで、当直室のベッドで寝るふりをして後で様子を見たらやっぱりデスクでうとうとしていた。朝までなんとなくそのまま隣のデスクに座っていた。
「不安なんだ」
「…………不安?」
肩を痛いくらい噛まれる。でも反応できないくらい眠い。入れていいから、眠らせて。
「君がバルと二人きりで……」
「だって……仕事だろ。バディなんだから…」
「だって君、バルが好きだよね?」
好きだよ。でも違うんだ。バルのことは。
「そういう……んじゃ、ない」
「俺の思い違いなのかな?」
ずんと奥まで入れられる。さすがに体が反応する。
「バルと一緒……だとね、君の……」
髪をかき上げられる。何色?
「君の……髪が、緑に変わる…んだ。いつも」
そうかもしれない。だってバルと一緒にいるのは……。
「バルの……名前を出すと……君の、中が動くの……知ってた?」
「そんなの………」
何も考えられない。寝てない脳みそがオーバーヒートしている。
「君は残酷だね……」
中からアラスターのが溢れてくる。自分がただの穴になったみたい。体が重い。でもシャワーを浴びなくちゃ。ベッドがひどいことになる。
なんとか体を起こしてシャワールームに入る。今度は引き戻されない。なんとなくわかった。アラスターがバルと二人で過ごしてきた俺の身体検査をするのは、バルと俺がやってないか確認してたんだ。
「ふふ……」
涙と笑いが一度に出てきた。バルは俺なんか抱かないよ。ただ俺がバルを好きなだけ。どうしようもなく。海を見てわくわくするみたいに、空を見て雲や星に胸打たれるみたいに。
アラスターのことも大好きだよ。それは嘘じゃない。一緒にいて楽しい。見たことのないものを見せてくれる。俺のことをまるで壊れ物みたいに大切にしてくれる。俺もアラスターを傷つけたくない。でも、バルを好きでいるのをやめろと言われたら、できない。
だってそれはやってみたもん。アラスターと付き合うって決めた時からずっと。
無理だ。
わかったのは、俺にはバルを友達くらいにしか好きにならないなんてできないってことだけ。
本当は気づいていた。アラスターの家を出て、局のエントランスでアラスターと別れて、捜査官のオフィスに入って。そしてバルの背中を見ると、髪が緑になる自分に。バルがまだ来ていなくても、入り口にカードをかざす姿を見つけると髪の色が変わってしまう自分に。止められない。隠すことしかできない。
シャワールームを出る。少し頭がすっきりした。ベッドにアラスターが腰掛けて俯いていた。
「ごめんね、ヴェスタ」
「そんなに不安? バルは俺のことなんか見てないよ」
「でも君は見てる」
「……そうだね」
アラスターは少し顔を上げた。驚いたようだった。俺が認めたことがなかったからだ。
「バルを見ないことなんかできない。バルは特別な人だよ。ねえ、神様みたいなもの。触れられないんだ。崇拝してるって言い方が一番いいかもしれない」
これがアラスターを傷つけるのはわかってる。でもバルを好きなのは変えられない。
「アラスターとは違う。俺が寝るのはアラスターだけだよ。それじゃだめ?」
アラスターは隣に腰掛けた俺の頬を少し触った。泣きそうな顔をしていた。ごめんね。
「それが本当の君の気持ち?」
頷くことしかできない。
「俺はじゃあ、ずっとバルに嫉妬しなきゃいけないのかな? 敵わない? 永遠に?」
「……わからないけど、アラスターのことは好きだよ」
「そういうのやめよう? ヴェスタ。俺は君が世界で一番好きなんだ。愛してる。中途半端な気持ちだけもらうなんて嫌だ」
「そう……」
そしたら。
「ごめん、アラスター。そうならもう、やめよう」
「やめようって言うのは、別れようって事?」
アラスターの目からつうっと涙が流れた。
「そう……」
この人を泣かせたくないと思っていた。今までこの人ほど俺を愛してくれた人はいない。でも今のままの俺は無限にこの人を傷つける。そして変われない。
「………君が……俺のレプリカントなら良かった……」
「………バルがオーナーかどうかはあんまり関係ないんだ……」
「それなのに……バルが特別なの…?」
「……うん」
「……そうか……」
出ていかなきゃいけない。どこにも行く当てはない。とにかく出るだけ出よう。荷物をまとめなくちゃ。
「ごめんね、デスクは少し置かせてもらっていい?」
「待って! ヴェスタ。待ってくれ……」
アラスターの手が、俺の手首を掴んだ。震えている。
「わかった。君がバルを好きでも……それでも…いい………」
アラスターの目から涙がぽろぽろと落ちこぼれる。
「そんな……急に君を……嫌いになれない……愛してる……バルが…好きな…君でいい……愛してる………行かないで……」
「アラスター……」
こんな俺の何を愛してくれるの? ごめん。ごめんなさい。
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