Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

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03 トライアル (3)Vesta & Baltroy

16 Baltroy (後悔のかけら)

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 思わず抱き寄せてしまった。本当に、思わず。

 でもハグにすらなってない。ちょっと頭を、というか髪を胸のところにくっつけただけ。しかも俺今女だし。

 リビングのテーブルで頬杖をついた。

「何かありますか」
「ない」
「まだ今日の分の性転換薬を飲んでませんが」
「先に言えよ」

 前の当直の時も言っていたことだった。一人になれない。アラスターの視線が気になる。前は贅沢言うなとだけ言った。うちで一人の部屋があったから、俺がほったらかして相手をしなかったから、一人でいるのに慣れてしまったんだと思った。

 それは二人の生活に慣れないといけないんじゃないか。息抜きとか言ってる場合じゃない。息抜きするには早すぎるだろ。同棲して三ヶ月で。

 そうだ。あの時は「息抜き」だったんだ。まだ切羽詰まった感じじゃなかった。今日のはちょっと、ヴェスタがすごく疲れてるみたいに見えた。すごく言葉を選んでいた。

 ──少し、贅沢なのはわかってるんだけど、少しだけ……

 少しだけ。アラスターも少し病的になっていた。二人ともちゃんと話せばいいのにな。お互いを傷つけたくないばっかりに、何も言えなくなってる感じがする。

 ヴェスタに関しては俺のせいかも知れない。俺がいつもやりたいようにやって、ヴェスタに何も言わせなかったから。ヴェスタはいつも言葉以外のもので俺にわからせるしかなかった。話し合い方を教えなかった。

 ごめん。

 今更、後悔することが沢山ある。お前に関しては。







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