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03 トライアル (3)Vesta & Baltroy
12 Vesta (不動)
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翌週だった。出勤してあれっと思った。バルの背中がいつもと違う。
「バル? なんか……」
「言うなよ」
ぱっと振り向いたバルは、すごく綺麗だった。線が細くなった感じがする。女性だ!
「え! 先週から?」
「うん。代謝がいいからなのかものすごく効きがよくて」
髪が短いけど、そのせいで余計にモデルか何かに見える。
「けつと太ももが太くなっちまって。パツパツだ」
殺された人たちと同じ系統の美人。
「もうステーションに立てるんじゃない?」
「ザムザたちの方の手配が間に合ってない。俺がどこかに勤めてて郊外に一人暮らししてるようにしないといけないから。郊外のアパートは用意したらしいけど、働いてるように見せかけるための協力企業がまだみつかってない」
こっちはこっちで、いつも通り手間はかかるけど着実なやり方で進めていた。放課後の時間帯から殺害の時刻までのステーションのカメラの録画を一つ一つ見て、怪しいやつがいないか、被害者の後をつけてるやつがいないか確認する。被害者が映っているのを重点的に。でも数が多いから、かなり時間がかかっていた。
「二人目以降だ。一人目はいつから目を付けてたのかわからないけど、二人目以降は殺した後から目をつけたと思う」
ずっとステーションにいる生徒は何人か見つけた。17歳以下に見えるごろつきも。こいつらの中に?
「荷物が多い子?」
「いや。犯人は被害者の家を知ってるんだろ。殺す日は一度家に戻って、荷物を持ってから被害者の家で待ち伏せじゃないかな。尾行すると目立つしバレるかも知れない」
女性化したバルをみんなが入れ替わり立ち替わり見にくる。そりゃそうだ。俺もつい見てしまう。
「ようバル! バルトロネちゃんかな!」
「うるせえ死ね」
「バル! どうしたの?」
「仕事だ」
バルはびくともしないであしらっていく。強い……。
「ごろつきは外していいと思う。こういうやつらはこんなに計画的にしない」
「絞れたとは言い切れないけど……」
「まあ少しは、かな」
「バル」
極め付けはこれだった。
「アラスター」
アラスターは振り返ったバルを見て腹を抱えて笑った。
「すごい! すっかり美女になっちゃって……」
「うるっせえなあ」
仕方ないよね。ほんと。こんなのたぶんもうないもん。
家に帰るとアラスターは上機嫌だった。
「バルはもうすっかり女の人みたいだったね」
「うん。先週から飲み始めたんだけど、変わるのが早くて。やっぱり体質のせいかな?」
「そうなんだろうね。いやあ、パイロットたちの間でも噂になってたよ」
「だろうね! みんな見に来たよ。ユミンなんて画像撮って行った」
あの変化の速さは本人も予想外だったみたいだ。でもバルは背筋を伸ばして堂々と振る舞うからかっこいい。
「水曜日の当直も安心だね」
「どうして?」
「何でもないよ」
「バル? なんか……」
「言うなよ」
ぱっと振り向いたバルは、すごく綺麗だった。線が細くなった感じがする。女性だ!
「え! 先週から?」
「うん。代謝がいいからなのかものすごく効きがよくて」
髪が短いけど、そのせいで余計にモデルか何かに見える。
「けつと太ももが太くなっちまって。パツパツだ」
殺された人たちと同じ系統の美人。
「もうステーションに立てるんじゃない?」
「ザムザたちの方の手配が間に合ってない。俺がどこかに勤めてて郊外に一人暮らししてるようにしないといけないから。郊外のアパートは用意したらしいけど、働いてるように見せかけるための協力企業がまだみつかってない」
こっちはこっちで、いつも通り手間はかかるけど着実なやり方で進めていた。放課後の時間帯から殺害の時刻までのステーションのカメラの録画を一つ一つ見て、怪しいやつがいないか、被害者の後をつけてるやつがいないか確認する。被害者が映っているのを重点的に。でも数が多いから、かなり時間がかかっていた。
「二人目以降だ。一人目はいつから目を付けてたのかわからないけど、二人目以降は殺した後から目をつけたと思う」
ずっとステーションにいる生徒は何人か見つけた。17歳以下に見えるごろつきも。こいつらの中に?
「荷物が多い子?」
「いや。犯人は被害者の家を知ってるんだろ。殺す日は一度家に戻って、荷物を持ってから被害者の家で待ち伏せじゃないかな。尾行すると目立つしバレるかも知れない」
女性化したバルをみんなが入れ替わり立ち替わり見にくる。そりゃそうだ。俺もつい見てしまう。
「ようバル! バルトロネちゃんかな!」
「うるせえ死ね」
「バル! どうしたの?」
「仕事だ」
バルはびくともしないであしらっていく。強い……。
「ごろつきは外していいと思う。こういうやつらはこんなに計画的にしない」
「絞れたとは言い切れないけど……」
「まあ少しは、かな」
「バル」
極め付けはこれだった。
「アラスター」
アラスターは振り返ったバルを見て腹を抱えて笑った。
「すごい! すっかり美女になっちゃって……」
「うるっせえなあ」
仕方ないよね。ほんと。こんなのたぶんもうないもん。
家に帰るとアラスターは上機嫌だった。
「バルはもうすっかり女の人みたいだったね」
「うん。先週から飲み始めたんだけど、変わるのが早くて。やっぱり体質のせいかな?」
「そうなんだろうね。いやあ、パイロットたちの間でも噂になってたよ」
「だろうね! みんな見に来たよ。ユミンなんて画像撮って行った」
あの変化の速さは本人も予想外だったみたいだ。でもバルは背筋を伸ばして堂々と振る舞うからかっこいい。
「水曜日の当直も安心だね」
「どうして?」
「何でもないよ」
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