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03 トライアル (2)エア・ランナー
17 Vesta (乗り切る)
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「やった!」
コードがブリングに表示される。「一般用エアランナー(小型)操縦士」。嬉しい。この資格だと趣味のレベルだけど、何もないよりはいい。コードを受け取って出口から出ると、ロビーにアラスターが待っていた。
「ふふふ。取れたよ!」
「おめでとう。がんばったね」
アラスターはぎゅっとハグしてくれた。
「アラスターのおかげ! ありがとう!」
「絶対受かると思ってたから、お祝いで美味しいところ予約してあるんだよ。行こう」
お姫さまみたい。でもどっちかっていうと、俺がアラスターに何かお礼をしないといけないよね。考えておかないと。
アラスターが連れてきてくれたのは、新しくできたばかりの近代料理のレストランだった。内装も凝っていて、たくさんのライトの色がそれぞれに変わり、店内はいろんな色の光で満ちている。見たことがないような料理が次々に出てくる。
「もう食べ方もわからない!」
「ははは。多分みんなそうだから好きに食べたらいいよ。だから全席半個室なんだよ。きっと」
髪は今日はずっと緑のままだ。自分でも少しほっとする。青くなったらアラスターは気にするだろう。まあ、このライトの中では何色だって見えないと思うけど。
「ねえ、ヴェスタ。試験に受かったら言おうと思ってたんだけどね」
アラスターが居住まいを糺して言った。
「うちに来ないか。一緒に住もう?」
心臓が一瞬ぎゅうっと縮んだ。
「お願いだ。そばにいて欲しいんだ。君と暮らしたいんだ。嫌かな……」
心臓の音が耳元でして、髪が一気に白くなった。どうしよう。どう答えたらいい?
「一緒に?」
「そう。うちで、二人で暮らそう? うちに引っ越してくれないかな?」
アラスターと暮らす。二人で? バルは?
「バルは、君がいいならそれで構わないって。どうかな?」
オレンジに近いアンバーの瞳が、紫や黄色のライトに照らされている。ひたと真摯に俺の目を見ている。バルはそれでいいって? それでいいのか………。
………バルが、いいのなら………。
「いいよ」
「本当?」
アラスターが俺の手を取って、あからさまに喜んだ。
「嬉しいよ! いつ来てくれる? いつでもいいよ」
「荷物見てみる。まとまったら……」
今、俺の髪は何色? レストランのライトのせいでわからない。アラスターにもわからないのが救い。
きっと青い。
コードがブリングに表示される。「一般用エアランナー(小型)操縦士」。嬉しい。この資格だと趣味のレベルだけど、何もないよりはいい。コードを受け取って出口から出ると、ロビーにアラスターが待っていた。
「ふふふ。取れたよ!」
「おめでとう。がんばったね」
アラスターはぎゅっとハグしてくれた。
「アラスターのおかげ! ありがとう!」
「絶対受かると思ってたから、お祝いで美味しいところ予約してあるんだよ。行こう」
お姫さまみたい。でもどっちかっていうと、俺がアラスターに何かお礼をしないといけないよね。考えておかないと。
アラスターが連れてきてくれたのは、新しくできたばかりの近代料理のレストランだった。内装も凝っていて、たくさんのライトの色がそれぞれに変わり、店内はいろんな色の光で満ちている。見たことがないような料理が次々に出てくる。
「もう食べ方もわからない!」
「ははは。多分みんなそうだから好きに食べたらいいよ。だから全席半個室なんだよ。きっと」
髪は今日はずっと緑のままだ。自分でも少しほっとする。青くなったらアラスターは気にするだろう。まあ、このライトの中では何色だって見えないと思うけど。
「ねえ、ヴェスタ。試験に受かったら言おうと思ってたんだけどね」
アラスターが居住まいを糺して言った。
「うちに来ないか。一緒に住もう?」
心臓が一瞬ぎゅうっと縮んだ。
「お願いだ。そばにいて欲しいんだ。君と暮らしたいんだ。嫌かな……」
心臓の音が耳元でして、髪が一気に白くなった。どうしよう。どう答えたらいい?
「一緒に?」
「そう。うちで、二人で暮らそう? うちに引っ越してくれないかな?」
アラスターと暮らす。二人で? バルは?
「バルは、君がいいならそれで構わないって。どうかな?」
オレンジに近いアンバーの瞳が、紫や黄色のライトに照らされている。ひたと真摯に俺の目を見ている。バルはそれでいいって? それでいいのか………。
………バルが、いいのなら………。
「いいよ」
「本当?」
アラスターが俺の手を取って、あからさまに喜んだ。
「嬉しいよ! いつ来てくれる? いつでもいいよ」
「荷物見てみる。まとまったら……」
今、俺の髪は何色? レストランのライトのせいでわからない。アラスターにもわからないのが救い。
きっと青い。
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